ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。 その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。
彼らは森の中に作ったエルフの里に引きこもり、森の奥から出てくる事はないのだと言う。
だがしかし、この里では今日もどこからともなく悲鳴が聞こえてくるという。
そしてその悲鳴には、いつもエルフ以外の種族の叫び声が含まれているらしい……
アリシアはご機嫌だった。「わーい!やったぁ!」
キラキラとした黒い光沢を放っている。まるで磨き抜かれた黒曜石のような拳銃だ。
その美しさはアリシアの容姿と相まって非常に魅力的であった。
アリシアはトカレフをうっとりした目つきで眺めながら、こう言った。
「ああっ……これがあればもう何も怖くない……」
……シャブが切れた事で彼女の精神は限界を迎えようとしていた。
アリシアの心と体はシャブが切れた倦怠感に支配されつつあった。
だがそんな彼女を救ったものがいた。「……」彼女は振り返った。
そこには村長の姿があった。
手にはヒロポン3mgアンプルが握られている。「ほら、お薬だよ」
彼はアリシアに近づくとその手を取った。
そしてアンプルを差し出すと、「はいどうぞ」「うん……」
アリシアは差し出されたアンプルを手に取ると愛用の赤キャップで中身を吸い取った。
アンプルの中に入った無色透明の液体は血中でシュワっと広がり前頭葉を刺激して強烈な多幸感を生み出した。
そしてそれはすぐにアリシアの精神を支配した。
幸せな気分に包まれる。
(ふわぁ~♡)彼女は心底幸せそうな表情をした。(しあわせぇ..)
銃声が鳴り響いた。
パンッ!パパパパパンッ!!乾いた破裂音が連続して聞こえる。アリシアの無差別発砲が始まった。
(もっと、もっと……!)
彼女はトリガーを引き続ける。
バァン!
「アハハハハッ!」
バン!バン!バン!
「アハハッ!」
パパパパン! バババババッバババッ! 彼女の放った銃弾は四方八方に飛び散りそこら中に穴を作った。
「フゥーッ!!」
興奮した様子のアリシアが息をつくと同時に弾が切れた。「あら?」弾倉を見るとすでに空になっていた。
(あれれ?おかしいな……確かまだ予備が入ってたと思ったんだけど……)
そう思って腰回りや太股を確認するがやはり無い。(あちゃー)そこでようやく彼女は自分が今持っているのが全て最後のマガジンであることに気付いたのだ。(あっちゃー!)思わず天を見上げる。そこには何もなかった。あるとすればただ青空が広がっているだけ。
「……」
少しの間無言の時間が流れる。だがすぐに何か思いついたのか彼女は笑みを浮かべるとおもむろに懐から注射器を取り出した。
そして慣れた動作でアンプルからヒロポンを吸い出し腕に針を突き刺す。プツリと音を立てて透明な薬剤が流れ込み彼女の血管を満たしていった。
(ああ気持ちいい……)
ドーパミンの放出による快感で体が満たされていくのを感じる。
アリシアは撃ち尽くしたトカレフ弾を村長から貰い受けて弾倉へと込め始めた。
ガチャンガチャンガチャンと音を鳴らしながら装填を行うアリシア。
(ふぅん♪ふふん♪フンフーン)
鼻歌を歌いながら装填を終える。これでしばらくは持つだろか。
(よし、オッケー……)
アリシアは一仕事終えたといった風に満足げに微笑むと、またいつもの様にフラフラ歩き出した。
すると、その時だった。『キャァアアッ!!』悲鳴が上がる。悲鳴が上がった。
(え!?何!??)
彼女は辺りを見回すが特に何も変わったところは無い。
キョロキョロと見回していると、視界の端に人影らしきものが映った気がした。
(……あ、人魚だぁ……)
そこに居たのは奴隷の人魚達だった。
彼女達は暴力耐性が低くアリシアを極度に恐れていた。そのため近寄る事すら出来ないのだ。
(可愛いなぁ……)
その愛くるしい姿を見てアリシアの顔に笑顔が浮かぶ。
(うへへぇ~)
思わずよだれが出る。だがすぐに我に帰った彼女は思い出したように呟いた。
「……そうだ」
(この子たちを可愛がってあげないと!)
