おいでよ!エルフの森!

AIのべりすと(https://ai-novel.com/novel.php)にて作成した作品です。

おいでよ!エルフの森11!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。  その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


ジャンヌは今日も幸せだった。お気に入りのコーヒーショップでお気に入りのポテトチップスを食べながらお気に入りのマリファナをふかしていた。この瞬間が人生で一番楽しい時間だと思っているし、毎日そう思い続けているだろう。

「あー……しあわせぇ」

うっとりとした表情を浮かべて煙を上げるマリファナを見つめるジャンヌの目には涙すら浮かんでいた。彼女は今の人生に心の底から満足しているのだ。そんな彼女の元を訪れた男がいた。店長である。

「気に入ってくれて嬉しいよ。」「そりゃもう!最高の気分です!」

「それなら良かった。実は新しい商品ができたんだが試してくれないか?」

「えっ!?本当ですか?是非ともお願いします!!」

今までにも何度か新しい品種のマリファナや新しいソフトドリンクや軽食をご馳走になっていた。

毎回新製品が出る度に楽しみにしているくらいなのだ。断るはずがない。しかし今回はいつもより少しだけ様子が違ったようだ。店長さんは何時もの笑顔ではなく真剣な顔つきをしていたからだ。これは期待できるかもしれない……。私は胸を高鳴らせた。

「じゃぁ早速だがこれを試してくれないかい?」手渡された小瓶の中にはマリファナが入っていた。初めて目にする品種だったが不思議とその美しい見た目に惹かれてしまった。

瓶を開けて香りを嗅いでみる。良い匂いだ。甘くてフルーティーでどこかバニラを思わせる香りがする。これならばどんな人でも楽しめるはずだと確信した。

瓶から出したマリファナを小さく千切りグラインダーに入れ細かく砕く。砕いたマリファナをペーパーの上に乗せ、作っておいた吸い口部分のティップスをセットしてくるくると巻き上げ完成だ。

ジョイントを一本巻いて火を付けてみると甘みのある爽やかな味が広がる。悪くないどころか最高じゃないか。思わず笑ってしまったほどだ。こんな素晴らしいものを無料でくれるなんて太っ腹すぎるぞと思いつつもお礼を言うことにした。

「ありがとうございます!!とても美味しいですよ!これはヒットしますよ!」興奮気味に伝えてみると店長は嬉しそうに笑いつつ「それは良かった」と言った。何でも異世界の最新品種なんだそうだ。店長の栽培農園で量産する計画なのだそうだ。

ジャンヌは嬉しくなった。もう少しすればこの品種が店に並ぶと思うと嬉しくなった。リリアンヌと一緒に来ようと思った。きっと彼女もこの喜びを共有してくれるに違いないのだ。

それからジャンヌはパンケーキを注文して完食し店を出た。幸せな気持ちのまま家に帰ったらリリアンヌが寝ていた。どうせまた徹夜で酒盛りをしていたんだろうか?全くしょうが無い奴だと思いながらも愛おしくて堪らなかった。何度見ても綺麗だと思う銀色の髪を撫でている内に眠たくなってきたので一緒に眠る事にした。リリアンヌは嫌そうな顔をしたが構わず抱きしめて眠りについた。

いつの間にか朝までぐっすり眠れていたらしい。昨日の事が嘘のように清々しい目覚めであった。今日も一日頑張ろうという気にさせてくれたのだ。

その後、店で売られている『ウェディングケーキ』という名の新種マリファナは大人気となり飛ぶように売れていった。そしてあっと言う間に定番商材の一つになったのだった。店長はその事を大いに喜んだが同時に大きな悩みを抱えていた。(あれだけの大ヒット商品だから当然と言えば当然だけど……在庫が全然足りない…)

連日入荷してもすぐに売り切れてしまう為、店長としてはとても困っていたのだ。この事態を想定して既に増産体制に入っているもののそれでも追いつかない有様であり……結局更なる追加発注をかける事になったのだが……奴隷が足りなかった。

エルフの森では原価を下げるため労働力を奴隷で補うのは常識だ。特に農作業など単純作業においては尚更である。しかし残念ながら高品質なブランド大麻の生産は高い技術力が要求される高度な仕事だ。奴隷に教え込むのは大変だった。

どうにか解決法は無いだろうか?そう考えていた時にジャンヌが提案したのだ。「奴隷狩りをしませんか?」と。ジャンヌの提案に店長は喜んだ。……確かにこれは名案だと思えた。幸いにしてエルフには優秀な狩人が大勢いる。街で人間や獣人を捕らるのは造作もないだろう。店長はすぐに行動に移った。

人間の売人からの情報をもとにエルフの森の近くに住むダークエルフの集落を見つけ出し襲撃をかけたのだ。集落に居たのは若い女ばかりだった。売人から聞いていた通り全員が文字が書け数学も理解するほど優秀で真面目で勤勉だった。

ジャンヌが連れてきたダークエルフ達は皆優秀で銃で脅し殴れば何でもすぐに覚えた。

異世界式の栽培法や肥料の作り方も覚えさせた。挿木で増やす方法も覚えさせた、開花させ乾燥し製品にする作業もマスターさせた。暴力万歳。

ジャンヌが「凄いね!君たちは天才だよ!」と褒めるとみんな顔を青くし怯えて可愛かった。こうして異世界マリファナの苗はどんどん増えていった。その頃には常に最新のマリファナを村で購入する事が出来た。

最近では店長は独自の品種を作ろうと品種改良を研究しているようだ。エルフの森名産品が生まれる日も近いだろう。

ジャンヌはリリアンヌと共にコーヒーショップで雑談を楽しんでいた。

 


「それでどうなったんです?」

「えっと、ダークエルフって頭も良くて手先も器用なの」「へぇ、そんな種族がいたなんて知りませんでした」「私も驚いたわ。本当に頭がいいのよ、数字とか計算が苦手って奴も居るけど殆どが完璧に近いレベルで出来るの」

「それは素晴らしいですね……」「でも、ちょっと変わってるかな?全員目が死んでたっていうか死んだ魚みたいな目してて怖いのよね。それにすぐ怯えたりするし。情緒不安定なのかしら?」

「あぁ……そういうタイプの種族なんでしょうね。何か理由があるんでしょう、多分ですけれど……。私は会ったこと無いのですが、以前読んだ本によると昔はもっと感情豊かだったらしいですよ」

「ふーん……ま、いっか。ともかく栽培は順調らしいよ」ジャンヌは満足そうにしている。リリアンヌもつられて笑顔になる。「それなら良かったじゃないですか」

「うん、後はもうしばらくすれば収穫できるはずだからそしたら今度は専門農場を作って大量生産するんだって」

「そういえば大麻の栽培だけじゃなくて加工にもダークエルフさん達を使ってましたもんねぇ……」

 


器用で頭が良く従順で良い奴隷のダークエルフ。村ではダークエルフは高値で取り引きされていた。

 


エルフ達は周囲のダークエルフの村を襲い奴隷を調達した。薬の代金の代わりにダークエルフの奴隷を連れて来る人間も増えた。色を付けて買ってやった。すると人間は更に多くのダークエルフの奴隷を持ってくるようになった。ダークエルフは知能が高く従順で寿命も長かった奴隷として完璧だった。ジャンヌはご機嫌に話している。リリアンヌは微笑みながら聞いている。

この世界は平和だ。ジャンヌは心の底からそう思った。

マリファナの売り上げは順調に伸びており店長はホクホク顔だった。ダークエルフ達のお陰で人件費を大幅に削減できたのが大きかった。ジャンヌは毎日楽しく過ごしていた。リリアンヌも毎日幸せだった。

 


ある日、ジャンヌとリリアンヌは朝早くから村長の屋敷に向かっていた。今日は大事な会議が開かれる予定なのだ。

屋敷に到着すると既に大勢のエルフが集まっており、皆忙しく動き回っていた。ジャンヌ達は適当な場所に座った。暫く待っているとエルフ達が集まって来た。集まった者達を見回す。どの者も表情が硬く真剣そのものといった様子だ。恐らくこれから何事かを議論するつもりなのだろう。

村長が口を開いた。

「ではこれより第111次定例議会を開催する。まず始めに……この度は我々の提案を受け入れてくれた事に礼を言う。ありがとう。今回の議題だが、今後の奴隷についてだ。我々エルフに今後どのような奴隷が必要か?どの様な種族が最適か?皆の意見を聞かせて欲しい」村長が立ち上がり演説を始めた。

「現在我々はダークエルフという労働力を得て生活水準を向上させつつある。また新たな労働力を手に入れる必要がある」ざわめきが広がる。

「静粛に!……ダークエルフだけでは足りないという意見かね?しかしダークエルフは既に全て奴隷にし確保している。これ以上必要なのか?ダークエルフより優れた種族など居るはずが無い!」一人が叫んだ。エルフ達が同意するように声を上げる。

ダークエルフ以上の働きをする奴隷が必要だと?馬鹿な事を言わないで欲しい。あれ以上優秀な者が他にいる訳がないじゃないか!!」別のエルフが叫ぶ。

「落ち着けと言っているだろう!!静かにしろ!!!」一際大きな声で怒鳴りつける。

「確かにそうだ。ダークエルフは優秀すぎる余りに逆に困っているのだ。これ程までに完璧な存在というのは扱い辛い物だと初めて知ったよ」誰かの声をきっかけに次々と不満が出始める。

「ならば新しい種族を探せば良い」一人のエルフが立ち上がって言った。

「その通り!他の種族ならいくらでもいる!」「新しい種族を探して奴隷にするんだ!」次々に賛同者が増えていく。

会議は『新しい奴隷資源の開拓』で満場一致で決定し以下の事が決められた。

・新たに奴隷を探す為に大規模な調査団を派遣する

・見つかった種族は全て奴隷とする

「諸君らの協力に感謝する。必ずやより良い成果を出して見せよう」

こうして、エルフによる奴隷資源大捜索が決定された。

 


それから1週間後調査団は東西南北4チームに別れ調査を開始した。それぞれ2ヶ月の調査期間を設けてある。

ジャンヌとリリアンヌは東チームに参加していた。

「ねぇ、こんなんでホントに見つかるの?」「分かりませんけど、一応仕事ですし真面目に取り組みましょうよ」

「えぇー……」「ほら、頑張ったら美味しいご飯食べれますよ」「うぅ……分かったわよぉ」渋々ながらもジャンヌ達は装甲車で走り出した。リリアンヌは苦笑しながら後に続いた。調査団は東へ向かって進んでいった。道中魔物が出たものの特に問題なく進んでいった。

途中で一度野営をしながら調査団は東へ進んでいく。集落や町が無いか隈なく調べる。そんな日々を過ごしているうちに遂に最初の報告が入った。

「獣人らしき集団を発見しました。どうしますか」

「よし、全員で行くぞ。準備させろ。それと念の為武装させておけ」エルフの兵士の一団が装甲車に乗って駆けていった。

エルフ達は獣人の村を襲撃した。村の建物は破壊され村人は奴隷にされた。抵抗した者はその場で意識を刈り取り奴隷魔法をかけた。そして村は制圧され村人は全員が捕らえられた。

エルフ達は大喜びだった。これで食料も増産出来るし芥子畑も広げられる。畑を耕す手間も省ける。

「よくやった。では早速奴隷にしてしまおう。おい、お前達。こいつらを牢屋に入れて来い。丁重に扱うようにな」エルフの兵士が指示を出し、村人は連れていかれた。

調査団の調査は続く。西チームは山岳地帯を調査していた。ホビットの集落を発見した。武器防具は粗悪品ばかりだったのですぐさま捕まえ奴隷にした。エルフは喜んだ。

北チームのエルフは海沿いの漁村を調査した。竜人が沢山捕れたので喜んでいた。

南チームで海釣りをしていたエルフは珍しい種類の水棲亜人達を見つけたので捕獲し奴隷にした。人魚とか言うらしい。

エルフ達の2ヶ月に及ぶ調査は終了した。その成果は上々であり、大量の奴隷を確保することが出来た。エルフ達はその事実に大満足していた。

捕らえた奴隷達は奴隷魔法を掛け絶対服従させた上で各地に輸送されていった。奴隷の数はどんどん増えていき、産業に従事させた。

獣人達は鉱山や農地へ送られた。人魚達は漁業をさせるべく各地に送られ漁民として働かされていた。

ホビット達は手先が器用だった為、細工師や木工奴隷として働らかせた。

ドラゴニュートは頑丈だった事もあり土木作業や建築作業をさせていた。

森に居なかった種族は港町などで見つかれば連行していった。

全ての奴隷が使役された後、エルフの里に凱旋が行われた。エルフはお祭り騒ぎであった。奴隷を労働力とし更に豊かになったエルフ族は更なる発展を目指して動き出す。

エルフは今まで以上に人間との交易に力を入れる事を決定。同時に奴隷売買も積極的に行う事とした。様々な人種がエルフの手に渡る事になるだろう。それは新たな時代の幕開けになるかもしれない。エルフの人口は少ないが奴隷の数は多い。エルフの森の国力は膨大だった。エルフ族が奴隷を得てから5年が過ぎた。エルフ族の奴隷人口は100万人に達していた。労働力としては十分過ぎるほどだった。奴隷に子供を作らせると優秀な子供が産まれるため人口増加にも役立っていた。

 


エルフ達は幸せだった。豊かな生活を満喫していた。人魚達に捕らせた海の幸は新鮮で美味しい。里には酒蔵があり各種酒類が造られている。米や麦などの穀物類も豊富にあり飢えることは無い。肉は定期的に手に入る。ダークエルフに作らせたマリファナも美味しい。

娯楽施設や飲食店もあり暇を潰すことに苦労することも無い。衣食住全てにおいて満たされていた。

ジャンヌとリリアンヌは相変わらず二人仲良く暮らしていた。二人は毎日のようにマリファナを吸い酒を飲み毎日を楽しんだ。二人の仲の良さは変わること無くずっと続いていた。

 


そんなある日ジャンヌの元に一通の手紙が届いた。差出人はコーヒーショップの店長だった。

内容は新しい異世界マリファナが見つかったという物で、試供品を試して問題が無ければ即採用すると書かれていた。

「リリィ!これって!」「えぇ、間違いありませんね」

ジャンヌとリリアンヌの顔は満面の笑みに包まれていた。こうしてまた一つマリファナが増える事になった。

ジャンヌとリリアンヌは二人で相談した結果、すぐにでも行こうという話になり次の日の早朝に出立する事を決めた。

翌日ジャンヌとリリアンヌは支度を整えて店に向かった。店の前には店長の姿があった。

「おはようございます」「やぁ、2人ともようこそ!」

2人は店長に促されカウンター席に座った。「それで、今日は何があるんです?」

店長はニヤっと笑いマリファナを出す。「これは最近見つかった新種だよ。まだ店に出してないんだ。」

そう言って大きなバッズが出てきた。

ジャンヌは愛用のグラインダーで砕きボングの火皿に詰め火を付けた。久しぶりの美味な煙に感動を覚えながらゆっくりと吸う。口の中に濃厚な甘さが広がった。

「ん〜……やっぱり最高ですねぇ……」

続いてリリアンヌもゆっくり味わっていた。「うん、良いですね。甘い香りが強くて美味しいです♪」

その後2人は3種類の品種を吸わせてもらった。全部味もハイも良かった。煙も吸いやすかった。

「ふぅ、ご馳走様でした」「いえいえ、どういたしまして」

3人で雑談をしているうちに夜になってしまったため本日はこれでお開きとなった。

発売したら行くことに決め、この日は早めに寝ることにした。

それから数日が過ぎ遂に発売された。

早速買いに行き試してみるとやはりどれも素晴らしい出来だった。

2人で買い込み家で早速吸い始める事にする。

まずはジャンヌがグラインダーから取り出し、火を付ける。

口に含むとあの懐かしい味わいが広がる。

「あー、この感じだなぁ〜」

続けてもう1ボウル分を火皿に詰める。今度は少し強めに息を吸う。

スゥッとしたパインフレーバー共に強烈な甘さが口に広がり、鼻の奥まで突き抜けるような感覚に陥る。

そのまま深く呼吸をし、肺いっぱいに広がる煙を楽しむ。

「ぷはっ、これも中々いいじゃないか。癖になっちゃうかも。」

リリアンヌも同様に楽しんでいるようだ。

お互いに感想を言い合いながら楽しんだが、流石に2ボウル目からはボディハイが強くストーンしてしまい、それ以上は無理だった。

後日、マリファナは飛ぶように売れ、街ではどこでも見かけるようになった。

ダークエルフに作らせているマリファナブランドは不動の人気を誇っており、街の特産品となっていた。

 


エルフの里にはジャンキーが溢れ、皆笑顔で暮らしている。

エルフの未来は明るい。今日もジャンヌとリリアンヌは幸せそうに過ごしている。

エルフの森は平和で愛に溢れていた。

 


エルフの森はラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森10!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。  その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


この世界では人類が支配的な種族であり、人間は亜人や獣人といった他の生物を支配していると思っているようだが、実際には違う。

人間はエルフに支配されてるのだ。

彼らは森の奥深くに隠れ住んでおり、滅多に里から出てくることはない。出てきたとしても人間にヤクを売る時だけだ。

だから人間を奴隷にしているのもあまり知られてはいない。

人間の国家同士だって戦争しているし、負けた国の国民を奴隷にするのも当たり前だった。エルフ達はそんなことはどうでも良かったからだ。

ただ自分達が作った薬を売りさばければそれでいいと思っていた。

そして今日もまた新たな顧客が現れたみたいだ……

 


「こんにちわ!」

1人の美少女の声によって現実に引き戻される。声の主はこの集落のエルフであるリリアンヌであった。

彼女は村長から今日のヤクの取引を頼まれていたからだ。

「おうリリィちゃんか」男はニヤつきながら言った。

彼らにとってこんな美少女が来るというのは嬉しいことなのだ。

彼はコカインの売人だ。見た目は普通の青年だがただの売人である。

「はいこれいつものです」そう言って彼女が取り出した袋には白い粉が入っていた。これが彼の収入源だ。彼はエルフからコカインを買い付け人間の国で売り捌いて生計を立てている根っからのクズだ。彼が麻薬を買っているのは何も金のためだけではない。薬に溺れた女が彼に群がるのだ。

「じゃあまたね〜」彼はコカインを10キロも仕入れ帰って行った。彼らが帰った後、しばらくすると今度は別の客が来たようだった。

太った男だ。彼はヘロインが欲しいらしい。

「はいよ、毎度ありー!」

そういうと彼女は木箱を取り出して彼に渡した。中身はもちろんヘロインである。これも彼らの商売道具だ。

「ありがとうございます!!」彼は満面の笑みを浮かべ帰っていった。

(ふぅ〜これで仕事終わりっと)

リリアンヌは一息ついたあと家に帰ることにした。

(ああ疲れたなぁ……もう寝たいけどまだやることがあるんだよね……)

彼女は明日もヤクの受け渡しをしないといけないのだった。しかも2日連続で……しかしそれは仕方がないことだ。それが彼女の役目なんだから……。

 


