おいでよ!エルフの森3!
ここは剣と魔法のファンタジー世界にあるエルフの森。
その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。
「なんだと!?私らのシャブが売れねえだと!?」
エルフの集落に甲高い怒号が鳴り響く。この集落の長である彼女は自室に引きこもり覚醒剤をを打ってから叫び声を上げた。
そんな彼女が激怒している原因は目の前にいる客人にあった。汚い格好をした怪しい人物。ようはヤク中の売人だ。
「えぇ……残念ながら薬は売れませんね。そもそも貴方達が売っているモノって本当に合法ですか?」
「うるせぇ!!非合法に決まってんだろ!?シャブだぞ!?合法な訳あるか!!」
そう言って長は【ビタミンC】とラベルが貼られた遮光瓶を取り出す。中には袋に小分けされた白い粉が出てくる。これが俗に言う覚醒剤である。正確にはメタンフェタミンと呼ばれる物質だ。
「これ違法ですよね?なんでこんな物作っちゃったんです??」男は呆れた様子でため息をつく。
「あぁん!?テメェ舐めてんじゃねぇぞ!ブッ殺すぞ!」ただでさえ沸点の低い村長は数分前にポンプでシャブを注射したばかりだった。脳内ではドーパミンが暴走しており怒りが収まらなかった。
「いい加減にしてくださいよ……」男は村長の怒りを無視して話を続ける。
「非合法な物は駄目です。私の所には沢山の顧客がいるんですよ。彼らに迷惑をかけないでもらえますかね?」彼は合法ドラッグ屋だった。
よく勘違いされているが薬物全てが非合法な訳では無いし、合法だからと安全な訳でも、危険な訳でもない。ようは違法か合法かは単純に法律で区別されているだけで[タダの薬物]だ。
「ふざけやがって……もういい分かったわクソ野郎!!!テメェ!ぶっ殺してやる!!」
村長に限らずエルフは合法ドラッグや脱法ドラッグが嫌いだった。
全ての薬物に貴賎なんて無いと考えているからだ。エルフ達は快楽主義者でありドラッグを愛していた。それを法のよく分からない線引きで、合法か非合法か決められる事に納得がいかなかった。
合法でも危ないドラッグより、非合法でも安全なドラッグをキメた方が幸せだし健康的だ。エルフ族はそんな理由から合法薬物だけ仕入れる『合法ドラッグ屋』は嫌いだった。
特に村長は合法ドラッグ屋を蛇蝎の如く嫌っていた。
そんな村長の前でこの男は堂々と開き直るのだ。ただでさえキレ易い彼女の堪忍袋は木っ端微塵に爆散した。
「おっとっと……。暴力反対ですよ。まぁ私は優しいんで見逃しますがね、うちの店のお客様には貴族様も多く……」
男は喋っている途中に頭部が弾け飛んだ。
村長の愛用のスミス&ウェッソン44マグナムで弾いた結果だ。キレやすい村長は常に44マグナムホローポイント弾を装填しているのだ。弾頭は意図的に鉛を剥き出しにしてあり撃たれたら体内で鉛が弾け飛び木端微塵になる。村長はソレを見ると怒りがスーッと収まり途端に上機嫌になるのだ。
「すまんなぁ〜?私らヤク中エルフ共が悪いんだよぉ〜」
他の村人に戯けて見せる村長。他のエルフもゲラゲラ笑っていた。
「コイツは山に捨てとけ。良い肥料になる」村長は死体の処理を村人に任せシャブのパケ作りを始める。今日はこの後に大事な仕事があった。
「おいリリィー!居るんだろ?」
村長の声に反応して奥の部屋から一人の美少女が現れた。この集落で指折りの美少女リリアンヌ・ルフェーブルだ。
「何でしょうか?お婆さま」彼女は先程まで寝ていたが祖母に起こされ不機嫌そうだ。
「リリィー……リリアンヌ……私はまだババアじゃない。まだ700代だ」
「あら失礼しました」リリアンヌはクスりと笑う。その笑顔を見て村長は満足げだ。
「それでですね……どうしたのですか?」
「いやなに……実は今度結婚する事になったんだ」
「えぇ!?本当ですか!?」
