おいでよ!エルフの森!

AIのべりすと(https://ai-novel.com/novel.php)にて作成した作品です。

おいでよ!エルフの森7!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 

その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


そんな森の奥深くに暮らすエルフに美少女がいた。彼女の名前はジャンヌ。マリファナが大好きな普通のエルフだ。

 


ジャンヌと共に暮らすのはアル中のリリアンヌ。「あー、今日もお酒美味しいなぁ」彼女はお気に入りの木箱に座っている。木箱には彼女がいつも飲んでいる芋焼酎が入っている。彼女にとってこれが命の水なのだ。

「ん? 誰か来たのかしら?」

森の中からこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。どうやら誰か来たようだ。

(まさか……村長じゃ無いでしょうね!?)

ジャンヌは慌てて立ち上がった。そして銃を構える。いつでも戦えるように準備したのだ。もしこの場に現れたものが村長だった場合、最悪撃ってしまっても構わないだろう。だが、もしも違う人物ならば……。殺そうとしても村長なら死なないだろう。しかしそれでも殺すつもりは無い。ジャンヌは死にたくないからだ。

「誰だ?…あれ??」

そこに居たのはエルフの少女であった。彼女はジャンヌ達の姿を見ると安心したような表情を浮かべた。どうやら敵意は無さそうだ。

見たことの無い少女がいる。年齢は16歳くらいだろうか。彼女は薄汚れてボロ布のような服を着ている。髪は長くボサボサで、肌は不健康に荒れ垢まみれでやつれている。シャブ中の見本のような少女だ。(これは……ヤク中か?)

ジャンヌは警戒心を少しだけ上げた。

「えっと……どちら様でしょうか?」

ジャンヌは恐る恐ると聞いた。すると少女が口を開いた。

「わたしの名前はアリシア・ウォーカーですわ!! 偉大なる神の声に導かれこの地に参りました!!!」

こいつはシャブ中だ。せん妄状態だ。(こいつ絶対シャブ中じゃん!!!)

ジャンヌは安堵していた。目の前の少女は明らかに狂っているように見える。しかもかなり重症に見える。恐らくまともな会話は難しいだろう。とりあえず落ち着かせようと考えたジャンヌは彼女に優しく語りかけた。

「落ち着いてください、シャブを打てば冷静になりますよ」ジャンヌの言葉を聞いた途端、アリシアの顔つきが変わった。まるで親の仇でも見つけたかのような憎悪に満ちた目をしている。

「うるさい!!! 黙りなさい!!」

いきなり怒鳴られたことに驚いたジャンヌであったが、すぐに気を取り直して再び話しかけようとする。しかしその前にアリシアの方が先に話し始めた。

「私をバカにするんじゃないわよ……私は正真正銘本物なんだから!!!」

そう言って彼女は懐から何かを取り出した。それは小さなガラスの小瓶に入った透明な液体だった。ジャンヌはその小瓶に見覚えがあった。里のエルフ達がよく持ってるヒロポン3mgアンプルだ。(やっぱりポン中だった……)

「ほら! 見てみなさい! これがあればどんな病気も治すことができるのよ!!」

ジャンヌは思った。間違いなくヤク中の戯言だと。ヒロポンで本当に病が癒せるわけが無い。しかしジャンヌにはどうすることも出来ない。下手に手を出すと何をするかわかったものでは無い。

「わかりました。信じる事にします」ジャンヌは適当に返事をした。とにかく早く帰って欲しいのだ。「ふんっ。わかればいいのよ!」

完全に自分は正しいと思い込んでいるアリシアを見て、ジャンヌは自分の判断の正しさを確信した。

その時、リリアンヌがあることに気付いた。

(あれ? この子どこかで見た事がある気がする…)

どことなく村長の面影がある。この子は一体何者なのか? もしかすると村長の親戚かもしれない。だがあの村長の親戚にしてはあまりにも不出来すぎる。そんなことを考えていたリリアンヌだったが、ふとあることを思い出した。(あれ? この子の目元……村長に似てるような……まさか……)

リリアンヌはある考えに至った。もしその通りならばこの子がここにいることは辻妻が合う。ジャンヌは深呼吸をして、意を決して質問した。

「あなた……ひょっとして……村長の曾孫?」

「え? はい……そうですけど……」

(ビンゴォオオオ!!!)リリアンヌの心の中で歓喜が湧き上がった。

(つまりリリアンヌの姪…)(姉さんの娘……)

