ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。 その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。
この世界では人類が支配的な種族であり、人間は亜人や獣人といった他の生物を支配していると思っているようだが、実際には違う。
人間はエルフに支配されてるのだ。
彼らは森の奥深くに隠れ住んでおり、滅多に里から出てくることはない。出てきたとしても人間にヤクを売る時だけだ。
だから人間を奴隷にしているのもあまり知られてはいない。
人間の国家同士だって戦争しているし、負けた国の国民を奴隷にするのも当たり前だった。エルフ達はそんなことはどうでも良かったからだ。
ただ自分達が作った薬を売りさばければそれでいいと思っていた。
そして今日もまた新たな顧客が現れたみたいだ……
「こんにちわ!」
1人の美少女の声によって現実に引き戻される。声の主はこの集落のエルフであるリリアンヌであった。
彼女は村長から今日のヤクの取引を頼まれていたからだ。
「おうリリィちゃんか」男はニヤつきながら言った。
彼らにとってこんな美少女が来るというのは嬉しいことなのだ。
彼はコカインの売人だ。見た目は普通の青年だがただの売人である。
「はいこれいつものです」そう言って彼女が取り出した袋には白い粉が入っていた。これが彼の収入源だ。彼はエルフからコカインを買い付け人間の国で売り捌いて生計を立てている根っからのクズだ。彼が麻薬を買っているのは何も金のためだけではない。薬に溺れた女が彼に群がるのだ。
「じゃあまたね〜」彼はコカインを10キロも仕入れ帰って行った。彼らが帰った後、しばらくすると今度は別の客が来たようだった。
太った男だ。彼はヘロインが欲しいらしい。
「はいよ、毎度ありー!」
そういうと彼女は木箱を取り出して彼に渡した。中身はもちろんヘロインである。これも彼らの商売道具だ。
「ありがとうございます!!」彼は満面の笑みを浮かべ帰っていった。
(ふぅ〜これで仕事終わりっと)
リリアンヌは一息ついたあと家に帰ることにした。
(ああ疲れたなぁ……もう寝たいけどまだやることがあるんだよね……)
彼女は明日もヤクの受け渡しをしないといけないのだった。しかも2日連続で……しかしそれは仕方がないことだ。それが彼女の役目なんだから……。
次の日の朝になった。
男がやってきたようだ。早速ヤクを渡すことにした。昨日の男とは別の奴だ。今回は3人いる。1人はヤク中の男。残りの2人も同じような感じだろう。
「はいどうぞ……」と言って彼女が渡したのはピンクの錠剤が入った小瓶だった。これはMDMAだ。覚醒剤系の一種である。服用すると極めて強い多幸感を感じる薬だ。
受け取った男たちはすぐに服用し始めた。そしてすぐに効き目が出てきたようだ。
3人ともトリップ状態になっている。それからしばらくして彼らは去っていった。
次はどんな人間がくるのか楽しみだと思いつつも少し不安もあった。
まともそうな人が来てほしいものだと思ったが残念なことに彼女にとってはどっちにしても関係ないことだった……
昼になり再び訪問者があったようだ。今回はかなり多いような気がする。一体何人来るんだろうか?気になって外に出てみるとそこには紫のローブを被った集団がいた。人数は15人ほどだ。彼らは幻覚剤を買いに来たようだ。
シャーマンか宗教関係の人間だろう。…… つまりはまともじゃないってことだ。
「はい……まいどぉ~」そういうと彼女は先ほどと同じように幻覚剤を渡していった。渡す量が多いので大変だったが、なんとか終わった。最後の一人は大量のLSDを購入した。信者に飲ませるのだろう。(早く帰りたい……眠いしダルいな……)
と思いつつ彼女は帰路についた。
家に帰るとジャンヌがマリファナを吸っていた。彼女はジャンキーではあるが比較的マシな方で、マリファナくらいなら問題はないのだ。