「あぁ……相手は隣村の奴だ。アイツは昔から気の合う男だったんだ。私にゾッコンなんだ」
「それは良かったです!」本当に嬉しそうな顔をしていた。
「そこでだリリアンヌ……結婚式のスピーチを頼めないだろうか?」
「えぇ!?私がですか!?無理ですよぅ……」
「頼むよ。今まで育ててくれた恩もあるだろ?」
「うーん……分かりました。引き受けましょう」「助かるぜ!じゃあお前は新婦の席に座ってくれ」
こうしてエルフの集落では一つの大きな行事が始まろうとしていた。
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「と言うわけで皆さんこんにちは。司会進行を務めさせていただきますリリアンヌです。よろしくお願いしますね」
「「ワァアー!!!!!」」
この日の為に作られたレイヴ会場の大型ステージでの上で彼女はマイクを持って立っていた。
エルフ達が見守るレイヴ会場で彼女はウェディングドレスを着ていた。純白の衣装に身を包み彼女は微笑んでいた。その姿は家に籠りシャブを打ち続けた生活で肌は透き通るほど白く、シャブで飯が喉を通らない体は細くスラリとしてまるで天使のように美しかった。
「それでは主役の登場です。ロバートさん入場して下さい!」「はい!」隣村のロバートがステージ袖から出て来る。彼はタキシード姿だが頭にはハットを被っていない。代わりに彼の頭には真っ赤な芥子の花輪が被せられていた。
「村長ジュリエット貴女は新郎のロバートを生涯愛すると誓いますか?」
「あぁ!誓うよ!」「ロバート貴方は新婦のジュリエットを一生愛すると誓いますか?」
「あぁ!勿論だよ!」
「はい!ありがとうございます。では指輪の交換をしてください。まずは村長ジュリエットから」
ジュリエットが向かいロバート左手の薬指に金のリングを嵌める。次にロバートが銀のリングをジュリエットの左の薬指に填めた。
「続いて新婦のジュリエットから、どうぞ!」
ジュリエットが向かい合い、ロバートが彼女のヴェールを持ち上げる。そして、お互いに愛おしそうに見つめ合った。
「病める時も健やかなるときも、死が二人を分かつとも、汝、ロバートを愛する事をここに誓いますか?」
「はい。誓います」
「よし。次はキスだ」二人はゆっくりと唇を重ねた。
「「「キャー!!」」」
エルフ達は黄色い歓声を上げた。中には泣いている者も居た。エルフにとって結婚とは神聖な儀式なのだ。
「さて皆様!これからが本番です!!」
『待ってたぞーーーー!!』
『待ちくたびれたわ!!』
『早くしろー!!』
「えー!皆さまも我慢の限界だと思いますのでー!只今からエルフの里結婚式名物のーーーー!!サイケデリック・オールナイト・パーティーを行いたいと思います!お配りしたLSD!マジックマッシュルーム!メスカリン!などなど!幻覚ドラッグセットをお楽しみください!!!」
ワーーーー!!
ウオーーーー!!
エルフ達のボルテージは最骨頂に達した。
会場には他にも覚醒剤やマリファナ、コカインなどなどドラッグが一通り揃っていた。これらはエルフ族独特の引き出物だ。ドラッグをやるエルフは殆どがジャンキーなので自分の村で作った薬物を送り合ったりする。「おいお前らぁ〜!今日は楽しむぞぉ〜!」
村長の掛け声と共にエルフ達も叫び出した。
エルフの村は朝まで大騒ぎであった。
エルフの集落に結婚式を挙げてから一週間が経った。
ここは森の奥深くにある湖のほとり。
ジャンヌとリリィは仲良く水浴びをしていた。
「なぁ、ジャンヌ聞いてもいいか?」
「はい、なんでしょう?」
「最近、お婆さまの様子が変な気がするのだけど何か知らない?」
「えっ?村長はいつもあんな感じじゃないですか?お酒飲んで、ヤク打って、喧嘩して、ロバートおじさんと殴り合って、時々銃を乱射して 。」