ジャンヌも遅れて理解した。そして、同時に頭を抱えたくなった。

(うそぉ……)まさかリリアンヌの親族が来るとは思ってなかったのだ。

(あぁ……めんどいな……)ジャンヌは考える事を止めた。もう何もかも面倒になったのだ。

「私は神だ!私は神だ!あーーはっはっは!!!」

高笑いをしながら銃を乱射し始めるヤク中の少女アリシア。彼女は今、とてもハイになっているようだ。

「お前たち全員ぶっ殺してやる!皆殺しじゃああ!!」

「ちょっと落ち着け!!」

興奮した様子のアリシアを落ち着かせるため、アリシアを殴り付けた。彼女が意識を失うまで殴り続けた。

「……」

アリシアは気絶した。仕方ないので地面に寝かせたままにしておくことにした。ジャンヌ達は家の中へと入って行く。ジャンヌはアリシアについて知っている事を話すように求めた。

「えっと……彼女が私の従姉妹のアリシアです」

「そうなんですか〜」

「はい、名前は知っていましたが、会ったのは初めてですね。……ところでどうしてこんな所にいるんでしょうか?」

「さぁ、なんでしょうね〜?」

「……やっぱりシャブ中ですか?」

「おそらくは……村長にそっくりだし…」

シャブを打ち銃を乱射。村長そっくりだ。

「とりあえず起こしましょうか?」

「お願いします」

ジャンヌがアリシアを蹴り続ける。彼女はすぐに目覚めた。

「ここはどこだ!? 敵はいないのか!!」

「落ち着きなさい」

ジャンヌが再び殴った。再び気を失った。その後、ジャンヌはアリシアに詳しい事情を聞くために起こした。また暴れないように注意しながら話を聞いたところ以下のことが分かった。

 


・自分は偉大なる神の啓示を受けてこの地に来た。

・人間を滅ぼす為にやって来た。

・自分は偉大な預言者だ。

・まず手始めにこの村を潰す。

「嘘つけ!!」

ジャンヌは再びアリシアをぶん殴って気を失わせた。

「ダメだこいつ……早く何とかしないと……」

「どうするのコレ?」

「とりあえず村長の家に連れて行きます……これ以上問題を増やさない為にも」

結局ジャンヌ達はアリシアを村長の家に捨てに行くことにした。村長の家は質素であるが、広い家である。客間の一つを貸してもらいそこにアリシアを置いておくことにしよう。

後は知らない…アリシアは来なかった…自分は悪く無い…

ジャンヌは自分に言い聞かせた。「はぁ……」

ジャンヌは大きな溜息をつく。疲れがドッと出た。

今日はもう休もう。そう思い、自分の部屋に戻るのであった。

「はぁ……」

ジャンヌは深い溜め息をついた。

(村長一族はプッツンしかいないのか?)ジャンヌの悩み事は尽きないのだった。

リリアンヌの姪アリシアがエルフの里にやって来てから二週間ほど経過したある日のこと…

『神になるのだ!!私は神になるのだ!!神になるのだ!!!』

アリシアの叫び声が聞こえる。

[パーン!パーン!パーン!パーン!]

アリシアが愛用のトカレフを乱射する音が聞こえる。

(うるせぇなぁ……)

ジャンヌは耳を押さえながら思った。ここ最近毎日のようにあのヤク中の絶叫を聞いている気がした。

あの後、村長宅にて目を覚ましたアリシアは自分が何故ここに居るのかわからず混乱していた。

そして、村長とアリシアは意気投合しあれから毎日暴れていた。

村長が言うには昔よく一緒に遊んでいたらしい。

「あの子はとてもいい玄孫だ」とのこと。だが今はただ迷惑でしかない。アリシアを村長に押し付け、よかったと思ったが後の祭りだ。

「おらぁーーーーーー!!」

アリシアの雄たけびと共に銃が発砲される音が鳴る。

「……」

ジャンヌは無言のまま窓の外を見た。そこには村長と一緒に森の奥へと消えていくアリシアの姿があった。

「何度見ても狂気しか感じられないんだが……大丈夫なのかアレで……」

ジャンヌは心配になった。

「ま、いっか」

考えるのを放棄した。

ジャンヌは気分転換の為に外に出ることにした。

外は晴れており、気持ちの良い日差しが降り注いでいた。

「はぁ……」

ジャンヌは深く深呼吸をする。空気がうまい。

[パーン!パーン!パーン!]森の中から聞き慣れたアリシアトカレフの発砲音が響く。

「ふぅ……」ジャンヌは歩き出した。特に目的地は無いのだが、自然豊かな景色を見て癒されたかったのだ。しばらく歩くと大きな湖が見えてきた。その畔に腰掛けて、空を見上げる。