ジャンヌはボングをボコボコ音を立ててながら吸っていた。
「ぷっはー……おかえり!」「ただいま……ジャンヌ」
その後、夕食を食べ、風呂に入り、床に就いた。
次の日になった。
2人は幻覚キノコを採集しに森へ行く事にした。エルフの森の奥地にはマジックマッシュルームの群生地があるのだ。森の中をしばらく歩くと、そこにたどり着いた。木漏れ日に照らされた神秘的な光景が広がっていた。エルフ達ですらこの場所を知っている者は多くない。
「おお!すごい!」「綺麗だねぇ」
2人は感動していた。
「さあ採ろう」「うん!」
そこからしばらくキノコ狩りをした。
30分ほど経った頃、そろそろいいかと思って帰ることにした。2人は採集したキノコをマジックポーチに入れる。沢山のアイテムが入り中の時間も停止する凄いアイテムだ。昔村長を怒らせ殺された合法ドラッグ屋が持っていたものだ。
痛みやすいマジックマッシュルーム採集に欠かせない物だ。
村に帰った2人はコーヒーショップで休憩する事にした。
コーヒーショップは最近エルフの村に出来た新しいスタイルのお店だ。
コーヒーショップと言ってもコーヒーを売っている訳ではない、マリファナ専門の販売店の事だ。マリファナを購入し店で吸うのだ。
購入してその場で吸えソフトドリンクや軽食も注文出来る。
店長が異世界の雑誌にあった店を再現したらしい。何でコーヒーショップなんだろう?まあいいけどさ……。
今日は朝からずっと歩きっぱなしだったので疲れた。ここでひと休みしよう。
ボコボコボコボコボコボコ……店のある大型水パイプで煙を吸い込み。吐く。
「はぁ〜……」「はあ〜」「ふぅ〜」「…………」「気持ちいい〜」
そんな感じにだべっていると一人の客が入ってきた。
「いらっしゃいませー!」
「あれ?」
その男は見覚えのない人間だった。
「あの〜ここってタバコ売ってくれるんですかねー?」そう聞いてきた。
「そんな訳ねえだろが!!ぶっ殺すぞ!!」店長がキレた。当然の反応である。
リリアンヌはその男を見た瞬間嫌な予感に襲われた。
この感覚は何だろうか? 直感的にヤバいと感じる。
まさか…… 私はジャンヌの方を見る。
ジャンヌも同じ事を考えていたようだ。目をキラキラと輝かせている。
ジャンヌこれから起こるであろう惨劇を想像し期待に胸をときめかせていた。(ああ……最悪だわ)彼女は頭を抱えたくなった。
「タバコが欲しいのですが……」状況を理解しないバカな男が何か言っている。
その瞬間店内に爆音が鳴り響いた。ドガァン!!!という轟音と共に男の頭部が弾け飛んだ。
(やっぱりかぁ……..)
店長が愛用の散弾銃で男の頭部を撃ったのだった。そしてそのまま死体を引きずって裏口から出て行く。死体は村の掃除屋さんに引き取られるのだろう。彼は肥料になったのだ。リリアンヌたちはそれを黙々と見ていた。
数分後、店長が戻ってきた。
「すまんかったのう」と言って謝ってきた。
「いえ……大丈夫です」
「これサービスじゃ」といってポテトチップスを差し出してきた。
「ありがとうございます」
私達はそれを受け取り食べる。とても美味しい。塩味がきいてて最高だ。
「おいしいね」「うん……うまいよぉ」
2人でモグモグしながら喋った。
食べ終わると、ジャンヌは満足そうな顔で「おいしかったぁ……また来ようねぇ!」と言った。もう二度と来るかと思った。その後は家に帰ることにした。家に着くと、ジャンヌは早速買って来たマリファナを吸っていた。
一本くれと言うと快くくれた。
ジャンヌが火を付けてくれる。
「ありがとー!……んっ!」
一服すると、頭がぼんやりとしてくる。
「なんか……眠たくなってきた」ジャンヌが言った。
「そうだねー」
リリアンヌも同意する。
「少し寝るか」
「賛成」
2人はベッドに入った。
2人の意識はそのままゆっくりと闇に落ちていった。
次の日、2人はいつも通り起きた。
朝食を食べ、服を着替え、髪を櫛で整える。「よし、準備オッケー!」「行こう!」2人はエルフの村へ出発した。