「確かに……言われてみれば……でもなんか違うような……」
「はて?何が違うというのです?村長は村長ですよ」
「ううん……そうなんだけど……」
その時、遠くの方で爆音が聞こえてきた。
「ん?」
「なんだろ……あれは……あっ……また……」
「行ってみましょう」
リリィ慌てて服を着ると爆音の発生源に向かって走り出す。その後ろを慌てて追いかけるジャンヌ。しばらく走るとそこには……
「テメェーら!また来やがったのか!!」
「「「「「「「ヒィイイーーーー!!!」」」」」」」
数人のエルフと村長が人間の男達をボコボコにしていた。
異世界の手榴弾でも使ったのだろう。壊れた馬車とミンチになった身なりの良い人間だった部品が散乱していた。「オラァア!」
「ぐふぅう!?」
村長が倒れた男の一人に馬乗りになって何度も顔面を殴っていた。
「ひぃいい!?」
「逃げるな!!」
殴られている男は逃げようとしたが、村長は銃口を突き付け躊躇なく引き金を引いた。「ぎゃああ!?」
銃弾は男の貫き、地面に倒れ込む。
「ぎゃーーははははははははははははははははははははははははははははは!!」
村長は実に嬉しそうだ。「ははははははははは!!!」
笑いながら彼女は死体を蹴り続ける。
「うっひゃーーー!!あーーー!ははははははははははははははははははははははははははははははは!」
良かった、いつも通りの村長だ。リリアンヌは安堵した。
エルフ族の村長たる者、誰であれ舐めたら殺す。
大方コイツらは肥料になった合法ドラッグ屋の取り巻きだろう。
今さっき肥料になった身なりの良い男は貴族だろう。金蔓だった合法ドラッグ屋が消えて探しに来たのだろう。
村長や他のエルフ達も死体蹴りに飽きた様でジャンヌもパイプでマリファナを吸っている。掃除屋さんは肥料を回収しコカの木を植林する予定の山に持って行った。「はぁあ〜これすっごい良い…」ジャンヌが煙を吐き出しながら独り言を呟く。
村長はブツブツ言いながら、木箱に入った大量のシャブを取り出し、1袋づつ丁寧にチェックしている。売人が買いに来るのだろう。「あぁシャブが足りねぇな……」
「はぁあ?あれだけ作ったのに、まだ足りないんですか?」
「だってよぉ〜この前の奴らが大量に買って行ってな。在庫が切れそうだ」
エルフ族に限った事では無いが売人同士の約束は絶対だ。1g少なくても許されず、取引に1秒遅れても許されない。ルールを破ぶれば即射殺である。「はぁ……じゃあ私、工場へ行って来るよ」
「おう!頼んだ」
村長はリリアンヌを指差して言った。
「ついでにリリィも連れて行け」
「分かりました…ほら行くぞ!リリィ!」
「行ってくるね!お婆さま!」
ジャンヌは楽しそうに森の中を走り抜ける。エルフの薬物製造工場ではシャブ以外にも色々なヤクを製造していた。
そういえばこの間マリファナの収穫祭があった。お目当ては大麻樹脂だろう。喫煙に適さない部位でも樹脂がたっぷりと付いている、工場では端材を篩にかけて樹脂を集めるのだ。集まった樹脂はプレスで硬め黒茶色の美しいハシシの完成だ。ジャンヌとリリアンヌは工場のドアを開ける。
中ではエルフ達が様々な作業をしていた。
「皆さんこんにちわ〜」
エルフ達は手を振ってくれた。「おおジャンヌか」「リリィちゃん今日も可愛いわ」エルフ達の挨拶に応えつつ、ジャンヌは工場へ来た目的を思い出した。
「村長の頼まれてシャブを取りに来たの」ジャンヌは山積みになっているシャブの袋を漁り始めた。
「あった!これが欲しいの!」
「あいよ!」
壮年のエルフはシャブの袋を手際よく渡す。
「ありがと!」
ジャンヌは笑顔で言う。
「どういたしまして、また来てくれよ!あ、そうだジャンヌ。これはお土産だ。」
そう言って黒くて艶のある黒いボールをジャンヌに手渡す。
出来立てのシザーハシシだ……!