次の日の朝になった。

男がやってきたようだ。早速ヤクを渡すことにした。昨日の男とは別の奴だ。今回は3人いる。1人はヤク中の男。残りの2人も同じような感じだろう。

「はいどうぞ……」と言って彼女が渡したのはピンクの錠剤が入った小瓶だった。これはMDMAだ。覚醒剤系の一種である。服用すると極めて強い多幸感を感じる薬だ。

受け取った男たちはすぐに服用し始めた。そしてすぐに効き目が出てきたようだ。

3人ともトリップ状態になっている。それからしばらくして彼らは去っていった。

次はどんな人間がくるのか楽しみだと思いつつも少し不安もあった。

まともそうな人が来てほしいものだと思ったが残念なことに彼女にとってはどっちにしても関係ないことだった……

昼になり再び訪問者があったようだ。今回はかなり多いような気がする。一体何人来るんだろうか?気になって外に出てみるとそこには紫のローブを被った集団がいた。人数は15人ほどだ。彼らは幻覚剤を買いに来たようだ。

シャーマンか宗教関係の人間だろう。…… つまりはまともじゃないってことだ。

「はい……まいどぉ~」そういうと彼女は先ほどと同じように幻覚剤を渡していった。渡す量が多いので大変だったが、なんとか終わった。最後の一人は大量のLSDを購入した。信者に飲ませるのだろう。(早く帰りたい……眠いしダルいな……)

と思いつつ彼女は帰路についた。

家に帰るとジャンヌがマリファナを吸っていた。彼女はジャンキーではあるが比較的マシな方で、マリファナくらいなら問題はないのだ。

ジャンヌはボングをボコボコ音を立ててながら吸っていた。

「ぷっはー……おかえり!」「ただいま……ジャンヌ」

その後、夕食を食べ、風呂に入り、床に就いた。

 


次の日になった。

2人は幻覚キノコを採集しに森へ行く事にした。エルフの森の奥地にはマジックマッシュルームの群生地があるのだ。森の中をしばらく歩くと、そこにたどり着いた。木漏れ日に照らされた神秘的な光景が広がっていた。エルフ達ですらこの場所を知っている者は多くない。

「おお!すごい!」「綺麗だねぇ」

2人は感動していた。

「さあ採ろう」「うん!」

そこからしばらくキノコ狩りをした。

30分ほど経った頃、そろそろいいかと思って帰ることにした。2人は採集したキノコをマジックポーチに入れる。沢山のアイテムが入り中の時間も停止する凄いアイテムだ。昔村長を怒らせ殺された合法ドラッグ屋が持っていたものだ。

痛みやすいマジックマッシュルーム採集に欠かせない物だ。

 


村に帰った2人はコーヒーショップで休憩する事にした。

コーヒーショップは最近エルフの村に出来た新しいスタイルのお店だ。

コーヒーショップと言ってもコーヒーを売っている訳ではない、マリファナ専門の販売店の事だ。マリファナを購入し店で吸うのだ。

購入してその場で吸えソフトドリンクや軽食も注文出来る。

店長が異世界の雑誌にあった店を再現したらしい。何でコーヒーショップなんだろう?まあいいけどさ……。

今日は朝からずっと歩きっぱなしだったので疲れた。ここでひと休みしよう。

ボコボコボコボコボコボコ……店のある大型水パイプで煙を吸い込み。吐く。

「はぁ〜……」「はあ〜」「ふぅ〜」「…………」「気持ちいい〜」

そんな感じにだべっていると一人の客が入ってきた。

「いらっしゃいませー!」

「あれ?」

その男は見覚えのない人間だった。

「あの〜ここってタバコ売ってくれるんですかねー?」そう聞いてきた。

「そんな訳ねえだろが!!ぶっ殺すぞ!!」店長がキレた。当然の反応である。

リリアンヌはその男を見た瞬間嫌な予感に襲われた。

この感覚は何だろうか? 直感的にヤバいと感じる。

まさか…… 私はジャンヌの方を見る。

ジャンヌも同じ事を考えていたようだ。目をキラキラと輝かせている。

ジャンヌこれから起こるであろう惨劇を想像し期待に胸をときめかせていた。(ああ……最悪だわ)彼女は頭を抱えたくなった。

「タバコが欲しいのですが……」状況を理解しないバカな男が何か言っている。

その瞬間店内に爆音が鳴り響いた。ドガァン!!!という轟音と共に男の頭部が弾け飛んだ。

(やっぱりかぁ……..)

 


店長が愛用の散弾銃で男の頭部を撃ったのだった。そしてそのまま死体を引きずって裏口から出て行く。死体は村の掃除屋さんに引き取られるのだろう。彼は肥料になったのだ。リリアンヌたちはそれを黙々と見ていた。

数分後、店長が戻ってきた。

「すまんかったのう」と言って謝ってきた。

「いえ……大丈夫です」

「これサービスじゃ」といってポテトチップスを差し出してきた。

「ありがとうございます」

私達はそれを受け取り食べる。とても美味しい。塩味がきいてて最高だ。

「おいしいね」「うん……うまいよぉ」

2人でモグモグしながら喋った。

食べ終わると、ジャンヌは満足そうな顔で「おいしかったぁ……また来ようねぇ!」と言った。もう二度と来るかと思った。その後は家に帰ることにした。家に着くと、ジャンヌは早速買って来たマリファナを吸っていた。

一本くれと言うと快くくれた。

ジャンヌが火を付けてくれる。

「ありがとー!……んっ!」

一服すると、頭がぼんやりとしてくる。

「なんか……眠たくなってきた」ジャンヌが言った。

「そうだねー」

リリアンヌも同意する。

「少し寝るか」

「賛成」

2人はベッドに入った。

2人の意識はそのままゆっくりと闇に落ちていった。

 


次の日、2人はいつも通り起きた。

朝食を食べ、服を着替え、髪を櫛で整える。「よし、準備オッケー!」「行こう!」2人はエルフの村へ出発した。

道中、昨日の事を思い出しジャンヌに話しかけた。「ポテトチップス美味しかったわ」「うん!うまかったよね!」

「また食べたいなあ」「今度一緒に行こっか!」

あのポテトチップスは美味しかった。店長は村でも真面目で研究熱心なエルフだ。もしかするとポテトチップスも異世界式のレシピなのかもしれない。

歩いていると村に着いた。今日も平和だ。

村には色々なお店がありどこも繁盛しているようだ。

肉屋さん、八百屋さん、サイケ屋さん、魚屋さん、シャブシャブ屋さん、ダウナー屋さん、コーヒーショップ屋さん、銃砲火薬店、奴隷屋、薬局まで色々な店がある。エルフの村は薬の密造や密売などダークな商売で潤っているのである。

2人は本屋に用事があった。異世界の本が欲しかった。異世界の本は素晴らしい本が多くエルフ達に人気だった。

「こんにちは〜」「お邪魔しま〜す」

店主はエルフの男性だ。背が低くハゲており強面だが気の良いおじさんといった風情の人物だった。

店の中には所狭しと様々な種類の異世界の書物が置かれている。

「いらっしゃい。今日はどんなご要件かな?」

「えっと〜雑誌があれば欲しいんですけど〜」

「はいよ。ちょっと待っててな」

そういうと奥に引っ込んでいった。しばらく待っていると1冊の本を持ってきた。

「ほれ、この本なんてどうだい?」

「おおー!」「すごい!!」

それはハイな人向けの雑誌だった。表紙にはマリファナの写真がデカデカと載っていた。

「これは異世界で賞を獲得した大麻さ」「これが!?綺麗ですね〜」

リリアンヌはとても感心した。異世界は凄いなぁと思っていた。

「これください!」

「あいよ」

ジャンヌはその雑誌が気に入ったようでバックナンバーも買っていた。リリアンヌも目的の本を買うことが出来た。

その後、ヘッドショップに行ってみたり、銃砲火薬店に行ったりして時間を潰していった。

お昼になり2人は食事をする事にした。エルフの村では食事処も多かった。ピザ屋の看板が目に入る。【ハッピー・ハーブ・ピザ】

少し前にエルフの村で話題になった美味しいピザ屋さんだ。本格的なピザ生地を使い美味しいチーズをたっぷり乗せ石窯で焼き上げる本格的派ピザだ。

リリアンヌも久しぶりにピザを食べたくなった。ピザにしよう。店の中に入ると店員の若い男性が挨拶をしてくる。目がイってる。

「いらっしゃいませ!」リリアンヌたちは席に着く。メニューを見ると色々ある。

マルゲリータペスカトーレ、マリナーラ、クアトロフォルマッジetc…… どれもこれも美味しそうだった。

「私はマルゲリータにするわ」ジャンヌはマルゲリータを選んだようだ。

「私はペスカトーレペスカトーレピザにした。

店員さんを呼んで注文を伝える。店員さんは「ハッピーにするかい?」と聞いて来る。勿論ハッピーにする。ジャンヌはハッピー多めだ。

「はいよ」

5分ほど待つと焼きたてのピザが来た。とても美味しい。

「おいしいね」「うん!」

2人でワイワイ言いながら食べる。

「たまには良いね!」「こういうのも良いね!」

食べ終わった後、2人は店を後にする。

その後も適当に村をぶらぶらしながら飲み物を買って準備する。そろそろいけるだろう。リリアンヌはジャンヌの方を見た。ジャンヌもそわそわしているジャンヌは待ちきれないのだろう。

1時間ほど経つ頃ジャンヌも効いてきたようだ。私も効いてきた。

とても幸せな気分になる。多幸感が強い。ジャンヌも楽しそうだ。

あのピザ屋は本当に天才なのだと毎回思う。あんなに美味しいしマリファナも入ってる。いあ、トッピングのマリファナパウダーの量を選べるから良いのだ、私はノーマルハッピー、ジャンヌはハッピー多め。ハッピーの量が選べて良い。村のみんなもお気に入りの店だ。

「ねえ、もうそろそろ帰ろうか?」「うん!」

2人はエルフの村から家に帰るのだった。とても強く多幸感に包まれて…2人はとても幸せだった。

 


エルフの森はみんな幸せだ。

 


エルフの森は今日も平和だった。明日もきっと平和だろう。

エルフの森はラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森9!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


エルフの朝は遅い。夜遅くまで薬をキメていたからだ。

シャブやサイケデリック系のドラッグは眠れなくなる。夜遅くまでキメていた者達は昼過ぎに布団に入る。

リリアンヌの朝は遅い。深夜まで深酒したからまだ酒が抜けないのだ。

ジャンヌの朝は遅い。夜遅くまでマリファナを吸い音楽を聞きながら遊んでいたからだ。マリファナは深い眠りに誘うメラトニンの分泌を促すからだ。

二人は昼過ぎに起き出す。そして食事をとる。エルフ料理は栄養価も高く美味い。異世界のレシピ本から作られた料理も多い。

「今日は何をしましょうか?」

ジャンヌの言葉を受けて、リリアンヌは考える。

(そうだな……)

今は時期が悪い。真冬だ。辺りは雪に埋もれている。それにこの寒さでは外での活動は難しい。となると室内作業だが……。

ジャンヌもリリアンヌもやる事が特に無かった。娯楽の少ない世界なのだ。暇潰しの方法が少ない。

二人で話し合った結果、家の中で出来る簡単な作業をする事にした。

それはマリファナのキュア作業だ。

マリファナは乾燥しすぐに吸える訳ではない。乾燥したてのマリファナ葉緑素が多く含まれ喫煙すると煙がキツい。そこで乾燥した後湿度58〜62%に保ちガラス瓶入れ保管する。そして1日1回中の空気を入れ替え続ける。こうすると葉緑素が分解され乾燥もより均一になり煙が優しく吸い易くなるのだ。

二人ともマリファナは好きだ。妥協は許されない。二人の作業は熱の入ったものとなった。

空気の入れ替え作業も終わり今度は喫煙器具のお手入れだ。どれだけ良いネタであってもタール塗れの喫煙器具で吸えば風味は台無しだ。そんな訳でまず洗浄から始まる。これは結構大変な仕事だ。

水洗いでは落ちないのだ。アルコール度数の高い蒸留酒と研磨剤の役割を果たす塩を入れ洗う。

ボング・水パイプ・パイプ・バブラー・シーシャ・キセル・チラムなどなど喫煙器具は多種多様にある。

ちなみにジャンヌはボング派である。理由は吸いやすくなるから。ジャンヌらしい理由だった。二人は愛用の喫煙器具を洗浄していく。続いて火皿や吸い口も清掃をする。ここは特に汚れやすい。しっかりお掃除しなければ味が悪くなる原因となる。

綺麗に洗い終わったら水ですすぎ清潔な布巾の上で乾燥させる。これで終わりだ。

喫煙に使う物はパイプ類ばかりではない。ジョイントに使う巻き紙やローチやティップスと呼ばれる吸い口部分を異世界から召喚し補充する。異世界の巻き紙は薄く燃えやすく紙の味が殆ど無く、貼り付ける為の糊が付いている。味付きの巻き紙すらある。巻き紙は消耗品なので多めに召喚する。ライターも忘れ無い。

「そろそろ休憩にしませんか?」

ジャンヌの提案により一休みすることになった。お茶を飲みながらマリファナを吸い談笑を楽しむ。とてもゆったりとしたチルタイムだ。そうしているうちにもう夕方になっていた。今日の作業はこれくらいにしておこうかと言う話になった。

乾かしていた喫煙器具も乾いた様だ。順番にしまっていく。

よく使う小さめのパイプはローリングトレイの上に置いておく。これでいつでも吸える。余ったマリファナは乾燥し過ぎしないようにガラス瓶に入れて蓋をした。

最後に使った道具を片付ける。使用したタオルを洗濯場に持っていく。部屋に戻るとジャンヌがマリファナを吸引しながら何か考え事をしていた。どうしたのか聞くと……

「いえね。私達ってここ最近ずっと働いていません?」「言われてみると確かに」「たまには何もしない日があってもいいと思うんです」「それ賛成!」

「なら今日は休んで一日中マリファナを吸いましょう!明日は明日の風が吹くと言いますし。何事もメリハリですよ」

「そうだな。今日はマリファナをめいいっぱい楽しもうじゃないか。明日からまた頑張ろうぜ!」

こうして今日一日はマリファナを満喫する事になった。二人は布団を敷き横になる。そして枕元にマリファナと甘いお菓子と飲み物を用意する。

「準備は良いですか?せーの……」

「「レッツパーリィ!!」」

そして二人はマリファナを吸い始める。マリファナはとても美味しい。最高の気分になれる。マリファナをキメた二人はあっという間に寝てしまった。

二人が目を覚ましたのは次の日の朝だった。結局昨日は夜中までマリファナを楽しんだ二人はそのまま眠ってしまったようだ。

二人は布団から起き上がり支度を始める。朝食を取り、身だしなみを整える。そしてリリアンヌが言った。「今日は何をしましょうか?」

ジャンヌも考える。

(そうだな……)「今日も寒いでしょうから、室内作業が良いと思いますよ。それと……もし良ければ……その……リ、リリアンヌが宜しければ……、わ、私の部屋に来てくれませんか!?︎」

リリアンヌは驚いたが、ジャンヌの気持ちは嬉しかった。

ジャンヌの部屋には色々な物が置いてあった。

異世界から召喚した陶器製の食器類、マリファナ専用のボング、乾燥させた大麻のバッズ、箱に入った銃器や弾薬……。

部屋の中央に置かれたテーブルの上にはガラス瓶がズラっと並んでいる。ガラス瓶の中には立派なマリファナが入っており、ガラス中身がよく見える。このガラス瓶一つ一つの中に乾燥大麻が詰められているのだ。

リリアンヌは感動に打ち震えていた。「すげえぇ!!こんなにも沢山の種類を集めているなんて!!!ジャンヌは凄いですっ!!」

興奮して鼻息荒くなっているリリアンヌに対してジャンヌは少し照れ臭そうにしている。

「そんなに褒められると恥ずかしくなります。でも喜んでくれて嬉しいですね。他にも色々ありますから見て行ってくださいね?」

「はい!見させていただきます!」

それから二人きりで楽しい時間を過ごした。お茶を飲みながら談笑したり、マリファナを吸いながらボードゲームをしたり。

昼になると二人で昼食を作る。材料は全て異世界召喚で調達だ。

午後からは読書やカードゲームなどで遊ぶ。夕方になり夕食の準備に取り掛かる。メニューは何時も通りだ。二人は楽しく食事をしながら会話を楽しむ。

食後は片付けをして再びマリファナタイムだ。ガラス瓶の中から好きな物を選んで吸い楽しむ。そして就寝するまでの時間を過ごすのだ。

翌朝。二人の目覚めは非常に良かった。やはり何もせずに過ごす休日は最高だ。

朝から良い匂いが漂っている。

「おはようございます。よく眠れましたか?」台所に立つジャンヌが聞いてきた。

「ああ、ぐっすりだったぜ」「私も同じです」

「それはよかった。もう少ししたら出来上がるので待っていて下さいね?」

「分かった」

 


二人はソファーに座ってジャンヌを待つ。程なくして料理が出来たので食事の前にマリファナを吸い一緒に食べることにする。今日の献立は白米と味噌汁だ。

「では頂きましょうか」

二人揃って手を合わせる。

「「「頂きまーす!」」」

異世界の食事和食だ。久しぶりの和食だ。

まずはお新香を食べる。パリポリ。うむ。塩味がきいてなかなか美味だ。次に卵焼きだ。これもまた甘めである。ご飯が進む進む。

次はメインディッシュのお魚さんだ。これはブリに似た感じだがかなり大きい。脂が乗ってとても旨そうだ。

パクッと一口。ジュワァ〜とした魚の油が出てくる。醤油が無いのが非常に残念だ。しかし素材の風味が活きて非常に美味しい。噛み締めるとホロリと崩れる柔らさだ。絶妙な火加減のようだ。

「「ご馳走様でした!」」

「はい。御粗末さまです」

「今日もうまかった!」

「ありがとう。さあ今日は何をしましょうかね?」

「「今日は……」」

二人は考える。そして……

「「今日は一日ダラけよう!!」」こうして今日一日は一日ゴロ寝で過ごしたのであった。

 


次の日。

昨日の休みはとても充実したものだった。マリファナを吸って、ゲームやおしゃべりを楽しんで。

何より久しぶりにのんびり出来たのが大きかった。心ゆくまで休めたのが大きいだろう。

二人は朝食を食べた後のティータイムを楽しみつつ話している。ちなみに朝食はパンケーキのようなお菓子だった。ふわっとして美味しかった。

「今日はどうしますか?何かしたいことがあればやりましょうか?」

リリアンヌが言う。

「私は特に無いかな……」ジャンヌが答える。

「じゃあさ、ジャンヌのやりたい事をしようよ」リリアンヌが提案する。「私のですか……?」「うん。昨日みたいにゆっくりするも良いし、どこか行きたい場所があるならそこに行くとか」

ジャンヌはしばらく考えてから答えた。

「そうですね……それもいいんですけど、折角なので今日はリリアンヌと一緒に居れたらと……。ダメでしょうか?」

リリアンヌは微笑みながら言った。「いいですよ。私もジャンヌと同じ気持ちだったので嬉しいです。ずっと一緒いましょうね?」

二人はマリファナを手に取り、準備を始める。

リリアンヌはガラス瓶に入っているマリファナを巻き紙で包んでいく。この作業は慣れているようで、流れるような動作で作業を進めて行く。

一方ジャンヌは、乾燥した大麻の実から種を取り出している。時々あるのだマリファナはストレスから雌雄同体になり雄しべの花粉で種が出来てしまうのだ。種が1〜2個出てくるのは仕方がない。ジャンヌは気にせず作業をすすめる。やがてジョイントが巻き上がる。「はい、終わりー!」「早いですね?」「いつもやってることだからね?」「それもそうでした。では早速吸いますか」

二人はマリファナを吸い、始める。「「はぁ〜」」「やっぱりこれだよねぇ」「ほんとに好きよねぇ」などと呟いている。

それからしばらくは無言でマリファナを堪能していた。

そのあとは二人とも出かける用意をする。ジャンヌは普段着を着ているがリリアンヌは外出用の服に着替えていた。

二人は手を繋ぎ仲良く村へと向かって歩いて行った。村は相変わらず平和だ。

 