道中、昨日の事を思い出しジャンヌに話しかけた。「ポテトチップス美味しかったわ」「うん!うまかったよね!」
「また食べたいなあ」「今度一緒に行こっか!」
あのポテトチップスは美味しかった。店長は村でも真面目で研究熱心なエルフだ。もしかするとポテトチップスも異世界式のレシピなのかもしれない。
歩いていると村に着いた。今日も平和だ。
村には色々なお店がありどこも繁盛しているようだ。
肉屋さん、八百屋さん、サイケ屋さん、魚屋さん、シャブシャブ屋さん、ダウナー屋さん、コーヒーショップ屋さん、銃砲火薬店、奴隷屋、薬局まで色々な店がある。エルフの村は薬の密造や密売などダークな商売で潤っているのである。
2人は本屋に用事があった。異世界の本が欲しかった。異世界の本は素晴らしい本が多くエルフ達に人気だった。
「こんにちは〜」「お邪魔しま〜す」
店主はエルフの男性だ。背が低くハゲており強面だが気の良いおじさんといった風情の人物だった。
店の中には所狭しと様々な種類の異世界の書物が置かれている。
「いらっしゃい。今日はどんなご要件かな?」
「えっと〜雑誌があれば欲しいんですけど〜」
「はいよ。ちょっと待っててな」
そういうと奥に引っ込んでいった。しばらく待っていると1冊の本を持ってきた。
「ほれ、この本なんてどうだい?」
「おおー!」「すごい!!」
それはハイな人向けの雑誌だった。表紙にはマリファナの写真がデカデカと載っていた。
「これは異世界で賞を獲得した大麻さ」「これが!?綺麗ですね〜」
「これください!」
「あいよ」
ジャンヌはその雑誌が気に入ったようでバックナンバーも買っていた。リリアンヌも目的の本を買うことが出来た。
その後、ヘッドショップに行ってみたり、銃砲火薬店に行ったりして時間を潰していった。
お昼になり2人は食事をする事にした。エルフの村では食事処も多かった。ピザ屋の看板が目に入る。【ハッピー・ハーブ・ピザ】
少し前にエルフの村で話題になった美味しいピザ屋さんだ。本格的なピザ生地を使い美味しいチーズをたっぷり乗せ石窯で焼き上げる本格的派ピザだ。
リリアンヌも久しぶりにピザを食べたくなった。ピザにしよう。店の中に入ると店員の若い男性が挨拶をしてくる。目がイってる。
「いらっしゃいませ!」リリアンヌたちは席に着く。メニューを見ると色々ある。
マルゲリータ、ペスカトーレ、マリナーラ、クアトロフォルマッジetc…… どれもこれも美味しそうだった。
「私はマルゲリータにするわ」ジャンヌはマルゲリータを選んだようだ。
店員さんを呼んで注文を伝える。店員さんは「ハッピーにするかい?」と聞いて来る。勿論ハッピーにする。ジャンヌはハッピー多めだ。
「はいよ」
5分ほど待つと焼きたてのピザが来た。とても美味しい。
「おいしいね」「うん!」
2人でワイワイ言いながら食べる。
「たまには良いね!」「こういうのも良いね!」
食べ終わった後、2人は店を後にする。
その後も適当に村をぶらぶらしながら飲み物を買って準備する。そろそろいけるだろう。リリアンヌはジャンヌの方を見た。ジャンヌもそわそわしているジャンヌは待ちきれないのだろう。
1時間ほど経つ頃ジャンヌも効いてきたようだ。私も効いてきた。
とても幸せな気分になる。多幸感が強い。ジャンヌも楽しそうだ。
あのピザ屋は本当に天才なのだと毎回思う。あんなに美味しいしマリファナも入ってる。いあ、トッピングのマリファナパウダーの量を選べるから良いのだ、私はノーマルハッピー、ジャンヌはハッピー多め。ハッピーの量が選べて良い。村のみんなもお気に入りの店だ。
「ねえ、もうそろそろ帰ろうか?」「うん!」
2人はエルフの村から家に帰るのだった。とても強く多幸感に包まれて…2人はとても幸せだった。
エルフの森はみんな幸せだ。
エルフの森は今日も平和だった。明日もきっと平和だろう。
エルフの森はラヴ&ピース
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