マリファナは葉っぱを吸う訳ではない。受粉させずに開花させた雌株の花弁を吸うのだ。邪魔な葉っぱを丁寧にハサミで切り取り整形し乾燥させる。その作業で大麻の樹脂が手やハサミに付きベタベタになる。ハサミにこびり付いた樹脂を集めた物がシザーハシシ…
とても純度が高くキマりも重い、辛いトリミング作業のご褒美で各自自分が集めたシザーハシシは持ち帰る事が許可されていた。
なかなか出回らない高級ハシシ…しかも新鮮で鮮度抜群とくれば……『ゴクリッ』アル中の私でも思わず唾液が口から滲み出る。
「ありがとう!大切に吸う!!また取りに来るから!!」
ジャンヌは満面の笑みを浮かべる。
「ああ!待ってるぜ!気をつけて帰れよ」
ジャンヌとリリィは工場を出て森を駆ける。
「やった!やった!!ついに手に入れた!!」ジャンヌのテンションが上がりっぱなしだ。
「まさか本当に貰えるとは…」
「え?なんの話?」
「いえ、なんでもないぞ!」
「ふーん」
そんな会話をしながら二人は村に戻った。
「ただいま!」
「おかえりなさい!」
ジャンヌが村長の家に戻ると早速シャブの袋を渡す。「はい!コレ!」
「おう、サンキュー」
袋を受け取ると村長は中身を確認し始める。
「おぉ!こんなに沢山あるのか!!」
「うん、いっぱい作ってたみたい!」
「そいつはラッキーだな。これだけあれば大丈夫だ!」
ジャンヌはソワソワしている。早く家に帰りたいのだろうな。
「ありがとうな!これはお駄賃だ」村長は私たちに小包みを1袋づつ渡して来た。中身はどうせシャブだろう…..
「ありがとう!お婆ちゃん!」「ありがとうございます」
私たちは村長宅を後にした。
「早く!早く家に帰ろう!!」ジャンヌは目を輝かせて急かす。
早く吸いたいのだろう…まぁ私も吸いたいのだが…
ジャンヌはリリアンヌの手を引いて急いで自宅に向かった。
「たーだいまーー!!」ジャンヌは誰も無い自宅の扉を元気良く開けると、部屋に飛び込みガサゴソと何かを探している。十中八九パイプだろう。
「ちょっとリリィ手伝ってーーーー!!!」
「はいはい」
私は彼女の探し物を手伝う。
「あった!これこれ!!パイプ!!」
そう言うと彼女はガラスパイプを取り出した。「あれ?これって……」
「あぁ、前に買った奴だよ」以前パイプを買った時に一緒に買ったやつか…
「あれ?ライターどこいったっけ?」
「確か……前使って…テーブルに置いといて……そのままだったような……」
「あぁ〜!またライターが消えた!!」
マリファナがキマると食べ物や音楽に夢中になり疲れて寝てしまう。勿論使ったライターをどこに置いたかなんて思えていないのだ。マリファナ愛煙家はライターを最低でも1ダース単位で召喚する。ジャンヌに至っては5〜10ダースも召喚している。
ジャンヌは立ち上がり、部屋をウロチョロし始めた。
「ねぇ!私のライター知らない!?」
「知りません」
「うぅ……どこにも見当たらないよぉ」
ジャンヌの目は涙ぐみ顔色がどんどん悪くなっていく。
まずいな……この状態でマリファナをキメたらバットトリップするかもしれない。
「私のライターあげるから…」「うぇ〜」泣きながら抱きついてくる……
「仕方ない」
リリアンヌはポケットに入れていたライターを取り出す。
「わーい」
ジャンヌは貰ったハシシをライターで少し炙り柔らかくする。
フルーティーさと香木が混ざった様な良い香りが漂う。
炙ったハシシを指先で千切りパイプに詰めて行く。「じゃ!火をつけるね!」
ジャンヌはハシシを詰めたパイプを口元まで運び、ライターで火を付け吸い込む。「あ!美味しい!!」
ジャンヌは幸せそうな表情をしている。
「良かったな」
「うん!新鮮だからかな?凄く良い!」
ジャンヌがパイプを渡して来る。
パイプを受け取りライターで火を付けながら吸い込む…これは美味い。とてもジューシーな煙だ。重く強烈なボディハイ…久々のストーンだ…
カウチロックしそうな体を動かしパイプをジャンヌに渡す。
「んー!おかわり!」
ジャンヌはハシシを更にパイプに詰め火を付け、煙をモクモクと吐き出す…
二人でハシシを吸う。
「はぁ……久しぶりのハシシ……最高!!」
「そうですね」
「はぁ……ボーッとする……お腹も減って来た……」
私も腹が減って仕方がなかった。マリファナを吸うとどうしてもマンチーは起こる。ついでに喉も乾く。
甘いものが食べたくて仕方がなくなる。ジャンヌを引き留めて村の店で食べ物を買っておくべきだった…。酒の摘みでも食うか?酢漬けイカくらいしか無いが…はやり甘いものが食べたい。
「ジャンヌ、何か食べ物は無いのか?」「うーん……パンケーキならあるけど食べる?」
「頂きます」
ジャンヌは台所に行き冷蔵庫からパンケーキを取り出した。
「はい!どうぞ」
「いただきます!!」
バターと蜂蜜をたっぷりかけたパンケーキを頬張る。
「あまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」
何だコレは?甘くて重い!だがそれがいい!!!!