サイケデリック本舗】本日の目的地のサイケ屋さんだ。

サイケ屋さんにはどんな幻覚剤でも売っていた。LSDマジックマッシュルーム、メスカリン結晶、ペヨーテ、ブフォテニン、5-MeO-DMT、シロシビン、マジックトリュフ、DMTなどなど品揃えは豊富だ。ジャンヌが欲しい物があったので購入することにしたのだ。ジャンヌが欲しがった物は、自転車に乗った人が描かれた紙だ。

「ジャンヌちゃんはこれが気になるんだね?」店主はジャンヌを見て聞く。

「はい!すごくかっこよくて一目惚れしました!」「へぇーそうなのかー」ニヤニヤしながら聞いている。

「はい!」ニコニコ笑顔のジャンヌである。

((チョロいな))内心そんなことを思っている二人である。

二人は会計を済ませ店を後にした。次はどこに行こうかという相談した結果、アッパー屋に行く事にした。アッパー系ドラッグが売っている人気店だ。

 


シャブシャブ】と書かれた看板が目印のお店だ。アッパー系の薬なら何でもかんでも取り揃えていた。メタンフェタミンアンフェタミン、MDMA、メチルフェニデート、コカイン、クラック、2C-B、バーヤー、モダフィニル、アドラフィニル、アンナカ、無水カフェインまで覚醒作用がある物質なら何でも売っていた。

「いらっしゃい!」注射器を陳列しながら店のオヤジが挨拶した。

「「こんにちは!」」

「おう。今日は何をご所望だい?」

ジャンヌとリリアンヌは目的の物を注文する。しばらくして商品が出てきた。

「ほれ、お待ちどうさま」

出てきたのは錠剤の入った袋だ。「「ありがとうございます!」」

二人は代金を支払い、店を出た。次はどこに行きたいのかを話し合う。

「「うーん……」」なかなか決まらないようだ。

「じゃあアレ行ってみる?最近出来たらしいんだけど」リリアンヌが指差す先には……

 


【ダウナー専門店 ヒーロー】と書かれた看板が見える。「……まあいいかな?」「……そうだね」

二人で入ることにした。店内に入ると異様な光景が広がっていた。大勢のエルフ達がランプの周りで横になって寝ているのだ。つまり阿片窟である。ジャンヌが興奮してリリアンヌの腕を掴む。「リリアンヌ!!ここすごい!!」

「こんな店があるなんて……!!!」

「……」目をキラキラさせながら言うジャンヌを見てリリアンヌは思った。(気に入ってくれて良かった…)

カウンターで店番のエルフが元気よく話しかけてきた。

「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」

メニューを見せてくれる。

ヘロイン、モルヒネ、阿片、阿片チンキ、コデインオキシコドンフェンタニルケタミンジアゼパムトリアゾラムフルニトラゼパム、GHB…物凄い品揃えだ…!

(そういえば睡眠薬が切れてたわね…)ジャンヌは寝逃げ用の睡眠薬が切れていたのを思い出した。

トリアゾラムをください」俗に言うハルシオンだ。

「MとSサイズがございます」0.25mg錠剤か0.125mg錠剤の事だろう…

「Mを4シート下さい」

「お持ち帰りでしょうか?こちらでお召し上がりでしょうか?」

「え?」ジャンヌは一瞬分からなかったが店員が店内で寝ているエルフ達を指差した。

なるほど、そう言う意味か…阿片を買ったやつがフードコートで喫煙するのだ。

「持ち帰りで」「かしこまりました!」

店員さんがハルシオンを用意するまで店内を見回す。

ランプの周りでエルフ達が夢を見ている。エルフ達の周りには手鏡と針金と変わった形のパイプが散乱していた。

 


一人のエルフが手鏡の上で針金を使い阿片を練り上げていた。しばらく練ると固まった様でパイプの中の針に練った阿片を刺す。そしてランプで針金に刺さった阿片を炙って煙を吸うのだ。目を細めながら美味そうに煙を吸っていくエルフ。しばらくすると横になり夢うつつになっていく…

「お待たせしました!」ハルシオンが出てきた。紙袋に入ってる。

そのまま支払いも済ませ店を出る。

「凄かったね〜」「便利な店ね」ジャンヌ達は家に帰ることにした。

 


家に帰り二人はマリファナを吸いながらゆっくりしたひと時を過ごした。夜ご飯の時間になったのでジャンヌが料理を作り始めた。今日の献立は、豚の角煮丼である。醤油ベースで作ったタレを豚肉にかけ、甘辛く仕上げていく。肉から染み出た脂身がタレと混ざり合い食欲をそそり立てる香りを漂わせる。頃合を見て炊き立ての白米の上にのせる。

「いただきます!」二人は食べ始める。うん!いい感じだ!

「う〜んおいひぃ……この味だよぉ」リリアンヌ感激している。

ジャンヌは自分の作った飯を食べてくれたことに感動を覚えながら食べる。

食事が終わるとジャンヌはソファーに寝転がりマリファナを吸いながらゆっくりしていた。

(あぁ幸せ……ずっとこうしてたいな……)

「ねぇリリィ……」

「何?」

「ううん、何でもない…」

 


冬はまだ続く。春の訪れはまだ先だ。

エルフ達の夜は遅い。二人は寛いでいるが、里のエルフの中にはガンギマリの者もいるし、幻覚剤でサイケデリックを楽しんでいる者もいる。

日に数度しか起きないダウナーは夢うつつなままだ。

 


今日もエルフの森は平和だった。明日もきっと平和だろう。明後日もきっと平和だ。

 


エルフの森は今日もラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森8!

その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 

エルフが暮らす森には違法に栽培された麻薬の原料となる植物が大量に栽培されており、エルフはその甘い蜜を吸って生きながらえているのだ。

 


そんな薬漬けの生活を続けていてもエルフ達は健康的だった。魔力が極めて高いエルフは常に回復魔法が掛かっているからだ。

「うぅーん、頭がふわふわしますねぇ〜」

リリアンヌは完全に酔っ払っていた。顔が赤い。

目がとろんとしていて頬も紅潮している。とてもかわいい。

ここはリリアンヌの部屋だ。リリアンヌとジャンヌは一緒に帰ってきたのだ。今日は色々あったなぁ…… ジャンヌは部屋を見回す。ベッドやテーブルなどの調度品は全て木製で質素だが、置いてある本棚などの小物はとてもオシャレである。きっと女の子らしい趣味なんだろう。

部屋の隅にある机の上に酒瓶が何十本と並んでいる。その全てが空になっているようだ。

こんなになるまで飲んで……まあ気持ちはよく分かるけどね!私だってもう何杯目か分からないくらいお酒を飲んだし!

私は下戸なので全く問題ない。

さてそろそろ寝ましょうかね? そう思い立ち上がろうとしたら袖を引っ張られた。リリアンヌの手であった。どうしたのかしらと思い彼女を見ると、潤んだ瞳でこちらを見ながら何かを訴えかけていた。これは……まさか!?︎ 彼女は自分の隣へ座るようジェスチャーする。仕方ないので言われた通りにするとそのまま肩にもたれかかってきた。そして私の腕を抱え込みぎゅっと抱きしめてくる。胸が当たっているんですが……。彼女の柔らかい感触を布越しに感じる。理性が崩壊しそうだ。

いかんぞリリアンヌ!!それはいけない!!! しかし、目を閉じ幸せそうな表情をしている彼女を見ていると何も言えなかった。

………………………………………… いつの間にか眠ってしまったようだ。窓から差し込む光が眩しい。朝になったみたいだ。昨日のことはよく覚えていないが何があっただろうか?……思い出せないということは大したことなかったんでしょう。多分。

隣の布団では下着姿のリリアンヌがすやすや眠っている。こっちまで裸になりそうになるから早く服を着て欲しいかなぁ…… リリアンヌが起きないよう細心の注意を払って服を身につけていく。下着姿の彼女が目に毒すぎるため極力見ないように気をつける。

服を着終わる頃には完全に覚醒していた。頭痛はない。二日酔いではないみたいだ。よかった。

朝食を食べようと居間へ行くために扉を開けると廊下に誰かいたようでぶつかった。誰だろうと確認してみると見知った人だった。

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

そこにはリリアンヌの祖母である村長が居た。いつも綺麗にしている髭も艶無く疲れきった様子で顔色があまり良くない。

「体調悪いんじゃないですか?」

心配になって声をかける。すると彼は力なく笑みを浮かべ答えてくれた。

「大丈夫だ、少し寝不足なだけだ……」昨日から徹夜でシャブをキメていたのだろう。「……無理しないでくださいよ」

彼女の頭を心配しつつも、なぜこのタイミングで出てきたのか疑問を抱く。

村長は村で指折りのプッツンだ。嫌な予感がする……「お前達に話がある……」彼の目は虚ろだった。

これは絶対に面倒事が起きる気がするので逃げ出したくなった。……でも逃げられないよね〜分かってますとも。

とりあえず話を聞こうと部屋に案内することにした。

リリアンヌはまだ爆睡中だし起こす必要も無いでしょう。リリアンヌの部屋に戻ると彼女はまだ夢の中だった。本当に幸せそうなリリアンヌ。

村長は椅子に座り机に突っ伏した。

彼女が口を開く前に水を一杯出してあげた。

コップを置く音が合図となり、私たちは向き合う。「それで何でしょうか?」

私が尋ねると村長はゆっくりと語り出した。

「昨晩のことだがな……エルフの森で大規模な戦闘が起きたのだ」

それを聞いて血相を変えるジャンヌ。

まさかとは思ったけれどエルフ同士で戦争が始まったというのだろうか!?︎

「森の奥深くで薬物の栽培をしていた村人のアジトがバレたのだ。以前から怪しいヤツらが彷徨いていたが、昨夜の件で決定的となった。奴らは薬の製造工場を襲撃し、薬の原料となる植物を奪っていったのだ。そして我々への宣戦布告として連合国軍を名乗る書状を残して消えていったらしい。」

エルフからヤクの材料を盗むなんてバカな真似をしたもんだ…

「……その手紙にはなんと書かれていたんですか?」

ジャンヌは恐る恐る聞いた。

私は黙って聞くことにした。

「『我らは連合国軍だ。貴様らの作る麻薬は断じて許す事は出来ない。これより武力を持って制圧を開始する』だそうだ。ふざけた事を抜かす!」

怒りを顕にする彼女だったが、すぐに冷静さを取り戻した。

「だが、問題はそこではなく、これから起こるであろうことだ。」

そう言いながら一枚の紙を取り出し机に置いた。

その紙の一番上には大きく【宣戦布告】と書いてあった。

ジャンヌはそれを見て驚いた。

「人間共のふざけた宣戦布告によって我々は戦わなければならなくなった。もちろん戦うつもりだ。……しかし問題なのは敵戦力の情報だ。」

なるほど……確かに情報が少なすぎる。相手の数も規模も分からないまま戦いに挑むというのは自殺行為と言える。

「……相手の軍勢の規模とかは分かりませんか?」

「今調べている。異世界のドローンとかいう魔術装置は実に便利だ。」そう言って機械を取り出す。「こいつで偵察させている」

「えっ?そんな物あるんすか!?︎」

私は驚きの声を上げた。異世界にはこんな物まであるのか!!……村長は色々と説明していくが私には全く理解できない世界だった。

「うむ、これが空撮した写真だ」

そこには大きな城を中心に無数のテントや木造の家が立ち並び、かなりの数の兵士らしき者達が写っていた。

「詳しい数は分からんが数千人規模の軍勢だろう。今分析を急いでる」

「結構な大軍ですね」ジャンヌは腕を組み感心していた。

数は多いが剣や弓や投石器程度の軍が数千である。

エルフ達は有り余る魔力で異世界から頻繁に色々な物を召喚し調達していた。

 


銃器に弾薬、手榴弾やロケットランチャーに地雷から薬物の製造器具や実験器具、芥子畑の開墾用重機から果ては喫煙用のライターに至るまで何でも召喚していた。エルフの魔力は高いため無尽蔵に召喚出来た。

数千規模の軍隊なら地雷原は突破できないだろう。突破できても機銃陣地で蜂の巣だ。さらに上空からのドローンで爆撃も行えるらしい。エルフ達の勝利は揺るがない。

「……勝てますね」ジャンヌが安心して言った。

「ああ、楽勝だ」村長も自信満々に答えた。

エルフ達はドローンの偵察情報からから地図を作り敵の指揮系統も調べ上げた。

また進軍ルート上に地雷を埋め地雷原を作り上げ、更に塹壕を掘り機銃陣地も構築した。これならば敵軍は罠にかかり壊滅するだろう。エルフ達は異世界から無線機も召喚し精密な作戦も行える準備を整えていた。

後は敵の出方を待つだけだった。

森の塹壕の隠れ、敵を待ち伏せするエルフの戦士達。

ジャンヌとリリアンヌもその戦列に参加していた。

やがて人間の軍が進軍を開始する。森の中に張り巡らされた塹壕と地雷を見抜けず、爆発により負傷する兵士達。『死者よりも負傷兵』という言葉通り、彼らは地雷で次々と倒れていく。

指揮官は大声で怒鳴りつける。

「進め!我々の勝利は確実だ!」

だが既に勝敗は決していた。

地雷を踏んだ兵士が爆死すると、次の兵士は足を止めた。

「おい!止まれよ馬鹿野郎!!」仲間の死体を乗り越え前に進もうとするも腹部を撃たれ倒れる。次に進むのは困難だと悟った。

「くそったれぇー!!!」

彼は無謀にも突撃を敢行した。だがそれはエルフ達の思うつぼだった。

エルフの銃弾が降り注ぎ、彼の部隊は壊滅した。

一方的な戦いが終わり、勝利したエルフは意気揚々と凱旋し、リリアンヌは目を輝かせながら駆け寄っていった。

「お祖母ちゃん凄いですぅ〜!」

「ふふん、そうだろ。もっと褒めてくれても構わんぞ」

戦いに慣れているエルフ達は和気あいあいとその日の夜を過ごした。

一方連合国軍は地獄だった。

回収した負傷兵達で手一杯だったからだ。想定の何十倍も多い負傷兵に早くも医療物資が尽きかけていた。

「クソッ……なんなんだあの攻撃は……」

「知るかよ!」

「とにかく早く治療しないと死ぬ奴が出る!」

「薬はまだなのか!」

「足りない、足りねぇんだよ!」

「ちくしょう!」

「まずいな、このままではジリ貧だ」「どうすればいいんだ」

負傷者の収容作業と医薬品の補給作業を同時並行で行う事でなんとか戦線を支えているが、それも限界があった。「撤退すべきだ」

誰かが呟いた。そうだそれが良いと皆口々に同意した。

連合国軍幹部も撤退するべきだと思い本国に撤退の許可を求め早馬を出していた。明日の朝になれば本国から指令書が届くはずだ。そのはずだった。

翌朝になっても伝令は無かった。

連合国上層部は決断出来ずにいたのだ。

「どうなってる?なぜ許可が来ない?」

「こちらの事情など知りませんって事だな」

撤退命令が出せない以上進軍しかなかった。数を減らした連合軍は地雷原へ進軍を開始した。そして再び蹂躙される。

地雷原に嵌まり込んだ連合軍の将兵は逃げ場を失い、大量の爆薬に吹き飛ばされていった。ある者は地雷が爆発し下半身を吹き飛ばし、またある者は脚を吹き飛ばしていった。「あ、足がぁ……俺の、足がァアア!!!」

「痛え、助けて、嫌だ死にたくないぃ」

「何なんだよこれは!聞いてねえこんなの!!」

「神様、どうかお願いします」

彼らの願いは天には届かなかった。彼らは神に見放されていた。

エルフ達は笑いが止まらなかった。

「ぎゃははははは!!!ざまあみやがれ人間どもめ!!エルフの森を汚すからこうなるのさ!!お前らの血でこの森は赤く染まるのさ!!」

ジャンヌは狂喜しながら叫んでいる。「ああ、なんて素晴らしいのでしょう!貴方達が苦しむ姿が見れて幸せですわ!うふふっ、うふふっ、うふふっ、うふふっ、ウフフッ、キャハハッ!」

リリアンヌも興奮して笑っている。「これが戦争……すごい、楽しい……!私達の手で人が死んでいく……ああ、素敵……すごくドキドキする……!」

ジャンヌはリリアンヌを抱き締め喜びあった。「ああ、最高だねリリィ。あたしらの勝ちだ。」

エルフ達の損害は全く無かった。地雷原と機銃陣地によるワンサイドゲームだった。連合国軍自慢のロングボウは全く役に立たなかった。用意した投石器も易々と破壊された。

連合国軍の士気は崩壊寸前だった。エルフ達はそんな彼らを嘲笑いながら酒盛りをしていた。「ジャンヌ、ジャンヌ、もう我慢できないわ、殺そう、殺しましょう、全員皆殺しにしちゃいましょう!」

リリアンヌがジャンヌの手を握って言った。

「そうだねぇリリィ、今日は大盤振る舞いといこうじゃないか!酒だ!酒!」「はい!ジャンヌ酒よ!!」

二人はワインボトルを取り出しグラスに注ぐ。

それを一息で飲み干した。

「ぷはー!美味しい!」

「勝利の美酒は格別だぜ! くっくっく、あいつらが絶望する顔を想像するとワクワクするよ!」

ただでさえ凶暴なエルフ達はテンションが上がっていた。まるで悪魔のような邪悪な笑顔を浮かべていた。

翌日もまた敵軍は侵攻してきた。

地雷原に嵌り込み次々と爆発していく味方を見て、兵士達の表情は恐怖に染まっていた。

「くそったれ、なんなんだよこいつらは!?」

「知るか馬鹿野郎!!」「おい、何か来るぞ……」それは現れた。

「ぐぉおおおお!!」

「ひぃいいいい!!!」

戦争に飽きて来たエルフ達は機銃陣地からM2ブローニング重機関銃で一斉射撃を始めた。

重機関銃から放たれる12.7mm弾が兵士を挽肉に変えていく。

「ふははははは!!!」

「死ねぇ!」「血祭りじゃー!」

「オラ!もっと踊れよォ!」

「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!」」

一方的な虐殺が始まった。

連合国の兵士は剣を抜き突撃した。

だが、地雷を踏み抜いた瞬間に爆散し、身体中の破片でズタボロになりながら絶命していった。

連合国軍は撤退すら許されなかった。

連合国軍総司令官は本国に撤退許可を求めたが回答は得られなかった。

代わりに届いたのは撤退命令書ではなく、撤退不可能を知らせる伝令兵からの連絡書簡であった。

撤退は不可能だった。連合軍幹部は撤退を諦め、反撃に転じた。

しかし、連合軍の装備では、エルフ達に傷一つ付ける事が出来なかったのだ。

結局、連合国軍は降伏する事にした。

 


降伏した人間達をエルフは奴隷として有効利用した。彼らにとって人間は家畜以下の存在であり、エルフの森の労働力として使われていた。

 