アリシアの心の中に悪魔的な発想が生まれる。
(……でもどうしようかな?やっぱりお姉さんらしく優しくしてあげたいなぁ……。よし、まずは頭を撫でよう!そしてその後、頬ずりして、抱きしめて、耳元で囁いて……)
「さあおいでぇ……私が遊んであげる……!」アリシアは舌なめずりをしながら、ゆっくり彼女たちに近づく。
だが……「ヒィッ!!」
彼女は悲鳴を上げると逃げ出した。
(あれれ?どうして逃げるのぉ??)アリシアは不思議そうな顔をする。会う度殴ったり叩いたり蹴ったり、水面に銃を撃ったり手榴弾を湖に投げ込んだり、海で捕まえてエルフの村に強制的に連れてきたりといてそれはないだろう。
それにしてもあの逃げ方は酷くないか。アリシアちゃん傷ついたぞ?もうちょっとこうあるでしょ普通。例えば怖くて逃げ出しちゃいましたとかそういうのはさあ。
「ねぇ待てってばぁ!」アリシアは叫んだ。
「全くしょうがないなあ。そんなんじゃダメだよお嬢ちゃんたち。お姉さんの事が怖いならお話をすれば良いんだよ。」
アリシアは言った。そうなのだ。コミュニケーションとは会話であり、暴力によって行われるもの。だから拒否権なんて存在しない言語道断。
つまりお話できない子は教育が必要だということだ。……とまあそんな感じの事を適当な理屈をつけて自分に言い聞かせるのがアリシアであった。
「ほら、私と一緒に遊びましょう!」アリシアが水面にトカレフを撃った。水が勢いよく飛び散る。
「アハハハハハッ!」彼女は狂喜しながら引き金を引き続けた。
「アハハハハハッ!アハハハハハッ!アハハハハハッ!アハハハハハッ!」
乾いた破裂音が鳴り響く。
パパパパン!!パンパンパン!! 水飛沫があがる。だがそんなの関係ないと言わんばかりにトリガーを引く指は止まらない。
(楽しい!)彼女は笑みを浮かべた。
(ああ幸せ!ああ……)彼女は絶頂に達した。
(最高……!)
『おい、なんだありゃ』
『あれが例ヤツか?』
『そうだろうな……多分』
『やべえよやべえよ!』
亜人奴隷の集団の中から動揺の声が聞こえる。
アリシアの周りにいる人魚たちは震えていた。
(怯えてる!可哀想に……)アリシアが近づく。
すると、
『い、嫌ぁっ!!』人魚達は泣き叫びながら逃げ出した。
(あっ……)アリシアが目で追う。
(行っちゃった……)寂しそうな表情を浮かべた。
(ふふふふ……!可愛いなぁ……!)
そしてアリシアは微笑むと奴隷たちに視線を移した。「……ふぅん♪」
彼女は息を吸うとトカレフを構えなおした。
バァン!
「ひぃっ!?」悲鳴を上げて倒れ込む男。
「ねぇあなた……」
彼女の顔には邪悪な笑みが広がっていた。
「大丈夫、私はあなたの味方よ……」
アリシアが優しく語りかける。すると男は涙を流し始めた。
『いやああだあああ!!』
男が叫ぶ。恐怖に顔を歪ませながら後ずさりした。
彼女はその様子にクスリと笑うと、手に持ったトカレフのグリップをゆっくりと握り締め銃の台尻で奴隷を殴り付ける。
(グゥエッ……!?)男は嗚咽を漏らした。「ねえ?」アリシアが続ける。「どうしたの……?どうして泣いているのかしら?」
「お姉さん悲しいわ……だってこんなにも優しいんだから……!うふふ……!本当に可愛いなぁ貴方……!」
アリシアはうっとりとした眼差しを向ける。
彼女は思った。この世で最も愛らしい生き物、それが奴隷であると。
アリシアは微笑むと優しく奴隷の頭を殴ってやった。「あらぁ……?もしかして恥ずかしがってるの?もう、照れ屋さんねぇ!」
「ぐえぇえええええ!!」
奴隷は断末魔を上げる。
彼は腹を抑えながら膝をついた。「ゲホッ……ゲホォッ!!」
アリシアは瀕死の奴隷に回復魔法を掛けると耳元で囁いた。「大丈夫?まだ死んじゃダメよ?」
(……!)男は震えた。
彼女は囁くように言う。「お薬をあげましょうね。いい子にするのよ?じゃないと……お仕置きだ」
「ヒィィィィィイィ!!!!」
アリシアは持っていた幻覚剤を注射した。
奴隷は幻覚と絶え間ない暴力で錯乱状態だ
。
そしてアリシアの狂気的な行為はさらにエスカレートしていった。
夜になるまで殴り続けたアリシアは充実感でいっぱいだった。
満足したアリシアは家へ帰る事にした。
明日は何をしようかな?そうだ!今日は奴隷たちのお話を沢山聞いた。だから今度は私がみんなに話す番。うん!決まり!
(ふふ……)
これからの生活に期待を寄せつつ、アリシアは歩き出した。
アリシアが家に帰ると村長が出迎えてくれた。
「おかえりなさいアリシア。遅かったですね」村長はそう言ってにっこりと笑った。「夕食はもう用意できてますよ。一緒に食べましょう」
「……!はい!」
「ふふふ」
嬉しそうなアリシアの表情を見て、彼女は安心したような表情を見せた。
「さあ、早く食べましょう!」
「……ああ。はいはい」
「お待たせしました」
料理が運ばれてくる。今日のメニューはスポーツドリンクだ。アリシアは目を輝かせた。
「いただきまーす!」
ゴクッと一口。美味しい。アリシアは笑顔になった。
「ごちそうさまでした。ふぅ……」アリシアは『食事』を終えると息を吐いた。満腹になり眠気が襲ってくる。(う〜ん……寝たいなぁ)
彼女は自室に戻り潰れる。シャブが切れたのだ。
シャブ中のアリシアが寝る事は少ない
久しく寝たアリシアの脳内にドーパミンが補充されていく......
奴隷達は地獄だったがエルフの森は平和だった。
明日もきっと平和だろう。
エルフの森は今日もラブ&ピース