マリファナの効果味覚が敏感になっており甘味が何倍にも感じられる。なんて美味さだ!!体に甘みが染み渡る!私は一心不乱にモリモリと貪る。
「そんなに慌てて……そんなにマンチだったの?」
「ああ!コレは病みつきになるな!」
ジャンヌは嬉しそうに微笑む。
「そう言って貰えると嬉しい…」「コレの作り方は教えてくれないか?」
「ううん。これは秘密……」
「そうか……」
私はもう一枚手に取り齧り付く。
「ふふふ……まだ沢山あるの!」ジャンヌは今度はブラウニーを取り出す。「それは?」
「私が作ったお菓子だよ。これも食べて欲しいの」
「ほう……ではご相伴に預かろう」
リリアンヌはブラウニーを口に運ぶ。
噛んだ瞬間、チョコレートの芳ばしさと共にナッツ類特有の香ばしさが広がる。濃厚なのに後味スッキリ、まるで舌ごと溶けてしまいそうだ!!
「これは……!旨いな!!」「本当!?良かった!!」
私は夢中で喰らいつく。
「あぁ……本当に美味い。こんな美味いものは初めてだ」
「そう?喜んでくれてうれしい……」
ジャンヌは照れくさそうに笑う。
「あぁ……素晴らしい……!ありがとうジャンヌ!!」
「えへへ……そう?そう?もっと褒めても良いんだよ?」
ジャンヌは満更でもない様子だ。「あぁ、お前を嫁に欲しい」
「え!?」「冗談です」
ジャンヌは膨れる。可愛らしい。「まったく……」
「ははは……ジャンヌは可愛いな。思わず口に出てしまったよ……」
「そ、それって……プロポーズ?」
「まさか」
ジャンヌは残念そうな顔をする。
そんなくだらないお喋りをしながら『ジャンヌ特製』のお菓子を食べていく。バターたっぷりのパンケーキに、バターたっぷりのブラウニー、バターをふんだんに使った美味しいクッキー。
夢中で食べ続ける…不思議な事にどんどんハイが増している気がする…
夢中で食べ続ける。バターたっぷりの焼き菓子を…
まて?バターばっかりじゃないか!まさか!!
「なあ?ジャンヌ…なんで出てくるお菓子がバターたっぷりの焼き菓子ばかりなんだい??」
聞いた途端ジャンヌは腹を抱えて笑い出した。「アハ!気がついた?」
「やはり……はぁ……」
「あはは!バレちゃった?」
「あぁ……ひどいヤツめ……」
ジャンヌはニコニコしながら話し続ける。
「だって、甘いものが食べたいって言うから、甘いものを出しただけじゃない」
「ジャンヌ……君は大麻バターで作った焼き菓子ばかり持って来たな!?」
「あはは!ばれたか!」
「全く、最初からこれが狙いで、買い物もせずに家に戻ったんな?」
「うん!」ジャンヌは悪びれも無く答える。
「はぁ……ジャンヌ……君と言うやつは……」
「ねえ?リリィは私のこと嫌いになった?」
「いや、別に……ただ呆れてるだけだ」
「じゃあいいでしょ!」
「はぁ……いい加減にしろ……」
ジャンヌの頭を優しく撫でた。
食品に加工した大麻が本格的に効き始めるまで1時間…効果が切れるまで12時間……既に少しハイが増している。これから襲って来るであろう強烈なハイを少し期待しているリリアンヌだった。
エルフの森は今日も明日もラヴ&ピース