こうして、人類史上最も残酷な戦いは終わった。連合国は各国二割以上の兵士を失った。

多くの将兵が捕虜となり、生き残った者達もエルフ達に捕らえら奴隷にされた。

エルフ達は大喜びだった。貴重な奴隷を大量に手に入れたからだ。

負傷兵はエルフの回復魔法で治療され奴隷魔法を掛けられた。

これにより、死ぬまで働く忠実な下僕となった。

若い健康な奴隷が一気に手に入りエルフの森の麻薬生産量は格段に上がった。

そして、エルフ達は戦勝パーティーを開いた。

リリアンヌが歌った。

「♪〜 ♪〜」

「やめろ、止めてくれぇ」

「神がいるなら助けて」

エルフ達は狂喜していた。

「ぎゃははは!!人間どもめ、ざまあみやがれ!!」

「あははははっ!!最高!!人間って本当に惨めで愚かで、ああ、なんて面白いのでしょう!!」

 


エルフの森麻薬撲滅戦争は失敗した。兵士は捕まり奴隷にされ麻薬製造に従事させられ麻薬の生産量は劇的に増えた。

エルフの森は広大で土地はいくらでもあったが奴隷が足りず麻薬の生産量が伸び悩んでいた。

戦争で確保した奴隷を使い麻薬生産量を伸ばした。連合国は増えた麻薬の流通により国力が更に低下した。

数年後、連合国は軍事力の低下、麻薬による国力の低下、増税に次ぐ増税により一揆が多発し次々と崩壊していった。

 


奴隷達は絶望していた。捕まってから既に5年も経っている。

最初は『自分達は捕虜だし解放して貰える』と思っていた。だが実際は違った。彼等は麻薬製造に従事させられた。

例えばヘロイン製造は人件費を抑える事が肝心だ。ヘロインは阿片から作られる麻薬だ。1エーカー(4047平方メートル)の芥子畑から3〜9kgの阿片しか取れない。

芥子のさく果に深さ1mm程度の切れ込みを入れ垂れた液を集める。それが生阿片だ。芥子さく果1つから数日掛け平均60mgの阿片を集めるのだ。

阿片から有効成分のモルヒネを分離し、モルヒネからヘロインを化学合成する。

エルフの森で作られるヘロインの量は膨大だ。奴隷がいくら居ても足りないのが現状だ。

今日も奴隷達は芥子坊主から阿片をヘラで集め続ける。「糞ッ!なんなんだこの作業は!?」

「黙れ!口を動かす暇があったら手を動かせ!」

「ちくしょう!」

「おい、あのクソガキまたサボりやがったぞ!」

「お前、自分の仕事に集中しろ!!」

「うるさい、ほっといてくれ。それに俺には帰る場所なんか無いんだよ……」

「そうか。まぁ頑張れよ」「チクショウが!!」

「おい、早く来い!!」

「はい!」「分かりました!」

「明日も同じ時間に集合しろ!分かったか!」

「はい………了解です」

次の日……。

「作業を開始せよ!!」

奴隷達は芥子坊主に切れ込みを入れる。ひたすら切れ込みを入れる。

少し経つと阿片が滴る。次の奴隷が阿片をヘラで取る。

延々と続く単純作業を何万回も繰り返す。

「おい!何を休んでいる!?貴様の仕事はまだ終わっていないぞ!」

「すいません!」

「もう嫌だよ!」

「お願いします!殺してください!」

「駄目に決まっているだろうが!!」

「うわあああん!!!お母さん!!お父さん!!」

「泣くんじゃない!!」

「何で俺たちだけこんな目に遭わないと行けないんですか?」

「知るかそんな事。どうでもいいから手を動かせ。阿片を取り続けろ!」

「はい……了解しました」

そして、また一日が終わる。

「今日のノルマはこれだけだ。解散!!」

「はーいお疲れさまでした〜」

奴隷達は疲労困憊だった。

「飯食って寝るか」

奴隷の一人が呟く。

奴隷達は貴重な労働力だ。食事の質は高い。病気になる事は許されないからだ。

エルフの回復魔法は強力だ。仮に病気になっても瞬時に回復され作業に復帰だ。仮病も使えない。だが、精神的に参る者は多い。

毎日毎日同じ事を繰り返せば誰でもそうなる。

「明日から休みだからな。ゆっくり体を休めるといい」

エルフ達は奴隷達に同情している訳では無い。

ただ、彼等が壊れると薬の製造に支障が出るから言っているに過ぎないのだ。

「やったぜ!久しぶりに風呂に入れるな」

「そうだな」

「今日はゆっくりと眠れますね…」

奴隷達の健康管理は完璧だった。何よりヤクの品質上衛生管理は重要だった。風呂が嫌いでも無理矢理入らせた。

精神が病み眠れない者は睡眠薬で眠らせた。異世界から抗うつ剤も召喚し飲ませた。病む事は許されなかった。奴隷達は心身共に疲弊していた。

(ここは地獄だ……)

奴隷魔法により絶対服従を強制されていた。逆らう気力など無かった。ただ淡々と阿片を集め続けた。

ある日、一人の奴隷がふと思った。

「どうして俺はここに居るんだろう?何の為に生きているのだろうか?」

答えは出なかった。だが、一つ確かなのは自分が生きる意味を見いだせないという事だけだった。

 


次にコカイン製造を紹介しよう。

ご存知のようにコカインはコカの木に含まれるアルカロイドの一種である。

原料となるコカの木は海抜500m〜800mの山の斜面で栽培され、年4〜6回葉を収穫する。気温が低く降水量の少ない地域で栽培される。湿度が14%を越えると収穫したコカの葉が発酵しコカインが破壊される。

標高が高く湿度も低い環境で奴隷達は働く。

「寒…!」「ほら、手を動かせ!」

「すみません……」奴隷達はコカの葉を丁寧に切り取る。

酸素の少ない高地での収穫作業は大変だ。高山病で倒れる者も多い。倒れると直ぐに回復魔法で強制的に回復させられ作業を続ける。

「……」

「おい、手が止まっているぞ!」

「す、すいません!」「寒い...」

「黙れ!文句を言う暇があったら手を動かせ!」

「はい、分かりました」

次の日……。

「今日は乾燥を行う!!」

奴隷達は収穫したコカの葉を並べて天日で乾燥させる。湿度が高いとコカの葉が発酵してしまいコカインが破壊されてしまう重要な作業だ。

「早く並べろ!」「もたもたするな!」

「はい!」「うぅ……」

「おい!早くしろ!!」

「申し訳ありません……」

「チッ!」

「おい、そっち終わったならこっち手伝え!」

「はい!」

 


乾燥が終わった次の日…

「今日でこの作業も最後だ!全員しっかりと働け!」

「はい!」「了解です!」

「おい!早くしろ!!」

「はい!」「分かりました!」

最後の工程に入る。

コカの葉が乾燥するとコカの葉を潰し糊状のペーストにする。

 


設置したコンテナにコカの葉を敷き詰め炭酸ナトリウムと水を加えて灯油を中に加えて足で踏む。コカの葉からコカインを灯油に溶かすのだ。

 


コカの葉と灯油の混合物を奴隷達が踏みつける。ひたすら混ぜ続ける。

そして更に次の日……。コカペーストが完成する。

コカペーストはコカインを30%含む物質だ。コカペーストはエルフの森に送られ熟練の技術者がコカインへと加工する。

コカペーストから塩基コカインへ、塩基コカインからコカイン塩酸塩へ加工し見慣れたコカインの完成だ。

奴隷の仕事はコカペーストを作るまでだ。彼らは標高600mの山で年6回の収穫を行い続ける。彼らが山から降りる事は二度と無い。

 


彼ら奴隷達はエルフの森から出ることは永遠に無い。

「さあ、お昼ご飯ですよ」

「はい、ありがとうございます」

「しっかり食べて午後からも頑張りましょうね」「はい」

奴隷達は食事を摂る。

(これが俺の人生か)

食事は美味しかった。だが、心は空っぽだった。

奴隷達は今日も働く。心を無にしながら。自分達の故郷の売られる麻薬を作りながら。

 


奴隷達は寿命以外で死ぬ事は無い、エルフの回復魔法で無理矢理生かされ続ける。寿命が尽きるその日まで麻薬を作り続ける。

 


ジャンヌは奴隷達が育てマリファナの試作品を試していた。

彼女はジョイントを巻き火をつけて吸っていた。

「どうですか?」

「まあまあかしらね」

「そうですか」

「少しグレードが低いわね」

「品種改良するわ」

「お願いね」

エルフの求める品質は非常に高い。妥協は許されない。

大麻は品種により品質が左右される。

「次の品種よ」

リリアンヌがジャンヌに違う品種のマリファナを渡す。

素早くジョイントを巻き吸う。

「これはまあまあね」

(良かった……)

ジャンヌが満足してるならそれは良いマリファナだ。

「次はこれね」

また別の品種のマリファナを渡される。

「…………」

「どうかしました?」

「いえ、なんでもないわ。続けて頂戴」

「じゃあ次はコレね」

その後、マリファナは様々な種類を試された。

最後に吸ったマリファナは最高の出来であった。

「これは素晴らしいわ……」

「凄くいい匂いですね……」

「えぇ……素晴らしい香りだわ……」リリアンヌも気に入った様だ。

「この品種を売る事にするわ……」

「本当!?」

「えぇ、直ぐに手配するわ」「やったー!」

こうして、今までで一番のマリファナが完成した。

早速村長に見せに行くことにした。村長もそのマリファナを絶賛し、販売が決定された。

 


とある国のとある都市

汚い身なりに男達がコソコソ話をしていた。

「あるか?例のアレ」

「あるぞ、金はあるんだろうな?」「勿論だ、ほらこれだ」

男は金貨を手渡すし薬を受け取る。

「確かに、毎度あり」

「おう、今後も頼むぜ」男たちは笑い合う。

 


とある安宿では…

「クフッ……ヒヒッ……」

「アヒャッ……イヒィッ……」

「ウヒョッ……キャッハハッ……」

「やべっ……我慢できねぇ……ブヘヘッ!」

「キメちまえよ!ギャハハ!」

薬物中毒者だらけの部屋で酒を飲みながら女を抱く者もいれば、ヤクを吸いながら乱交する者もいた。ここはあらゆる欲望が渦巻き、薬物と快楽が支配する。

 

 

 

一方エルフの村では…

ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅーーーーーっ…」ジャンヌは水パイプでマリファナを吹かしていた。

ああ…美味しい…最高だわ……。

「あぁ〜幸せ〜」

「最近機嫌が良いみたいですけど何かあったんですかね?」

「さあ?」

「ひょっとしたら恋かも知れませんね」

「まさか、そんなわけ無いでしょう」

「ですよね」

リリアンヌとジャンヌは他愛も無い会話をする。

「あっ、もうこんな時間だわ、そろそろ寝ましょう」

「そろそろ寝るかぁ…」

ジャンヌは寝る前の一服を水パイプでマリファナをふかしていた。

「あぁ……素敵……本当に素敵な世界だわ……私はなんて幸せなのかしら……」

彼女はトリップしながら眠りにつく……。

 


エルフの森は今日も平和だった。奴隷達の心は空っぽだがエルフ達の心は満たされていた。

きっと明日も平和だろう。明後日も平和に違いない。

 


エルフの森はラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森7!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 

その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


そんな森の奥深くに暮らすエルフに美少女がいた。彼女の名前はジャンヌ。マリファナが大好きな普通のエルフだ。

 


ジャンヌと共に暮らすのはアル中のリリアンヌ。「あー、今日もお酒美味しいなぁ」彼女はお気に入りの木箱に座っている。木箱には彼女がいつも飲んでいる芋焼酎が入っている。彼女にとってこれが命の水なのだ。

「ん? 誰か来たのかしら?」

森の中からこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。どうやら誰か来たようだ。

(まさか……村長じゃ無いでしょうね!?)

ジャンヌは慌てて立ち上がった。そして銃を構える。いつでも戦えるように準備したのだ。もしこの場に現れたものが村長だった場合、最悪撃ってしまっても構わないだろう。だが、もしも違う人物ならば……。殺そうとしても村長なら死なないだろう。しかしそれでも殺すつもりは無い。ジャンヌは死にたくないからだ。

「誰だ?…あれ??」

そこに居たのはエルフの少女であった。彼女はジャンヌ達の姿を見ると安心したような表情を浮かべた。どうやら敵意は無さそうだ。

見たことの無い少女がいる。年齢は16歳くらいだろうか。彼女は薄汚れてボロ布のような服を着ている。髪は長くボサボサで、肌は不健康に荒れ垢まみれでやつれている。シャブ中の見本のような少女だ。(これは……ヤク中か?)

ジャンヌは警戒心を少しだけ上げた。

「えっと……どちら様でしょうか?」

ジャンヌは恐る恐ると聞いた。すると少女が口を開いた。

「わたしの名前はアリシア・ウォーカーですわ!! 偉大なる神の声に導かれこの地に参りました!!!」

こいつはシャブ中だ。せん妄状態だ。(こいつ絶対シャブ中じゃん!!!)

ジャンヌは安堵していた。目の前の少女は明らかに狂っているように見える。しかもかなり重症に見える。恐らくまともな会話は難しいだろう。とりあえず落ち着かせようと考えたジャンヌは彼女に優しく語りかけた。

「落ち着いてください、シャブを打てば冷静になりますよ」ジャンヌの言葉を聞いた途端、アリシアの顔つきが変わった。まるで親の仇でも見つけたかのような憎悪に満ちた目をしている。

「うるさい!!! 黙りなさい!!」

いきなり怒鳴られたことに驚いたジャンヌであったが、すぐに気を取り直して再び話しかけようとする。しかしその前にアリシアの方が先に話し始めた。

「私をバカにするんじゃないわよ……私は正真正銘本物なんだから!!!」

そう言って彼女は懐から何かを取り出した。それは小さなガラスの小瓶に入った透明な液体だった。ジャンヌはその小瓶に見覚えがあった。里のエルフ達がよく持ってるヒロポン3mgアンプルだ。(やっぱりポン中だった……)

「ほら! 見てみなさい! これがあればどんな病気も治すことができるのよ!!」

ジャンヌは思った。間違いなくヤク中の戯言だと。ヒロポンで本当に病が癒せるわけが無い。しかしジャンヌにはどうすることも出来ない。下手に手を出すと何をするかわかったものでは無い。

「わかりました。信じる事にします」ジャンヌは適当に返事をした。とにかく早く帰って欲しいのだ。「ふんっ。わかればいいのよ!」

完全に自分は正しいと思い込んでいるアリシアを見て、ジャンヌは自分の判断の正しさを確信した。

その時、リリアンヌがあることに気付いた。

(あれ? この子どこかで見た事がある気がする…)

どことなく村長の面影がある。この子は一体何者なのか? もしかすると村長の親戚かもしれない。だがあの村長の親戚にしてはあまりにも不出来すぎる。そんなことを考えていたリリアンヌだったが、ふとあることを思い出した。(あれ? この子の目元……村長に似てるような……まさか……)

リリアンヌはある考えに至った。もしその通りならばこの子がここにいることは辻妻が合う。ジャンヌは深呼吸をして、意を決して質問した。

「あなた……ひょっとして……村長の曾孫?」

「え? はい……そうですけど……」

(ビンゴォオオオ!!!)リリアンヌの心の中で歓喜が湧き上がった。

(つまりリリアンヌの姪…)(姉さんの娘……)

ジャンヌも遅れて理解した。そして、同時に頭を抱えたくなった。

(うそぉ……)まさかリリアンヌの親族が来るとは思ってなかったのだ。

(あぁ……めんどいな……)ジャンヌは考える事を止めた。もう何もかも面倒になったのだ。

「私は神だ!私は神だ!あーーはっはっは!!!」

高笑いをしながら銃を乱射し始めるヤク中の少女アリシア。彼女は今、とてもハイになっているようだ。

「お前たち全員ぶっ殺してやる!皆殺しじゃああ!!」

「ちょっと落ち着け!!」

興奮した様子のアリシアを落ち着かせるため、アリシアを殴り付けた。彼女が意識を失うまで殴り続けた。

「……」

アリシアは気絶した。仕方ないので地面に寝かせたままにしておくことにした。ジャンヌ達は家の中へと入って行く。ジャンヌはアリシアについて知っている事を話すように求めた。

「えっと……彼女が私の従姉妹のアリシアです」

「そうなんですか〜」

「はい、名前は知っていましたが、会ったのは初めてですね。……ところでどうしてこんな所にいるんでしょうか?」

「さぁ、なんでしょうね〜?」

「……やっぱりシャブ中ですか?」

「おそらくは……村長にそっくりだし…」

シャブを打ち銃を乱射。村長そっくりだ。

「とりあえず起こしましょうか?」

「お願いします」

ジャンヌがアリシアを蹴り続ける。彼女はすぐに目覚めた。

「ここはどこだ!? 敵はいないのか!!」

「落ち着きなさい」

ジャンヌが再び殴った。再び気を失った。その後、ジャンヌはアリシアに詳しい事情を聞くために起こした。また暴れないように注意しながら話を聞いたところ以下のことが分かった。

 


・自分は偉大なる神の啓示を受けてこの地に来た。

・人間を滅ぼす為にやって来た。

・自分は偉大な預言者だ。

・まず手始めにこの村を潰す。

「嘘つけ!!」

ジャンヌは再びアリシアをぶん殴って気を失わせた。

「ダメだこいつ……早く何とかしないと……」

「どうするのコレ?」

「とりあえず村長の家に連れて行きます……これ以上問題を増やさない為にも」

結局ジャンヌ達はアリシアを村長の家に捨てに行くことにした。村長の家は質素であるが、広い家である。客間の一つを貸してもらいそこにアリシアを置いておくことにしよう。

後は知らない…アリシアは来なかった…自分は悪く無い…

ジャンヌは自分に言い聞かせた。「はぁ……」

ジャンヌは大きな溜息をつく。疲れがドッと出た。

今日はもう休もう。そう思い、自分の部屋に戻るのであった。

「はぁ……」

ジャンヌは深い溜め息をついた。

(村長一族はプッツンしかいないのか?)ジャンヌの悩み事は尽きないのだった。

リリアンヌの姪アリシアがエルフの里にやって来てから二週間ほど経過したある日のこと…

『神になるのだ!!私は神になるのだ!!神になるのだ!!!』

アリシアの叫び声が聞こえる。

[パーン!パーン!パーン!パーン!]

アリシアが愛用のトカレフを乱射する音が聞こえる。

(うるせぇなぁ……)

ジャンヌは耳を押さえながら思った。ここ最近毎日のようにあのヤク中の絶叫を聞いている気がした。

あの後、村長宅にて目を覚ましたアリシアは自分が何故ここに居るのかわからず混乱していた。

そして、村長とアリシアは意気投合しあれから毎日暴れていた。

村長が言うには昔よく一緒に遊んでいたらしい。

「あの子はとてもいい玄孫だ」とのこと。だが今はただ迷惑でしかない。アリシアを村長に押し付け、よかったと思ったが後の祭りだ。

「おらぁーーーーーー!!」

アリシアの雄たけびと共に銃が発砲される音が鳴る。

「……」

ジャンヌは無言のまま窓の外を見た。そこには村長と一緒に森の奥へと消えていくアリシアの姿があった。

「何度見ても狂気しか感じられないんだが……大丈夫なのかアレで……」

ジャンヌは心配になった。

「ま、いっか」

考えるのを放棄した。

ジャンヌは気分転換の為に外に出ることにした。

外は晴れており、気持ちの良い日差しが降り注いでいた。

「はぁ……」

ジャンヌは深く深呼吸をする。空気がうまい。

[パーン!パーン!パーン!]森の中から聞き慣れたアリシアトカレフの発砲音が響く。

「ふぅ……」ジャンヌは歩き出した。特に目的地は無いのだが、自然豊かな景色を見て癒されたかったのだ。しばらく歩くと大きな湖が見えてきた。その畔に腰掛けて、空を見上げる。

雲一つない青空が広がっていた。

「あー、平和だな……」

[バン!バン!バン!」村長の44マグナムの発砲音が鳴り響く。「……」

ジャンヌは現実逃避することにした。

その後、一時間ほどで村長達も飽きたらしく発砲音が聞こえなくなった。

「ようやく静かになったか……」

ジャンヌは立ち上がり大きく伸びをした。懐から巻き紙とマリファナを取り出し素早く巻き火を着けて吸った。

「ふぅー…」ジャンヌは煙を吐き出した。美味い煙だ。

「さて、帰るか…」今日の夕食は何だろうか?丁度お腹も減ってきた。

「ただいまー」ジャンヌが帰宅すると、リリアンヌが食事の用意をしていた。

「おかえりジャンヌ」リリアンヌは笑顔を浮かべる。「今晩はシチューですよ」

「やったぜ」

ジャンヌは手を洗い、食卓に着く。リリアンヌが隣に座ってくる。

「はい、パンです。熱いうちに食べてくださいね?」

「いただきます」

ジャンヌは早速スプーンを手に取り、シチューを口に運ぶ。

「うんめぇ!!」

「それは良かった♪ 作った甲斐がありましたよ〜」

「最高だよ!!」

「あらあら……」(なんか新婚みたいだな〜)ジャンヌは幸せを感じていた。ジャンヌ達が食事をしていると、突然発砲音が鳴り響いた。「またあいつか!?」ジャンヌは急いで玄関へと向かう。そこには案の定アリシアがいた。

「テメェいい加減にしやがれ!!今度は何をするつもりだ!!」

ジャンヌは怒鳴りつけた。

「神になるのだ!!」アリシアは叫んだ。

「さっさと帰れ!!」扉を閉めた。「はぁ……」

ジャンヌはため息をついた。最近は毎日こんなやり取りをしている気がする。

「あの子どうしました?」

リリアンヌがやってきた。ジャンヌは事情を説明した。

「はぁ……」リリアンヌは大きな溜息をついて、額に手を当てた。「なんなんだ一体……」

リリアンヌは台所に戻っていった。

(疲れてるんかな………)

ジャンヌは自分の部屋に戻り、ベッドに横になって考え事を始めた。

最近のエルフの里についてである。アリシアが来てからというもの、エルフの里では銃の乱射遊びが流行っていた。みんなが皆お気に入りの銃を昼夜構わずぶっ放すのである。おかげで森の木が何本か折れたり燃えたりする始末だった。

アリシアが来る前は村長夫妻くらいしか銃を乱射し無かった。少なくともジャンヌはそう記憶していた。

(まぁいいけどな……)

ジャンヌは考えることをやめた。

翌日…… アリシアは懲りずにやって来ていた。

「修行するぞ!修行するぞ!修行するぞ!解脱するぞ!!」アリシアは叫びながら銃を乱射した。トカレフが2丁に増えている。「うるせえ!出てけヤク中が!」ジャンヌは怒鳴る。

「修行するぞぉおお!!!」アリシアは銃を撃ちまくっている。

リリアンヌはアリシアを止めに入った。

「もういいじゃないですか……大人しくしてましょう……」「だが断る!!」アリシアは叫ぶ。

「はぁ……」リリアンヌは深い溜息をつく。

ジャンヌは考えたくなかった。これ以上厄介ごとが増えるのは勘弁願いたかった。

しかし、その数日後に事件は起きた。

ある日のこと……[ドォーン!!!]轟音と共に地面が大きく揺れ動いた。

「何だ!?」ジャンヌは慌てて外に出た。

そこには巨大なキノコ雲が立ち上っており、爆心地を指差しながらゲラゲラとエルフ達が笑っていた。「あれが神の炎だ!」

「ついにやったか!」

「これで我らの悲願も達成される!」

『あー、あー、テステス』

どこからともなく声が聞こえてきた。ジャンヌはその方向を見る。村長宅前の広場に魔導拡話器を持ったアリシアが立っていた。

『見たか!皆の者!愚かなる人間共に正義が行われた!』

どうやら人間の街が爆破されたようだ。

「おい、まさかお前の仕業か?」ジャンヌはアリシアに向かって言った。

「そうだ、我が力を思い知らせてやったわ」アリシアは不敵に笑う。

「はぁ…」ジャンヌは脱力した。アリシア厨二病を併発していたようだ。

シャブ中で厨二病

とか救いようがない。

「私は神になったのだ!!」アリシアは叫んだ。

「はいはいそーですねー」

ジャンヌは適当にあしらうことにした。正直これ言って相手にするのが面倒くさかったからだ。

「我こそは女神にして全知全能のアリシア・バートレットである!!」

「へー」

「よって私が人間共に天罰を与えた」

「ふぅん」

ジャンヌは完全に興味を失っていた。早く帰って一服したいなぁと思っていた。

「聞いておるのか?」

「ハイヨー」ジャンヌは欠伸をした。

(面倒だ、このまま帰ろう)ジャンヌはアリシアを放置し帰ることにした。

 


「ただいまー…」ジャンヌは家に帰った。

ジャンヌは自室に戻り、パイプを取り出しマリファナを詰め火をつける。深く煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

「ふぅーーーー…」煙が吐き出される。そしてジャンヌは考え始めた。

しばらく考えてジャンヌはあることに気付いた。

「しまった…今日の夕食は私の当番だった…何か作らないと…」ジャンヌは台所に行き冷蔵庫を開ける。中には大量の酒瓶があった。

(うっ……今日は何にも買ってないな……)

ジャンヌは買い出しに行く事になった。ジャンヌは近くの肉屋へ向かった。

「へい!らっしゃい!」店に入ると威勢の良い挨拶が飛んできた。この店の店主だ。

「おう、親父さん、豚肉あるかい?」

「あいよ!豚バラで良いかい?」

「それで頼む」ジャンヌは財布からお金を出した。「毎度ありぃ!」

(さっさと買い物済ませちまうか)

次は八百屋のおばちゃんの所に行った。

「あらぁ!ジャンヌちゃぁん!いつもありがとうねぇ!」

「すいません、ジャガイモ5個貰えますか?あと玉ねぎも」

ジャンヌは代金を払って店を出る。

「いつもありがとうね、また来てね!」

「はーい!」

(疲れた……)

ジャンヌは重い足取りで帰路につく。

「帰ったぞー……リリアンヌは居ないか……はぁ……飯作るか…」

ジャンヌはマリファナを吸いながらカレーを作ることにした。幸いカレー粉はあった。

具材は豚肉に人参じゃがいもタマネギ、それにリンゴを入れればいいだろう。後は煮込むだけだ。

「よし完成っと!」

ジャンヌは料理が完成したことに満足しリリアンヌが帰るまでマリファナで一服する事にした。

グラインダーで砕き、巻き紙に置く。くるくると巻き上げジョイントの完成だ。

火を付け煙を吸い込み…うまい…至福の時間だ……。

ジャンヌは幸福感に包まれていた。

ガチャリ…… 玄関の鍵が開く音が聞こえてきた。リリアンヌが帰ってきたようだ。

リリアンヌは家に帰ってくるなり、部屋中に充満する匂いに顔をしかめた。

「臭いです……換気をしましょう」そう言い窓を開く。冷たい風が入り込んできて少し寒い。

「おかえり、今食事用意してやるから待ってくれ」ジャンヌは鍋からカレーを盛り付ける。「美味しそうな香りですね」リリアンヌはテーブルに座り、食事を待っていた。

「ほれ、出来たぞ、食べてくれ」「いただきます」二人でいつも通りの食事だ。

リリアンヌは焼酎をゴクゴクと美味しそうに飲み饒舌になる。

ジャンヌも久々に大麻樹脂をパイプで吸いながら話が弾む。

(アリシアが来てから色々と気にし過ぎたか?)

ジャンヌは自分が気にし過ぎている事に気付いた。

銃を乱射するのも前から村長夫妻が毎日やっていたでは無いか。

人間の街を爆破するのも里の誰かが時々やっているでは無いか。

リリアンヌと食事をしていたら段々といつもと変わらない事に気がついていた。

 


(気にし過ぎか…)

ジャンヌは考え事をしながらもカレーを食べ進める。

「ご馳走様でした」二人は同時に完食した。そして食器を流しに置き、ジャンヌはソファーに座った。

ジャンヌはジョイントに火をつけ一息つく。

「ふぅーーー……」気付くと隣にはリリアンヌがいた。

「どうした?」ジャンヌは不思議に思い尋ねた。すると突然リリアンヌに押し倒された。

どうやら酔っているようだった。ジャンヌはそのままリリアンヌを部屋に運んでベッドに寝かせた。

 


「寝るか……」

ジャンヌも色々と吹っ切れたせいか急に眠気が襲って来た。

早くベッドに入ろう。明日も銃声で目が覚めるだろう。

そんなことを考えながらジャンヌは眠りについた。

 

 

 

エルフの森は平和だった。エルフの森で武器の使用は日常茶飯事。

いつも通りの日常でいつも通り平和だった。

きっと明日も平和だろう。エルフの森はラヴ&ピース。

 


-END-

おいでよ!エルフの森6!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


[パン!パン!パーン!]

エルフの里に乾いた破裂音が響き渡る。村長の愛銃スミス&ウェッソン44マグナムの発砲音だ。

 


撃ったばかりの拳銃を手に持ったまま恍惚としている村長。

「頭が冴えてきたぜ!!」そう言ってリボルバー式のハンドガンを乱射する。44口径マグナム弾の騒音が村中に響き渡る。シャブが効いて来たようでご機嫌だ。弾を撃ち尽くすと空薬莢を取り出しポケットから新しい弾を取り出し銃に装填する。

[ズガーン!ズガーン!ズガーン!!]

村長のマグナム弾とは異なる発砲音が鳴り響く。彼女の夫であるロバートの愛銃デザートイーグル.50AEの発砲音だ。彼はオートマチック派だ。

お互いマグナム弾が大好きだった。弾はホローポイント弾しか使わない。

村長はシャブ派で、ロバートはコカイン派だった。お互いアッパー系で仲が良かった。

 


彼らの発砲音はエルフの里では鶏の代わりの朝を告げる目覚ましだ。朝日が登ると二人は仲良く寝起きの一発をキメ、そのまま外で銃を乱射するのだ。これが毎日のお決まりのパターンであった。

エルフ達も慣れたものだ。二人の銃撃が始まると寝ている者は起き出し、徹夜でキメている者は布団に潜る。

 

 

 

リリアンヌも目が覚める。

眠い目で枕元に置いたビール缶を手に取り蓋を開けゴクゴクと飲み干す。目覚めの一杯だ。異世界の雑誌で『寝起きに水を飲むと健康に良い』と書いてありその習慣を取り入れた。ビールは水だ。

彼女は信じていた。

「ぷっはー!」美味しい。もう一本飲んじゃおうかな?……

 


ジャンヌも目が覚める。

眠い目で枕元に置いたボングに口を付け火皿のマリファナに火を付ける。

ボコボコボコボコボコボコボコボコ……大きく息を吸う。

目覚めの一服だ。異世界の雑誌で『寝起きに深呼吸すると健康に良い』と書いてありその習慣を取り入れた。大麻は空気だ。

彼女は信じていた。

「ぷっはー!」美味しい。もう一服吸っちゃおうかな?……

「おはよう」「おはよう!」部屋から出た二人は互いに挨拶する。二人は同じ家に住んでいた。

 


「今日は何発撃ちましたか?」ロバートが聞く。

「100発くらいかな」村長が答える。

「そんなもんですかねぇ〜」ヤク中同士意味の無い会話をする。彼らは朝の乱射を終えるとまたヤクをキメる。

村長はシャブを注射し、ロバートはコカインを鼻から吸う。夫婦二人で仲良く薬を楽しむ。

 


リリアンヌが起きてきて朝食の準備を始める。今日のメニューはシリアルだ。牛乳の代わりにカルーア・ミルクをかけて食べる。

ジャンヌも朝食を摂り始める。相変わらず凄まじい量を食べるな、

と思いながら見ているとあっという間に食べ終えてしまった。

食事を終えた一行は森の奥へと足を運ぶ。

奥に行くほど木々が生い茂っている。

鬱蒼とした森の中をしばらく進むと拓けた場所に出た。芥子畑だ。

 


畑には村長夫妻が捕らえた人間の奴隷達を働かせていた。

立派に育った芥子坊主を眺めてると収穫の時期が来た事を実感する。今年の実入りはどうだろうか?

「おお!実ってますね!」ロバートが叫ぶ。

「どれどれ……」村長が芥子を摘む。

「こいつぁいい出来だ。去年よりかなり上等だぞ」

そう言うと手早く芥子坊主に[川]や[三][井]の字に切れ込みを入れて行く。

少し経つと切れ込みを入れた芥子坊主から乳白色の液が滴る。生阿片だ。奴隷達は次々と芥子坊主に切れ込みを入れ、液が滴るとそれをヘラで集めていく。芥子坊主1つから取れる阿片の量は僅か60mg程しか取れない。数を集めるためには膨大な量の芥子畑が必要だ。阿片を集める作業も全て手作業で行う必要があり普通にやっては元が取れない。

村では森の外で捕らえた人間を奴隷として使っているため人件費はタダだ。労働力として重宝している。

奴隷は便利だが大量の阿片を作るとなると話は別だ。この広大な土地を全て耕して種を植えて栽培する必要がある。

これだけの面積になると人海戦術が必要になるが、エルフは数が少い。奴隷にやらせると重労働ですぐに死ぬ。

そこでエルフ達は異世界から農業用トラクターを召喚し広大な畑を作った。これなら人力に比べて圧倒的に少ない人数で農作業を行え、しかも一度に広範囲の土地を耕作できる。

エルフ達が奴隷を使役する理由は他にもある。それは麻薬の製造方法の秘匿のためだ。

エルフの里で製造されるヘロインは質が良いことで評判だ。純度が高く静脈注射が出来る程だ。静脈注射は強力で一度使うとその快感から抜け出せない。エルフの里の名産品だ。里の外に漏れ出す事など絶対に避けたい。

「来年にはもうちょっと量を増やせるだろうよ」

村長が嬉しそうに話す。

「これでまた新しい工場が建ちますねぇ〜」

ロバートも嬉しそうだ。「あそこに見えるのはなんでしょう?」

リリアンヌがある一角を指し示す。

そこには巨大な金属製の機械があった。「あれかい?アレは肥料を製造する装置だよ。」死んだ奴隷の処理装置のようだ。

「死体をミンチにして肥料にするんだ。」「へぇ〜便利なものがあるんですね」

奴隷達は必死に働く。いずれ解放されると信じて……

 


やがて夕方になり一行は集落に帰る。

帰り道ジャンヌが話しかけてきた。

「今日も楽しかったな!!」

彼女はマリファナをキメている。

マリファナでハイになっている時は会話が弾むのだ。

「ええ、最高だったわ!」

リリアンヌも焼酎をラッパ飲みする。

「明日は何発撃つ?」

「100発くらいかな?」

「そんなもんかねぇ〜」

村長とロバートの意味の無い会話も続く……

4人はヤク中特有の意味の無い会話を楽しみながら帰路に着く。

 


「疲れた〜」「疲れたわね〜」

ジャンヌとリリアンヌは自宅に帰って来た。ジャンヌとリリアンヌはお風呂に入る。2人の美少女は互いの身体を洗い合う。

全身泡だらけになった2人が浴槽に飛び込む。湯船に浸かり一日の疲労を癒す。

ざぶんと音を立ててジャンヌとリリアンヌの肢体が浮かぶ。

「ああ、気持ちいい……」ジャンヌが呟く。

「本当ですねぇ〜」

リリアンヌも答える。

そのまま二人はお風呂を上がりパジャマに着替え、リリアンヌはビールを飲み、ジャンヌはジョイントを吸いながらご飯を作った。2人で仲良く夕食を摂る。食事を終えると食後のデザートだ。バニラアイスだ。

ジャンヌがジョイントに火をつけると吸いながらアイスを味わう。

「美味しいですかぁ?」

リリアンヌが尋ねる。

「うん!いつもより美味しい!」

リリアンヌはアイスに黒糖梅酒をかけて味わう。

「美味しい…」

2人はゆっくりとした時間を過ごす。

夜も更けてくると寝る事にした。

「それじゃあお休みなさい」そう言って二人はそれぞれの部屋に戻る。

 


リリアンヌは寝る前に焼酎を飲む事にした。『寝る前の適量の飲酒は健康に良い』と異世界の雑誌で読んだからだ。

リリアンヌは自分の基準で適量である焼酎4Lボトルを飲み干した。

明日も良い日に違いない。そう思いながら眠りに着いた。

 


ジャンヌは寝る前にマリファナを吸う事にした。『寝る前にアロマを焚くと健康に良い』と雑誌で読んだからだ。

ジャンヌは自分の基準ではアロマであるマリファナを吸う事にした。

きっと明日も良い日だ。そう思いながら眠りに着いた。

 


きっと明日も村長の44マグナムの銃声で1日が始まる…

 


今日もエルフの森は平和だった。きっと明日も平和だろう。

エルフの森はラヴ&ピース…

 


-END-

おいでよ!エルフの森5!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


エルフの森の奥深くに、エルフの里があった。

ありふれた里に一軒の家があった。そこにはアルコール中毒の銀色の長い髪をした美しい美少女リリアンヌと、マリファナを愛してやまない金髪碧眼の美しい美少女ジャンヌが住んでいた。

 


「あー!美味え!!」

リリアンヌは酒瓶を手に取りラッパ飲みする。

 


リリアンヌ。銀髪蒼瞳のエルフだ。優しい性格だが怒らせるとめちゃくちゃ怖い。酒を飲んだら手がつけられないほど暴れ出す事もある。

もう一人がジャンヌだ。金髪碧目の少女である、不真面目な性格をしており、彼女の一番好きなものはマリファナだった。

 


そんな彼女たちは森の中で暮らしていた。面白半分でモンスターや人間を狩猟をしたり、村の芥子畑で仕事をしたりしながらヤクを密売し暮らしており、充実した毎日を送っていた。

 


ある日のことだった。ある時里に一人の初老のエルフが現れた。彼は名をホフワンと言った。薬物合成の達人だ。彼の活躍によりエルフの里の生活は大きく変わった。

まず、リリアンヌは彼に勧められカビから幻覚剤を作ることを覚えた。最初は好奇心からた合成を始めたが、今では化学合成が大好きになっていた。

最初リリアンヌは驚いた。麦に付くと毒性が強すぎ食べられなくなり捨てられている麦角菌から素晴らしい幻覚剤が作れるのだ。

人間からカビた麦をタダ同然で仕入れる。そこから複雑な行程をいくつも行ない最強の幻覚剤であるLSDに仕上げるのだ。

LSDの合成法を編み出したホフワンはエルフ達から非常に尊敬されていた。ごく微量で効果があり使って良し売って良しの素晴らしい物質だった。

さらに彼は薬の効果を高めるために様々な研究をしていた。例えば村では芥子を栽培しており芥子から取れる阿片から麻薬成分を単離しモルヒネを作った。更にモルヒネからヘロインを合成し里の収益は大きく増えた。こうしてエルフの里には大量のドラッグが流通するようになった。エルフ達は幸せだった。

 


ある日のこと、村に人間の軍隊が現れたのだ。彼らはこの森を王国の領地に組み込もうとやってきたのだ。そしてエルフたちを奴隷として連行しようとした。

当然、そんな事は不可能だった。エルフ達は異世界から召喚した大量の銃器で武装しており中世程度の軍隊はあっさりと処分された。

エルフ達は報復とばかりに王国に神経ガスサリンを散布した。王国の街は全て壊滅状態になった。

しかしまだ足りなかった。もっと苦しめばいいと思った。そこでエルフたちは王都に細菌兵器を使用した。

結果、王は死に、王家の血筋は途絶えた。生き残った貴族は国を捨て逃げたり降伏したりした。

王国は完全に制圧され、占領されてしまった。エルフ達は報復が済み用済みとなった元王国をどうするか悩んだ。

統治するのは面倒だった。エルフ達は面倒な事が嫌いだった。その時、ホフワンがある提案をした。

『ここは一つ、新しく傀儡国家を作り新しい王様を迎えてもらってはいかがでしょうか?』

それは名案だと皆思った。早速、エルフ達が集められ会議が行われた。その結果……王国で虐げられ奴隷にされていたホビット達に特権と権力を与え統治させる事にした。

ホビットの国の名前は"ヤクヅクリ王国"に決定した。初代の王は適当に選んだホビットに任せた。イエスマンなら誰でもよかった。

虐げられてたホビット達は運が良かった。運良く支配者階級なれたからだ。これで飢えることも無い、虐げられる事もない。人間の奴隷も沢山居た。奴隷にほぼ全ての労働をさせていが『反乱を起こされては面倒だ』と思ったエルフ達は異世界から調達したジャガイモやサツマイモ、トウモロコシや大豆といった育てやすい作物を普及させ奴隷達を飢えさせないようにした。暴動など起こされるのは面倒だった。

肥料不足はホフワン博士が異世界の書物から見つけたハーバー・ボッシュ法と呼ばれる魔道技術により空気中から無限に肥料を作り出し解決した。

王国の人間達は不思議がった、奴隷に落とされ酷使されやがて飢えて死ぬと思っていた。だが実際は新しい貴族のホビットから新しい農作物や作物がよく育つ素晴らしい肥料が与えられ暮らしが昔より良くなっていた。昔の貴族は飢饉の時すら例年通り税を奪っていったし冬場の餓死者は珍しく無かった。だが今はちゃんと働けば飢えることは無い。奴隷達は喜んで薬物の密売をするようになってくれた。

エルフの森で作られた各種薬物はヤクヅクリ王国に運ばれた後、人間の売人奴隷に渡される。売人たちは帝国や皇国へ運び薬を売るのだ。

売った薬の1%は売人の取り分になる。薬物の売却益は膨大だ。少量でも金貨100枚。多量に持ち込めば白金貨200枚にもなる。

生まれて一度も金貨を見た事がない者も多かった。リスクはあっても1回の密輸で金貨数枚から白金貨まで儲かる密輸事業は大人気だった。しかしそれでもリスクはある。エルフから提供された偽造身分証があっても、門番や国境警備隊に鼻薬を嗅がせても、密輸トンネルを掘っても、海を渡っても密入国はバレるリスクがあった。

そこでヤクヅクリ王国の人間達は帝国や皇国や公国で奴隷を買い密輸さえせる者も多く居た。

ホフワン博士の協力もあり飴と鞭の統治政策は大成功だった。それから約500年が経った。

------------

「……」

マリファナを吸いながらジャンヌとリリアンヌは書類に目を通していた。

 


麻薬の密売で稼いだ金は莫大なものになった。あれから何度も薬物汚染で周囲の国が滅び、滅ぶたび新しい国が興った。国が新しくなってもやる事が変わることは無かった。

リリアンヌはヤクヅクリ王国からの書類に目を通す。

【レグス公国では阿片が流行り至る所に阿片窟があり公国民が中毒になっている】

その報告を見て安堵する。「阿片か、問題ないわね」

阿片はエルフの里で大量に作っている。阿片からモルヒネを単離しヘロインも作っている。阿片の次はモルヒネを売り、モルヒネの次はヘロインを売るのだ。公国はまだまだ搾り取れそうだ。ドラッグの密売だけでも王国時代の数十倍稼いでいる。王国時代に王国に売りつけた麻薬を今度は帝国や皇国に売って儲けている。王国とエルフの里の関係は良好だった。王国とエルフの里の関係が良好なのは王国が"媚びを売っている"からだ。エルフ達はホビットを優遇し飴を与えるが苛烈な鞭も忘れて居なかった。時々出てくる生意気な貴族は一族郎党高射砲で公開処刑した。

 


そんな事を考えつつ、ジャンヌは報告書を眺めていた。

【セン王国では覚醒剤が蔓延し、市井の民から貴族まで愛用している】その報告書を読んで嬉しくなる。

ホビット達の密売組織はエルフの森で作られる各種薬物を帝国や皇国、そして王国に輸出していた。500年に及ぶ麻薬密売技術は完璧だった。ほぼ全ての国の重鎮貴族は金と薬と暴力で懐柔されていた。

世界各国が協力しヤクヅクリ王国へ経済制裁や禁輸処置を取っていたが効果はまるで無かった。ハーバーボッシュ法により無限に作り出せる肥料で食糧問題は解決していたし、金があれば何でも買えた。商人は儲かれば良いのだ。例え相手が悪の王国であろうが金払いは良いし、他国では値段が付かない労働力にならないような奴隷も買ってくれる上客だった。買われた奴隷は勿論ドラッグの密輸や現地で売人として使われる。

各国はヤクヅクリ王国を恐れた。ヤクヅクリ王国の国王はホビットだ。エルフ達とは仲が良いが他の種族には冷たかった。特に人間は徹底的に見下されていた。

実際はホビット達を完全に支配しているのはエルフであり例え王族でも決してエルフに逆らえなかった。

『極悪な巨大国家』が森に住む遅れたエルフに支配されてるとは夢にも思わなかった。それはヤクヅクリ王国に住む人間たちも同じだった。彼らは500年の時代の中でホビットが王侯貴族であり、人間が平民である事に疑問を感じなくなっていた。危ない仕事は買った奴隷とその子孫に任せ、平民達は農民や商人や職人など普通の生活をしていたのも理由だった。自分達がエルフに支配されていると知る者は居なかった。

 


王国の次の王は誰になるんだろう?ジャンヌは考えたが答えが出なかったので考えるのをやめた。

今日も家で2人は仕事を続ける。

リリアンヌ、今何時?」

「午後4時20分ですね…」

 


もう仕事は終わりだ。エルフの里では勤労は4時20分までの掟だ。

「疲れたーー…」ジャンヌは背筋を伸ばし書類や筆記具を片付け自室に戻る。

 


自室に戻り今日のマリファナを選ぶ。選んだらお気に入りのボングも取り出す。

コンコン…扉がノックされリリアンヌがペットボトル焼酎とビーフジャーキーを持って入ってくる。

 


トクトクトク……ワイングラスに焼酎が注がれていく…

トクトク……ガラスボングに水が注がれいく…

 


ジャンヌは今日のマリファナを火皿に詰め、リリアンヌはおつまみを広げる。

 


二人は仲良く乾杯し煙と酒に酔いしれる。夜はこれからだ…

 


今日もエルフの森は平和だった。明日も明後日も平和だろう。

 


エルフの森は今日もラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森4!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。森にはヤク中が蔓延り、モンスターすら薬漬けになっているため危険極まりない場所だ。

 


そんな危険な森の中に一軒の家がある。家主の名前はジャンヌ・ダルク

彼女はエルフ族の中でも一際マリファナが好きだった。

現在は仲の良いリリアンヌと共にヤクを密輸し生活をしていた。

「ああー! もうやってらんねぇ!」

ジャンヌが机の上にあったボングを叩き割った。ガラスの破片が飛び散る。

「どうしたんですか?」

向かいに座っていたリリアンヌが問うた。

手元には彼女が調合した大麻バターコーヒー置かれていた。この飲み物を飲むだけでトリップできる。

「最近村の方でも妙な噂が流れてやがんのよ」

「どんなですか? またオークが出たとかですかね?」オークとはゴブリンより二回りほど大きい亜人型のモンスターである。見た目の通り大雑把な性格をしており、力が強い以外は特に取り柄のない種族だが、繁殖能力だけは高いという厄介者だ。

エルフ達が面白半分で狩り続けたせいで最近ではめっきり姿を見せなくなったことから絶滅したのではないかと言われている。

「いやそれがさぁ……勇者が現れたらしいんだよ」

「へぇー…いつ頃現れたんでしょうね?」

「一週間前だってさ」

「えっ!?︎ それってヤバくないですか!?︎」

勇者といえば強大な力を持つ人間共の希望にして象徴だ。その存在が現れれば国を挙げて歓迎するのが常であるが……。

「ヤバイよなぁ〜ヤクの密売がやり辛くなるなぁ〜…」

「まあまあお酒飲みながら考えましょうよ」

そう言ってリリアンヌはグラスに焼酎を注いだ。

それから二人は日が変わるまで酒を飲んだ後眠りについた。

***

翌日二人が目を覚ますと家の外が何やら騒がしかった。

外に出るとそこには武装をしたエルフの一団がいた。

「野郎ども!!勇者をぶっ殺すぞ!!」

村長が檄を飛ばす。その手にはAK-47があった。

リリアンヌはそれを見て慌てて駆け寄った。

「ちょっちょっと待って!!一体何事なの!?」

「黙れ!勇者共のせいでクスリが売れねぇんだ!!だから殺す!!」

村長は持っていた銃床で思い切り殴りつけた。あまりの痛さに地面に転げ回るリリアンヌ。鼻から血が出ていたが、本人は気にする余裕すらなかった。

「お前も同罪だオラァッ!」村長はリリアンヌを殴り続けた。

彼女はシャブ中だ。話を聞くタイプでは無い。「落ち着い!話を聞いて!!」

必死に説得しようとするリリアンヌだったが、既に正気を失っている彼女に言葉が届くはずもなかった。

 


その後、村長は存分に暴力を振るい満足したのか、エルフ達村人全員を集めこう言った。

「これより我らは勇者を探す。見つけた者は報酬として金貨100枚!勇者を殺した者には金貨1000枚を与える!!」

『うおおおおおおお!!!』

皆が目を血走らせ銃を掲げて叫ぶ!!

『殺すぞ!殺すぞ!殺すぞ!!』

こうしてエルフの森では血に飢えたエルフの達よる勇者狩りが始まった。

 


「死ぬかと思った……」

ジャンヌに治療魔法で回復して貰いながらリリアンヌは呟いた。昨晩あれだけの騒ぎを起こしたにも関わらず、今は静寂を取り戻している。

「全く……どうしてあんな事をしてしまったんだ?」

リリアンヌ……」

「なあに?」

「私思ったの、私たちが勇者を殺せば良いんじゃない?」

リリアンヌは頭を抱えた。コイツ本気で言っているのか?

「あのなぁジャンヌ相手は人類最強の男よ?」

「大丈夫だって、銃があればなんとかなる」ジャンヌはいつも通りの笑顔を浮かべた。

「ジャンヌ……貴女まさかそのライフル使ってやる気じゃないでしょうね?」

ジャンヌが持っている物は全長780mm重量14.5kgの対物狙撃ライフルであった。

「当たり前でだ!これなら絶対勝てる!」

リリアンヌは悩んだ。このバカや村長や村のエルフの達を止める方法を。

(何かいい方法はないかしら?)

「そうだ!」リリアンヌはポンっと手を叩いた。「どうした?」ジャンヌが聞いた。

リリアンヌはこの場にいる者達を集めるよう頼んだ。

数分後全員が集まった。

「おいリリアンヌこれはどういうことだ?」村長が尋ねる。

「みんな聞いて欲しいことがあるんです。勇者を狙撃し暗殺しましょう。」全員がざわつく。

(なんて良いアイディアなんだ!!)エルフ達は感心した。

「よし分かった。それで誰が勇者をを殺す?」

「それはもう決まっています。ジャンヌが50口径対物ライフルで狙撃します。」

ジャンヌ自慢のバレットM82A1対物狙撃ライフルであれば勇者も即死であろう。皆がリリアンヌを褒め称える。

「良し決定!早速準備に取り掛かるぞ!!」村長の一声で暗殺が決まった。

「本当にこれで良かったんでしょうか?」

リリアンヌは不安になった。しかし、今更止めるわけにもいかない、勇者を召喚したと噂がある帝国の法では麻薬はご法度。帝国に召喚された勇者はエルフの里を襲うだろう。勇者の暗殺は成功させねばならない。全ては村の為ヤクの為勇者を殺す。

 

 

 

「クッソどうなってんだよ!?︎」

勇者マサヨシ・ケントは苛ついていた。理由は簡単だ。自分がこの世界に来て一週間、ひたすら訓練ばかりだったからだ。この世界の文明レベルは低い。中世ヨーロッパといったところだろうか。

 


自分の武器は伝説の聖剣エクスカリバー。しかしその威力は凄まじく、下手すれば帝都ごと焼き払ってしまう恐れがあるため使用は禁止されていた。

毎日同じ訓練訓練訓練訓練訓練……マサヨシは嫌で嫌で仕方がなかった。「ああクソッ!やってらんねーよこんなの!!」

マサヨシは天に向かって叫んだ。

異世界転移特典で強力なスキルでも手に入れちゃったりするんじゃないかと期待していたがそんなことはなかった。

「まあいいか。とにかく今日でこの訓練所からおさらば出来るみたいだしな。」

勇者の訓練期間が終わり次第帝国に凱旋するという約束だった。

「確か明日が最終日だとか言ってたな……」

 


翌日、訓練所に兵士達が集められた。

「諸君!これより帝都へ帰還の儀式を執り行う!!帰還の儀式は3時間後だ!それまで解散!!」

『はっ!』一糸乱れぬ規律で兵士たちは上官に敬礼する。

上官の言葉と共に周りの兵士が次々と去っていく。

「さて俺も行くとするかな……」

マサヨシは荷物をまとめ始めた。

その時だ。

「勇者様!」一人の兵士が駆け寄ってきた。

「おう!なんだい?」

「実は陛下より言伝を預かっているのです。帝都へ凱旋の際には必ずこの鎧を着用するようにとのことです!」

兵士は勇者に赤い色の美しい刺繍の入った煌びやかな鎧を差し出した。「おお!こりゃすげぇ!!」

マサヨシは興奮し、鎧を着た。そしてそのまま部屋を出て行った。

「これより帝都へ帰還する!」隊長が号令をかけ兵士たちが歩き出した。勇者は先頭に立ち威風堂々と歩いていた。

「見ろよ!あの立派な鎧だ!!カッコイイ!!」

「流石勇者さまだなぁ……」

「見ろ!あの鎧!カッコいい!」

「あの人強いんだよな?なら魔王倒せるんじゃないか?」

兵士達は勇者を見て盛り上がっていた。そんな中一人の兵士が消えた事を誰も気が付かなかった。

《こちらの任務は成功した》手短かに無線機に告げたエルフの兵士…

《了解、至急現地から離脱せよ》無線機からの指示に従い森の中へ消えていった。

 


時は戻り、エルフの森の外れにある洞窟の中……

「よし、これで全員揃ったな……」

エルフ達が全員集まったことを確認したジャンヌは言った。

「なあジャンヌこれから何が始まるんだ?」

ジャンヌの友人であるマリファナ好きのドワーフスコットが尋ねた。

「ふふん!聞いて驚け!今から私達による勇者暗殺計画を始める!」

『おおおお!!』

エルフ達は歓声を上げた。

「それで?どうやって殺す?」

「まずは狙撃の準備だ。」

「狙撃?狙撃ってあの遠くの的を狙うやつか!」「そうだ!このライフルを使う!」

ジャンヌは巨大なライフルを取り出した。

全長780mm重量14.5kg、12.7mm弾を使用する対物ライフル"バレットM82A1"。

「これを私が使う!」ジャンヌはライフルを構えた。エルフ達は呆れた。

「お前が撃つのかよ!?︎」

「当たり前じゃないか!私の銃の腕を知らないのか?」

「知ってるけどよぉ……本当に大丈夫なのか?」

ジャンヌは自信満々に答えた。

「大丈夫大丈夫!任せてくれ」

(全く……本当にコイツ……)

こうして暗殺計画はスタートしたのであった……。

 


一方その頃、マサヨシ一行は馬車に乗り込んでいた。

「いよいよ凱旋だな!」

「それでは出発します」御者が言い馬を走らせた。勇者一行を乗せた馬車は帝都へと向かっていった……。

 


「良いか?まず帝都から1200m離れたこの山の中腹に狙撃班が待機する。」

ジャンヌが地図で示す。

「勇者が凱旋し門を150mほど通過したタイミングで狙撃する」

帝都の見取り図にポイントを書き込む

「スコットさんは凱旋門近くで勇者が来たら無線機で合図してくれ、赤い鎧を着ているから目立つはずだ、狙撃したらすぐに逃走しろ。」

「分かった」ドワーフは答える。

「では、作戦決行だ!」

 

 

 

「勇者様!そろそろ到着ですよ!」

「分かった!」

マサヨシは外に出て伸びをした。

「やっと着いたぜ〜!帝都まで長かったような……短かかったような……」

マサヨシは感慨深そうに呟いた。

 

 

 

「皆のもの!準備を始めろ!!」ジャンヌが指示を出した。

「「「はっ!!」」」

エルフ達は一斉に散った。

ドワーフのスコットは凱旋門の方を眺めていた。すると無線が入った。

《こちら狙撃班、配置に付いた》耳に装着したイヤホンから声が届く。異世界から召喚された道具に舌を巻く。

スコットは気を引き締めて返答する。

《こちら凱旋門、勇者はまだだ》

《了解、このまま待機する》

(さーて、勇者サマにはご退場願うとするかね)ジャンヌはニヤリと笑みを浮かべた。

 


「勇者様!もうすぐ帝都です!」

「おう!楽しみだなぁ!」

勇者マサヨシは浮かれていた。勇者らしく凱旋用の豪華なチャリオットに乗るからだ。

チャリオットを引く軍馬も屈強な体躯で見るからに勇者らしいサラブレットだ。

軍馬に引かれたチャリオットに乗り民衆に手を振り声援に答える。

凱旋門をくぐり少し進んだところで突如勇者の胴体が真っ二つに爆ぜた。

胴体と下半身が爆ぜ、二つに分かれた胴体が民衆の目の前で地面に放り出された。

辺りは静まり返っていた…「え……?」

誰かが漏らしたその言葉を皮切りに悲鳴が上がった。

「きゃあああ!!」

「ゆ、勇者さまあ!!?」

「何が起こったんだ!?︎」

マサヨシの上半身が地面に叩きつけられ血溜まりを作る。マサヨシの下半身が崩れ落ち地面に投げ出され血溜まりを広げる。

「勇者様が……死んだ……?」

「嘘だろおい!!何があったんだよ!」

「勇者が死んだぞおおお!!」

「そんなあぁぁ!!」

「どうしてぇぇぇ!!」

「嫌あぁぁぁ!!」

混乱する民衆の中一人の男が叫んだ。『神の裁きだ!』

『そうだ!勇者は裁きを受けたのだ!』『神の怒りに触れたのだ!!』

『やはり勇者召喚は間違いだったのだ!!』

『勇者は呼び出してはいけない存在なのだ!!』

『勇者は召喚してはならなかった!!』

異世界からの勇者召喚は禁忌だったのだ!!』

次第にそれは伝播していき民衆は口々に叫び始めた。

[召喚を行った皇帝が悪い]

[勇者召喚は悪魔の禁術だった]

[禁術を使い神の怒りに触れた皇帝は退位せよ]

 


たった一言逃げる前にスコットが流布した『神の怒りだ!』から随分と尾ヒレが付き帝国は大混乱だった。

ジャンヌ達の勇者暗殺作戦は成功した。「よし!計画通り!あと逃げるだけだ!」

ジャンヌはマイクを手に取り言った。

《勇者暗殺成功!繰り返す!勇者暗殺に成功!》 エルフ達は歓喜の声を上げた。

「やったぜ!」

「俺達の勝利だ!」

「これでエルフの森は安泰だ!」

《エルフの森へ帰還する!》 《了解!》 ジャンヌ達はエルフの森へ帰還した。

エルフの森へ帰ってきたジャンヌ達はエルフ達に英雄として迎えられた。

「ジャンヌ!よくやってくれた!」

「ありがとうジャンヌ!」

「お前のお陰でヤクが今まで通り売れる!」「ジャンヌ!これからも頼むよ」

「任せてくれ!薬物はエルフの宝だからな!私達が守ってみせる!」

ジャンヌは胸を張って答えた。エルフ達はジャンヌを讃えながら酒を酌み交わしていた。

その様子をジャンヌの友人であるマリファナ好きのドワーフスコットは遠くから見ていた。

(アイツ……ついにやり遂げたな……)

スコットはタバコを混ぜたマリファナジョイントを吸い込み暗殺の成功を噛み締めた。

 

 

 

一方帝都ではマサヨシの葬儀が行われた。

葬儀には各国から多くの貴族が参列した。

「勇者マサヨシ殿……貴殿の勇気ある行動に敬意を表す」「勇者マサヨシ殿、貴方の魂は永遠に不滅であります」

などと勇者の死を悼む言葉を並べたが、内心では"ハズレ勇者が死んでせいせいした"と誰もが思っていた。

「陛下、お悔やみ申し上げます」

「う、うむ」

「勇者マサヨシは素晴らしい人物でした」

「そ、そうか」

「はい!彼の死を無駄にしないためにも我々は一致団結し魔王に対抗すべきです!」

「そ、そうじゃな……」

この男の名前はヨシュア・エレオノラ・フォン・ハーフェン。この国の宰相を務める人物である。

この男は事あるごとに自分の都合の良いように国を動かそうと画策する典型的な小物であった。そもそも魔王など今は居なかった。それは周知の事実だった。

そして宰相の独断政治とエルフ製のドラッグの蔓延、勇者の謎の死により帝国の秩序は徐々に崩壊を始めた。

 

 

 

ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅ……」

ジャンヌは自室にて愛用のボングでマリファナを一服していた。

ジャンヌは勇者の暗殺に成功した後、村長から勇者殺害の成功報酬金貨1000枚を貰いウハウハだった。毎日のマリファナのブランドもワンランク上の高級品種に変わったが、やる仕事は以前と同じなので生活そのものは余り変わらなかった。

 


コンッ! 扉をノックされた。

「入れ!」

ガチャリ 村長がいた。

「どうした?何かあったのか?」

「実は先日勇者様を殺った後、証拠隠滅のために帝都一帯を爆破したのだが、結構な数貴族が死んだぞ!!!」

村長は嬉しそうに語る。「なるほど、そりゃあ良かったじゃないか!」

「うむ!これで更にヤクを売れる様になる!大儲けだ!!」

「そ、そうなのか?」

「ああ、勇者が死んだ理由だって『神の怒りに触れた』と大騒ぎだ。自暴自棄になった奴らがヤクに群がってる。」

村はドラッグ特需の好景気に沸いていた。「しかし、勇者の死因は銃だ。怪しまれるんじゃないか?」

「大丈夫だ。勇者の死体はもう無い。それに勇者は神の怒りで死んだ。誰も疑わないさ。」

「そういうもんかね?」

「ああ。薬だが大幅に値段を上げる。」「分かった。」

「それからもう一つ頼みがある。」

「なんだ?」

「最近エルフの森への襲撃が頻繁に起こっているらしい。」

ジャンヌは察した。きっと異世界からの物資召喚が急務なのだろう。エルフは頻繁に異世界からあらゆる物資を召喚し調達していた。

武器弾薬は勿論、暗殺に使用した対物ライフルやロケットランチャーや無線機、果てはマリファナ喫煙用のライターに至るまで何でもかんでも召喚するのだ。無尽蔵とも言えるエルフの魔力の成せる技である。ジャンヌは思った。

(勇者の次は襲撃か)

ジャンヌは心が躍った。久々に愛用のカラシニコフを撃ちまくりたかった。

 


その後、数日間に渡りエルフ達は異世界から山のように大量の武器弾薬を召喚し調達した。

AK47・HK416・M16A1・89式小銃などなど強力な軍用アサルトライフルからブローニングM2重機関銃までも山のように積まれた。

地雷も数万発ある。地雷原を作る為だ。

RPG-7ロケットランチャーも忘れていない。手榴弾も山の様に積まれている。

これなら人間共がどれだけ攻めて来ても皆殺しに出来る。ジャンヌは確信した。

 


ジャンヌ達エルフは森で優雅な生活を送ってた。暇があればマリファナを吸い、里のエルフ達と人間狩りも楽しむ。まさにエルフの森は天国のような場所になっていた。

ジャンヌはエルフの森での生活は気に入っていた、最近はエルフ達の栽培しているマリファナのグレードが上がっていた。

異世界の品種改良されたマリファナの種を狙い召喚していたからだ。エルフ達はマリファナを栽培するとそれを乾燥させて、そのまま吸ったり、バターに溶かし込んだりした。

マリファナは一度加熱することで成分が変化し、主成分のTHCAが脱炭酸されTHCになり精神作用を引き起こすことから、エルフ達は嗜好品としてマリファナ食品を作り楽しんでいた。ジャンヌの趣味もマリファナを溶かしたバターから作る焼き菓子だ。このお菓子はエルフの間で手軽に摂取でき効果も強く長く効くととても流行っていた。

(今日も平和だ)

ジャンヌは自室でくつろいでいた。コンッ!とまた扉が叩かれた。

「どうぞ!」

ガチャリ 村長が来た。

「どうした?何かあったのか?」

「実は昨晩、帝国が崩壊した!!」村長は嬉しそうに語る。

「なるほど、そりゃあ良かったじゃないか!」

「うむ!これで更にヤクを売れる様になるぞ!!」「そ、そうなのか?」

「ああ、勇者が死んだ理由だって『神の怒りに触れた』と大騒ぎだ。自暴自棄になった奴らがヤクに群がってる。」

村では勇者の死よりも薬物の高騰で皆喜びの声を上げていた。

 


ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅ……」

ジャンヌは自室にてボングでマリファナを一服していた。

ジャンヌはエルフの森での暮らしは好きだ、人間を狩るのも楽しい。攻めて来た帝国兵に自慢のカラシニコフを撃ちまくるのも大好きだ。

ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅーーーー……」マリファナの濃い煙を吐き出す。

甘くフルーティー…喉越しも爽やか…ハイも強い…良いネタだ。

里で作ったマリファナとは思えないグレードだ。それどころかドワーフ族の高級マリファナより良い超ハイグレードだ。異世界でも最新の改良品種マリファナなだけある。

少し前に異世界大麻種子銀行の存在を書物で知り精密召喚で種子を召喚して栽培に成功したのだ。

嫌いだった帝国も崩壊した。アホ勇者も死んだ。

自慢のカラシニコフも好きなだけぶっ放した。

大好きなマリファナもエルフの森で栽培出来るようになった。

帝国の崩壊と勇者の死亡で自暴自棄の人間共がヤクを求め村の景気は最高に良かった。

 


リリアンヌが焼いた大麻クッキーを頬張る…甘くて美味しい。

ボングにマリファナを詰め火をつける…

ボコボコボコボコボコ……

「ふーっ…」煙を吐き出す。またハイが深くなる。

 


「ああ、今日も平和だ…」

 


エルフの森は今日も明日も明後日もラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森3!

ここは剣と魔法のファンタジー世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


「なんだと!?私らのシャブが売れねえだと!?」

エルフの集落に甲高い怒号が鳴り響く。この集落の長である彼女は自室に引きこもり覚醒剤をを打ってから叫び声を上げた。

そんな彼女が激怒している原因は目の前にいる客人にあった。汚い格好をした怪しい人物。ようはヤク中の売人だ。

「えぇ……残念ながら薬は売れませんね。そもそも貴方達が売っているモノって本当に合法ですか?」

「うるせぇ!!非合法に決まってんだろ!?シャブだぞ!?合法な訳あるか!!」

そう言って長は【ビタミンC】とラベルが貼られた遮光瓶を取り出す。中には袋に小分けされた白い粉が出てくる。これが俗に言う覚醒剤である。正確にはメタンフェタミンと呼ばれる物質だ。

「これ違法ですよね?なんでこんな物作っちゃったんです??」男は呆れた様子でため息をつく。

「あぁん!?テメェ舐めてんじゃねぇぞ!ブッ殺すぞ!」ただでさえ沸点の低い村長は数分前にポンプでシャブを注射したばかりだった。脳内ではドーパミンが暴走しており怒りが収まらなかった。

「いい加減にしてくださいよ……」男は村長の怒りを無視して話を続ける。

「非合法な物は駄目です。私の所には沢山の顧客がいるんですよ。彼らに迷惑をかけないでもらえますかね?」彼は合法ドラッグ屋だった。

よく勘違いされているが薬物全てが非合法な訳では無いし、合法だからと安全な訳でも、危険な訳でもない。ようは違法か合法かは単純に法律で区別されているだけで[タダの薬物]だ。

「ふざけやがって……もういい分かったわクソ野郎!!!テメェ!ぶっ殺してやる!!」

村長に限らずエルフは合法ドラッグ脱法ドラッグが嫌いだった。

全ての薬物に貴賎なんて無いと考えているからだ。エルフ達は快楽主義者でありドラッグを愛していた。それを法のよく分からない線引きで、合法か非合法か決められる事に納得がいかなかった。

合法でも危ないドラッグより、非合法でも安全なドラッグをキメた方が幸せだし健康的だ。エルフ族はそんな理由から合法薬物だけ仕入れる『合法ドラッグ屋』は嫌いだった。

特に村長は合法ドラッグ屋を蛇蝎の如く嫌っていた。

そんな村長の前でこの男は堂々と開き直るのだ。ただでさえキレ易い彼女の堪忍袋は木っ端微塵に爆散した。

「おっとっと……。暴力反対ですよ。まぁ私は優しいんで見逃しますがね、うちの店のお客様には貴族様も多く……」

男は喋っている途中に頭部が弾け飛んだ。

村長の愛用のスミス&ウェッソン44マグナムで弾いた結果だ。キレやすい村長は常に44マグナムホローポイント弾を装填しているのだ。弾頭は意図的に鉛を剥き出しにしてあり撃たれたら体内で鉛が弾け飛び木端微塵になる。村長はソレを見ると怒りがスーッと収まり途端に上機嫌になるのだ。

「すまんなぁ〜?私らヤク中エルフ共が悪いんだよぉ〜」

他の村人に戯けて見せる村長。他のエルフもゲラゲラ笑っていた。

「コイツは山に捨てとけ。良い肥料になる」村長は死体の処理を村人に任せシャブのパケ作りを始める。今日はこの後に大事な仕事があった。

「おいリリィー!居るんだろ?」

村長の声に反応して奥の部屋から一人の美少女が現れた。この集落で指折りの美少女リリアンヌ・ルフェーブルだ。

「何でしょうか?お婆さま」彼女は先程まで寝ていたが祖母に起こされ不機嫌そうだ。

「リリィー……リリアンヌ……私はまだババアじゃない。まだ700代だ」

「あら失礼しました」リリアンヌはクスりと笑う。その笑顔を見て村長は満足げだ。

「それでですね……どうしたのですか?」

「いやなに……実は今度結婚する事になったんだ」

「えぇ!?本当ですか!?」

「あぁ……相手は隣村の奴だ。アイツは昔から気の合う男だったんだ。私にゾッコンなんだ」

「それは良かったです!」本当に嬉しそうな顔をしていた。

「そこでだリリアンヌ……結婚式のスピーチを頼めないだろうか?」

「えぇ!?私がですか!?無理ですよぅ……」

「頼むよ。今まで育ててくれた恩もあるだろ?」

「うーん……分かりました。引き受けましょう」「助かるぜ!じゃあお前は新婦の席に座ってくれ」

こうしてエルフの集落では一つの大きな行事が始まろうとしていた。

_____

「と言うわけで皆さんこんにちは。司会進行を務めさせていただきますリリアンヌです。よろしくお願いしますね」

「「ワァアー!!!!!」」

この日の為に作られたレイヴ会場の大型ステージでの上で彼女はマイクを持って立っていた。

エルフ達が見守るレイヴ会場で彼女はウェディングドレスを着ていた。純白の衣装に身を包み彼女は微笑んでいた。その姿は家に籠りシャブを打ち続けた生活で肌は透き通るほど白く、シャブで飯が喉を通らない体は細くスラリとしてまるで天使のように美しかった。

「それでは主役の登場です。ロバートさん入場して下さい!」「はい!」隣村のロバートがステージ袖から出て来る。彼はタキシード姿だが頭にはハットを被っていない。代わりに彼の頭には真っ赤な芥子の花輪が被せられていた。

「村長ジュリエット貴女は新郎のロバートを生涯愛すると誓いますか?」

「あぁ!誓うよ!」「ロバート貴方は新婦のジュリエットを一生愛すると誓いますか?」

「あぁ!勿論だよ!」

「はい!ありがとうございます。では指輪の交換をしてください。まずは村長ジュリエットから」

ジュリエットが向かいロバート左手の薬指に金のリングを嵌める。次にロバートが銀のリングをジュリエットの左の薬指に填めた。

「続いて新婦のジュリエットから、どうぞ!」

ジュリエットが向かい合い、ロバートが彼女のヴェールを持ち上げる。そして、お互いに愛おしそうに見つめ合った。

「病める時も健やかなるときも、死が二人を分かつとも、汝、ロバートを愛する事をここに誓いますか?」

「はい。誓います」

「よし。次はキスだ」二人はゆっくりと唇を重ねた。

「「「キャー!!」」」

 


エルフ達は黄色い歓声を上げた。中には泣いている者も居た。エルフにとって結婚とは神聖な儀式なのだ。

「さて皆様!これからが本番です!!」

『待ってたぞーーーー!!』

『待ちくたびれたわ!!』

『早くしろー!!』

「えー!皆さまも我慢の限界だと思いますのでー!只今からエルフの里結婚式名物のーーーー!!サイケデリック・オールナイト・パーティーを行いたいと思います!お配りしたLSDマジックマッシュルーム!メスカリン!などなど!幻覚ドラッグセットをお楽しみください!!!」

 


 ワーーーー!!

 ウオーーーー!!

エルフ達のボルテージは最骨頂に達した。

会場には他にも覚醒剤マリファナ、コカインなどなどドラッグが一通り揃っていた。これらはエルフ族独特の引き出物だ。ドラッグをやるエルフは殆どがジャンキーなので自分の村で作った薬物を送り合ったりする。「おいお前らぁ〜!今日は楽しむぞぉ〜!」

村長の掛け声と共にエルフ達も叫び出した。

エルフの村は朝まで大騒ぎであった。

エルフの集落に結婚式を挙げてから一週間が経った。

 


ここは森の奥深くにある湖のほとり。

ジャンヌとリリィは仲良く水浴びをしていた。

「なぁ、ジャンヌ聞いてもいいか?」

「はい、なんでしょう?」

「最近、お婆さまの様子が変な気がするのだけど何か知らない?」

「えっ?村長はいつもあんな感じじゃないですか?お酒飲んで、ヤク打って、喧嘩して、ロバートおじさんと殴り合って、時々銃を乱射して 。」

「確かに……言われてみれば……でもなんか違うような……」

「はて?何が違うというのです?村長は村長ですよ」

「ううん……そうなんだけど……」

その時、遠くの方で爆音が聞こえてきた。

「ん?」

「なんだろ……あれは……あっ……また……」

「行ってみましょう」

リリィ慌てて服を着ると爆音の発生源に向かって走り出す。その後ろを慌てて追いかけるジャンヌ。しばらく走るとそこには……

「テメェーら!また来やがったのか!!」

「「「「「「「ヒィイイーーーー!!!」」」」」」」

数人のエルフと村長が人間の男達をボコボコにしていた。

異世界の手榴弾でも使ったのだろう。壊れた馬車とミンチになった身なりの良い人間だった部品が散乱していた。「オラァア!」

「ぐふぅう!?」

村長が倒れた男の一人に馬乗りになって何度も顔面を殴っていた。

「ひぃいい!?」

「逃げるな!!」

殴られている男は逃げようとしたが、村長は銃口を突き付け躊躇なく引き金を引いた。「ぎゃああ!?」

銃弾は男の貫き、地面に倒れ込む。

「ぎゃーーははははははははははははははははははははははははははははは!!」

村長は実に嬉しそうだ。「ははははははははは!!!」

笑いながら彼女は死体を蹴り続ける。

「うっひゃーーー!!あーーー!ははははははははははははははははははははははははははははははは!」

良かった、いつも通りの村長だ。リリアンヌは安堵した。

エルフ族の村長たる者、誰であれ舐めたら殺す。

大方コイツらは肥料になった合法ドラッグ屋の取り巻きだろう。

今さっき肥料になった身なりの良い男は貴族だろう。金蔓だった合法ドラッグ屋が消えて探しに来たのだろう。

村長や他のエルフ達も死体蹴りに飽きた様でジャンヌもパイプでマリファナを吸っている。掃除屋さんは肥料を回収しコカの木を植林する予定の山に持って行った。「はぁあ〜これすっごい良い…」ジャンヌが煙を吐き出しながら独り言を呟く。

村長はブツブツ言いながら、木箱に入った大量のシャブを取り出し、1袋づつ丁寧にチェックしている。売人が買いに来るのだろう。「あぁシャブが足りねぇな……」

「はぁあ?あれだけ作ったのに、まだ足りないんですか?」

「だってよぉ〜この前の奴らが大量に買って行ってな。在庫が切れそうだ」

エルフ族に限った事では無いが売人同士の約束は絶対だ。1g少なくても許されず、取引に1秒遅れても許されない。ルールを破ぶれば即射殺である。「はぁ……じゃあ私、工場へ行って来るよ」

「おう!頼んだ」

村長はリリアンヌを指差して言った。

「ついでにリリィも連れて行け」

「分かりました…ほら行くぞ!リリィ!」

「行ってくるね!お婆さま!」

ジャンヌは楽しそうに森の中を走り抜ける。エルフの薬物製造工場ではシャブ以外にも色々なヤクを製造していた。

そういえばこの間マリファナの収穫祭があった。お目当ては大麻樹脂だろう。喫煙に適さない部位でも樹脂がたっぷりと付いている、工場では端材を篩にかけて樹脂を集めるのだ。集まった樹脂はプレスで硬め黒茶色の美しいハシシの完成だ。ジャンヌとリリアンヌは工場のドアを開ける。

中ではエルフ達が様々な作業をしていた。

「皆さんこんにちわ〜」

エルフ達は手を振ってくれた。「おおジャンヌか」「リリィちゃん今日も可愛いわ」エルフ達の挨拶に応えつつ、ジャンヌは工場へ来た目的を思い出した。

「村長の頼まれてシャブを取りに来たの」ジャンヌは山積みになっているシャブの袋を漁り始めた。

「あった!これが欲しいの!」

「あいよ!」

壮年のエルフはシャブの袋を手際よく渡す。

「ありがと!」

ジャンヌは笑顔で言う。

「どういたしまして、また来てくれよ!あ、そうだジャンヌ。これはお土産だ。」

そう言って黒くて艶のある黒いボールをジャンヌに手渡す。

出来立てのシザーハシシだ……!

マリファナは葉っぱを吸う訳ではない。受粉させずに開花させた雌株の花弁を吸うのだ。邪魔な葉っぱを丁寧にハサミで切り取り整形し乾燥させる。その作業で大麻の樹脂が手やハサミに付きベタベタになる。ハサミにこびり付いた樹脂を集めた物がシザーハシシ…

とても純度が高くキマりも重い、辛いトリミング作業のご褒美で各自自分が集めたシザーハシシは持ち帰る事が許可されていた。

なかなか出回らない高級ハシシ…しかも新鮮で鮮度抜群とくれば……『ゴクリッ』アル中の私でも思わず唾液が口から滲み出る。

「ありがとう!大切に吸う!!また取りに来るから!!」

ジャンヌは満面の笑みを浮かべる。

「ああ!待ってるぜ!気をつけて帰れよ」

ジャンヌとリリィは工場を出て森を駆ける。

「やった!やった!!ついに手に入れた!!」ジャンヌのテンションが上がりっぱなしだ。

「まさか本当に貰えるとは…」

「え?なんの話?」

「いえ、なんでもないぞ!」

「ふーん」

そんな会話をしながら二人は村に戻った。

「ただいま!」

「おかえりなさい!」

ジャンヌが村長の家に戻ると早速シャブの袋を渡す。「はい!コレ!」

「おう、サンキュー」

 


袋を受け取ると村長は中身を確認し始める。

「おぉ!こんなに沢山あるのか!!」

「うん、いっぱい作ってたみたい!」

「そいつはラッキーだな。これだけあれば大丈夫だ!」

ジャンヌはソワソワしている。早く家に帰りたいのだろうな。

「ありがとうな!これはお駄賃だ」村長は私たちに小包みを1袋づつ渡して来た。中身はどうせシャブだろう…..

「ありがとう!お婆ちゃん!」「ありがとうございます」

 


私たちは村長宅を後にした。

 


「早く!早く家に帰ろう!!」ジャンヌは目を輝かせて急かす。

早く吸いたいのだろう…まぁ私も吸いたいのだが…

ジャンヌはリリアンヌの手を引いて急いで自宅に向かった。

「たーだいまーー!!」ジャンヌは誰も無い自宅の扉を元気良く開けると、部屋に飛び込みガサゴソと何かを探している。十中八九パイプだろう。

「ちょっとリリィ手伝ってーーーー!!!」

「はいはい」

私は彼女の探し物を手伝う。

「あった!これこれ!!パイプ!!」

そう言うと彼女はガラスパイプを取り出した。「あれ?これって……」

「あぁ、前に買った奴だよ」以前パイプを買った時に一緒に買ったやつか…

「あれ?ライターどこいったっけ?」

「確か……前使って…テーブルに置いといて……そのままだったような……」

「あぁ〜!またライターが消えた!!」

マリファナがキマると食べ物や音楽に夢中になり疲れて寝てしまう。勿論使ったライターをどこに置いたかなんて思えていないのだ。マリファナ愛煙家はライターを最低でも1ダース単位で召喚する。ジャンヌに至っては5〜10ダースも召喚している。

ジャンヌは立ち上がり、部屋をウロチョロし始めた。

「ねぇ!私のライター知らない!?」

「知りません」

「うぅ……どこにも見当たらないよぉ」

ジャンヌの目は涙ぐみ顔色がどんどん悪くなっていく。

まずいな……この状態でマリファナをキメたらバットトリップするかもしれない。

「私のライターあげるから…」「うぇ〜」泣きながら抱きついてくる……

「仕方ない」

リリアンヌはポケットに入れていたライターを取り出す。

「わーい」

ジャンヌは貰ったハシシをライターで少し炙り柔らかくする。

フルーティーさと香木が混ざった様な良い香りが漂う。

炙ったハシシを指先で千切りパイプに詰めて行く。「じゃ!火をつけるね!」

ジャンヌはハシシを詰めたパイプを口元まで運び、ライターで火を付け吸い込む。「あ!美味しい!!」

ジャンヌは幸せそうな表情をしている。

「良かったな」

「うん!新鮮だからかな?凄く良い!」

ジャンヌがパイプを渡して来る。

パイプを受け取りライターで火を付けながら吸い込む…これは美味い。とてもジューシーな煙だ。重く強烈なボディハイ…久々のストーンだ…

カウチロックしそうな体を動かしパイプをジャンヌに渡す。

「んー!おかわり!」

 


ジャンヌはハシシを更にパイプに詰め火を付け、煙をモクモクと吐き出す…

二人でハシシを吸う。

「はぁ……久しぶりのハシシ……最高!!」

「そうですね」

「はぁ……ボーッとする……お腹も減って来た……」

私も腹が減って仕方がなかった。マリファナを吸うとどうしてもマンチーは起こる。ついでに喉も乾く。

甘いものが食べたくて仕方がなくなる。ジャンヌを引き留めて村の店で食べ物を買っておくべきだった…。酒の摘みでも食うか?酢漬けイカくらいしか無いが…はやり甘いものが食べたい。

「ジャンヌ、何か食べ物は無いのか?」「うーん……パンケーキならあるけど食べる?」

「頂きます」

ジャンヌは台所に行き冷蔵庫からパンケーキを取り出した。

「はい!どうぞ」

「いただきます!!」

バターと蜂蜜をたっぷりかけたパンケーキを頬張る。

「あまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

何だコレは?甘くて重い!だがそれがいい!!!!

マリファナの効果味覚が敏感になっており甘味が何倍にも感じられる。なんて美味さだ!!体に甘みが染み渡る!私は一心不乱にモリモリと貪る。

「そんなに慌てて……そんなにマンチだったの?」

「ああ!コレは病みつきになるな!」

ジャンヌは嬉しそうに微笑む。

「そう言って貰えると嬉しい…」「コレの作り方は教えてくれないか?」

「ううん。これは秘密……」

「そうか……」

私はもう一枚手に取り齧り付く。

「ふふふ……まだ沢山あるの!」ジャンヌは今度はブラウニーを取り出す。「それは?」

「私が作ったお菓子だよ。これも食べて欲しいの」

「ほう……ではご相伴に預かろう」

リリアンヌはブラウニーを口に運ぶ。

噛んだ瞬間、チョコレートの芳ばしさと共にナッツ類特有の香ばしさが広がる。濃厚なのに後味スッキリ、まるで舌ごと溶けてしまいそうだ!!

「これは……!旨いな!!」「本当!?良かった!!」

私は夢中で喰らいつく。

「あぁ……本当に美味い。こんな美味いものは初めてだ」

「そう?喜んでくれてうれしい……」

ジャンヌは照れくさそうに笑う。

「あぁ……素晴らしい……!ありがとうジャンヌ!!」

「えへへ……そう?そう?もっと褒めても良いんだよ?」

ジャンヌは満更でもない様子だ。「あぁ、お前を嫁に欲しい」

「え!?」「冗談です」

ジャンヌは膨れる。可愛らしい。「まったく……」

「ははは……ジャンヌは可愛いな。思わず口に出てしまったよ……」

「そ、それって……プロポーズ?」

「まさか」

ジャンヌは残念そうな顔をする。

そんなくだらないお喋りをしながら『ジャンヌ特製』のお菓子を食べていく。バターたっぷりのパンケーキに、バターたっぷりのブラウニー、バターをふんだんに使った美味しいクッキー。

夢中で食べ続ける…不思議な事にどんどんハイが増している気がする…

夢中で食べ続ける。バターたっぷりの焼き菓子を…

 


まて?バターばっかりじゃないか!まさか!!

「なあ?ジャンヌ…なんで出てくるお菓子がバターたっぷりの焼き菓子ばかりなんだい??」

聞いた途端ジャンヌは腹を抱えて笑い出した。「アハ!気がついた?」

「やはり……はぁ……」

「あはは!バレちゃった?」

「あぁ……ひどいヤツめ……」

ジャンヌはニコニコしながら話し続ける。

「だって、甘いものが食べたいって言うから、甘いものを出しただけじゃない」

「ジャンヌ……君は大麻バターで作った焼き菓子ばかり持って来たな!?」

「あはは!ばれたか!」

「全く、最初からこれが狙いで、買い物もせずに家に戻ったんな?」

「うん!」ジャンヌは悪びれも無く答える。

 


「はぁ……ジャンヌ……君と言うやつは……」

「ねえ?リリィは私のこと嫌いになった?」

「いや、別に……ただ呆れてるだけだ」

「じゃあいいでしょ!」

「はぁ……いい加減にしろ……」

ジャンヌの頭を優しく撫でた。

 


食品に加工した大麻が本格的に効き始めるまで1時間…効果が切れるまで12時間……既に少しハイが増している。これから襲って来るであろう強烈なハイを少し期待しているリリアンヌだった。

 


エルフの森は今日も明日もラヴ&ピース

おいでよ!エルフの森 2!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


「それにしても……」

森を進むこと数時間。私ははずっと気になっていたことを尋ねることにした。

「なんで私がお前の散歩に付き合わなきゃいけないんだ?」

『お腹減ったから』

そう言って歩くエルフの美少女ジャンヌ。重度のマリファナ中毒だ。

歩きながら手に持つ火の付いたジョイントを吸いながら答えるジャンヌ。

マリファナを吸うと味覚が敏感になり強い空腹感を感じる。この状態はマンチーと呼ばれマリファナ愛好家は空腹感を満たす為喫煙前に甘い物やジャンクフードなどを購入しておくものだ。

だが、先ほど無理矢理散歩に誘われたことを考えると食べ物を買い忘れたのだろう。

自分もおつまみが尽きていたしちょうど良かった。そんなことを考えているうちにジャンヌが立ち止まった。どうしたのかと思いつつも黙って後ろについていく私。

しばらくすると少し開けた場所に出た。

そこには地面に掘られた穴があり中からは煙が出ており、周囲には乾燥した葉っぱのようなものが大量に散らばっていた。

恐らく大麻だろう。

これはホットボックスだ。マリファナを密閉した空間で焚き煙を充満させる遊びだ。もちろん全員がキマる。ジャンヌはその中心に立つとこちらを見て言った。

『ねえ、あなたもこれやってよ』………………

『いやぁ楽しかった!やっぱりこれ楽しいね!』

「ああ……そうだな」

結局あの後ノリで一緒にやり始めてしまった。最初は嫌々だったが魅惑的なマリファナの煙には敵わなかった。

それにお土産に沢山のマリファナを貰ってしまった。これだけあれば当分困ることは無いだろう。

「それで?次はどこに行くんだ?」

そろそろ日が落ちてきた。今日中に街へ到着する予定だったのだが予定が遅れてしまうかもしれない。

『んー……じゃあこのまま歩いていこうか?』

「分かった」……ジャンヌのヤツ。キマりすぎだ。時間の間隔がマヒしてやがる。まあいいか……。

------

それからさらに3時間程歩いた頃だろうか。辺りは完全に暗くなり完全に夜になってしまった。しかし一向に街道に出る気配が無い。一体どこまで行くつもりなのかと思っていると突然目の前に大きな洋館が現れた。……なるほど、最初からここへ来るつもりだったのか。

ジャンヌの秘密の隠れ家か。確かに人里離れた森の中だし誰も知らないだろう。ジャンヌは慣れた様子で洋館の扉を開ける。

中に入ると広い部屋に所狭しと喫煙器具が並べられている。

あれ知ってるぞ!?ドワーフ名工が作ったロケットボング!!金貨10枚するやつだろ!?本物か本物だろうな…ジャンヌがマリファナ関連で妥協する事はない。絶対に本物に決まってる。

部屋の奥へ進むと大きな暖炉があった。薪の代わりに大量の乾燥草が置かれている。やはりこれも大麻かな?

そして部屋の中心に置かれたソファーの上に巨大な茶色の塊がある…

これは大麻樹脂か!?10キロはあるぞ!!!……………… そういえば聞いたことがある。エルフの森では昔からマリファナを使った儀式が行われていたらしい。

1キロの大麻樹脂を作るのには100キロの乾燥大麻が必要なはずだ。

10キロ近いなら1トン近い乾燥大麻が必要だが…… 普通に吸えば何ん年持つだろう?

私は酒が多いがマリファナも吸う。1日2-3gくらいか…?それだと50年以上は余裕でもつかな。

そんなことを考えていると奥の部屋からジャンヌが出てきた。

彼女は洋館に着いてから直ぐに風呂に入っていたようで上半身裸のままタオルを肩にかけて出てきた。彼女の肌は雪のように白く透き通っている。胸は大きくはないが形が良い。そしてまるで丸太の様な特大ボングで風呂上がりの一発目を吸い込み始めた。

ボコボコボコボコ……

すごい肺活量だ。

ボコボコボコ………ぶっはぁ〜……

美少女が裸で鼻と口からモクモクと煙を吐き出すシーンは実にシュールな光景だ。アホなのかコイツは?だが、そんな彼女に見惚れていた私の意識はすぐに現実に引き戻された。ジャンヌは私を引っ張っり部屋の奥へ歩いて行った。そこは寝室だった。

部屋の中央にあるダブルベッドは天蓋付きの豪華なもので、そこに寝るように促される。

『さてと、それじゃあ準備を始めようか』…… え?

 


……ジャンヌは黙々とマリファナパーティーの準備を始めた。まずはジョイントを何本も何本も巻き始める、マリファナのラベルが張ってあるガラス瓶を戸棚から数種類取り出しそれをジャンヌ自慢のドワーフ製の高級グラインダーで挽き始める。マリファナを砕き巻き紙の上に載せくるくると器用に巻き端の糊をペロリと舐め貼り付けジョイントが完成する。何本も何本も巻く。これで10本目か?

「おい、ジャンヌ……まさかとは思うが……」『うん、そのまさかさ!これから一緒にキメちゃおっか!!』

ジャンヌが満面の笑みを浮かべ言う。

いやいやいやいや、冗談じゃない!!! そんな事したら死ぬだろ! いや、マリファナで死ねるわけない!マリファナの致死量は推定700キロだ。死なないが死なないが… !

「あ、そうだ。忘れてた」

そう言ってタンスからナニカ取り出す。壺に大きな火皿があり長い長いホースが付いている。

シーシャだな。砂漠の国で使われてる水タバコを吸うやつだ。1時間くらい吸える大容量…

それでマリファナを吸うつもりか?「待ってくれ、それはちょっとキツイ」『大丈夫だって!気持ちいいよ!』

ジャンヌが笑顔で言う。いや、そういう問題じゃなくて。

『はい!どうぞ!』…… 無理矢理パイプを口にねじ込まれた。

『ほら吸って!』…… 言われる。

 


ボコボコボコ…ボコボコ………

 


むっはぁーーーーーっ!!たまらん!!!!!!

「んぐぅ……!!」

『どう?美味しい?』…… コクコクと無言で首を縦に振る……

『ふふん♪そうだろそうだろぉーーーーーーーーーーーー!?』

ジャンヌがドヤ顔で叫ぶ。

マリファナは最高だろ!!これだからやめられねぇんだよなぁーーー!!!』

ジャンヌが笑いながらマリファナをふかし続ける。

もうこうなったジャンヌを止める術は無い。

観念して一緒にキマることにした。

ああ……なんて甘美なんだ…… これは良いマリファナだ。

「上物じゃないか!こんな良いネタどうしたんだ?高かっただろう?」

またジャンヌが借金でもしたのでは無いかと心配になる。

この間王国にヘロインを一緒に密輸して借金を返済したばかりじゃないか…

「ふっふっふー♪良いネタでしょう?」

ジャンヌが自慢げに胸を張る。

「まあな……それでいくらで買ったんだ?金貨20枚位か?」不安だ…

「まさか?私が育てたのよ!」

なんだと!?こんなハイグレードなマリファナを!?

驚きつつもジャンヌがジョイントを回して来る。改めて一服パフする。美味い。フルーティーで味が濃い。でも喉越しも良い。ハイも良い。どっしり来るボディハイと強めのヘッドバズ。ここまで良いネタはなかなか無い。王都なら1グラム銀貨5枚、帝国なら小金貨1枚でも売れるだろう。

エルフの村ならそもそも出てこないだろう。みんなクソネタでも吸うし、いつも吸ってるせいでクソネタばかり出回る。

なるほど、これなら秘密の隠れ家が必要だ…… ジャンヌの作ったマリファナを一緒に吸引する…

これは……凄いな…… 身体がベッドに沈む…… そして…… 頭が真っ白になって行く…… 何も考えられなくなるヘッドハイ…… ジャンヌはニヤッと笑うとジョイントを回す速度を上げた。ジョイントを受け取り3パフしジャンヌに回す。ジャンヌは嬉々としてマリファナをふかしている。

「実はこの館で育ててるんだけど……」

なんだと!?ここで育ててるのか!?どうやって?

マリファナの栽培には日射量が多くなければ育ち難いはずだ。ドワーフ達は日射量の多い山を切り開いて育ててるのは有名だ。

この辺りは樹木が高く森の中でも特に日差しが届かず薄暗い地域だ。苔ぐらいしか育たない。ろくな植物も育たずエルフ達も近寄らない。

 


そんな場所でマリファナを育てているだと? どういうことだ?

「それじゃあ種明かしをしようか……」

ジャンヌはそう言うとジョイントをふかしながら廊下へ向かって歩いて行く。私もマリファナを吸いながらその後を追う。

ジャンヌは奥の部屋に入って行った。そこはキッチンだった。

キッチンの奥に進むと床に小さな入り口がある。

「食糧庫か」「そうよ」

昔書物で読んだことがある。冬が厳しい地域では地下室を作り、中に一冬分の食糧を保管するのだとか…それがこれか?

しかし余計わからん。マリファナの栽培の話と地下室の話が繋がらない。ジャンヌの頭が壊れたのか?元からか…ジャンヌが地下室へ降りて行く…私も後を追って階段を降りる。

明るい?地下室が明るい。

私は驚いた。地下室に降りると太陽の様に光を放つ板が天井から吊り下げられてる。そしてその光る板の下にズラリと並ぶマリファナの植木鉢。

「すごい……」思わず声が出た。

「ふふん?どう?びっくりした?地下でマリファナ栽培をしてるの。日光無くても植物って育つのよ?外の畑と比べて虫も付かないわ」

ジャンヌが得意気に言う。確かに、よく見るとどれも元気に育っている。

「植物の葉はね、太陽の光じゃ無くても育つの。勿論マリファナも」

この光は何だろうか?見たことが無い。「これは召喚魔法で異世界から召喚したの。太陽光と同じ力を持っていて、常に光を出す異世界のアイテムらしいの」

よくわからないけど…と少しだけ恥ずかしそう付け加える。

やはり異世界の道具だったか…異世界から召喚されるアイテム高性能な物ばかり。だが使い道も分からない謎な物も多い。

ジャンヌがこれだけ隠す理由も分かる。これはバレたらただでは済むまい。里のジャンキーが知ったら収穫したマリファナは一晩で煙にされるだろう。

手間暇かける理由もある。これ程のマリファナだ、もし買えば白金貨10枚か15枚か…?想像が付かない金額だ。

「ふっふっふ♪」そう言って嬉しそうに新しいジョイントに火を付ける。

「さぁ!続きをキメよう♪」ジャンヌは楽しそうだ。

「そうだな!キマろう!」『イェーイ!』

 


二人のパーティーはまだ始まったばかりだ……

 


エルフの森は今日も明日もラヴ&ピース

 


〜END〜