雲一つない青空が広がっていた。

「あー、平和だな……」

[バン!バン!バン!」村長の44マグナムの発砲音が鳴り響く。「……」

ジャンヌは現実逃避することにした。

その後、一時間ほどで村長達も飽きたらしく発砲音が聞こえなくなった。

「ようやく静かになったか……」

ジャンヌは立ち上がり大きく伸びをした。懐から巻き紙とマリファナを取り出し素早く巻き火を着けて吸った。

「ふぅー…」ジャンヌは煙を吐き出した。美味い煙だ。

「さて、帰るか…」今日の夕食は何だろうか?丁度お腹も減ってきた。

「ただいまー」ジャンヌが帰宅すると、リリアンヌが食事の用意をしていた。

「おかえりジャンヌ」リリアンヌは笑顔を浮かべる。「今晩はシチューですよ」

「やったぜ」

ジャンヌは手を洗い、食卓に着く。リリアンヌが隣に座ってくる。

「はい、パンです。熱いうちに食べてくださいね?」

「いただきます」

ジャンヌは早速スプーンを手に取り、シチューを口に運ぶ。

「うんめぇ!!」

「それは良かった♪ 作った甲斐がありましたよ〜」

「最高だよ!!」

「あらあら……」(なんか新婚みたいだな〜)ジャンヌは幸せを感じていた。ジャンヌ達が食事をしていると、突然発砲音が鳴り響いた。「またあいつか!?」ジャンヌは急いで玄関へと向かう。そこには案の定アリシアがいた。

「テメェいい加減にしやがれ!!今度は何をするつもりだ!!」

ジャンヌは怒鳴りつけた。

「神になるのだ!!」アリシアは叫んだ。

「さっさと帰れ!!」扉を閉めた。「はぁ……」

ジャンヌはため息をついた。最近は毎日こんなやり取りをしている気がする。

「あの子どうしました?」

リリアンヌがやってきた。ジャンヌは事情を説明した。

「はぁ……」リリアンヌは大きな溜息をついて、額に手を当てた。「なんなんだ一体……」

リリアンヌは台所に戻っていった。

(疲れてるんかな………)

ジャンヌは自分の部屋に戻り、ベッドに横になって考え事を始めた。

最近のエルフの里についてである。アリシアが来てからというもの、エルフの里では銃の乱射遊びが流行っていた。みんなが皆お気に入りの銃を昼夜構わずぶっ放すのである。おかげで森の木が何本か折れたり燃えたりする始末だった。

アリシアが来る前は村長夫妻くらいしか銃を乱射し無かった。少なくともジャンヌはそう記憶していた。

(まぁいいけどな……)

ジャンヌは考えることをやめた。

翌日…… アリシアは懲りずにやって来ていた。

「修行するぞ!修行するぞ!修行するぞ!解脱するぞ!!」アリシアは叫びながら銃を乱射した。トカレフが2丁に増えている。「うるせえ!出てけヤク中が!」ジャンヌは怒鳴る。

「修行するぞぉおお!!!」アリシアは銃を撃ちまくっている。

リリアンヌはアリシアを止めに入った。

「もういいじゃないですか……大人しくしてましょう……」「だが断る!!」アリシアは叫ぶ。

「はぁ……」リリアンヌは深い溜息をつく。

ジャンヌは考えたくなかった。これ以上厄介ごとが増えるのは勘弁願いたかった。

しかし、その数日後に事件は起きた。

ある日のこと……[ドォーン!!!]轟音と共に地面が大きく揺れ動いた。

「何だ!?」ジャンヌは慌てて外に出た。

そこには巨大なキノコ雲が立ち上っており、爆心地を指差しながらゲラゲラとエルフ達が笑っていた。「あれが神の炎だ!」

「ついにやったか!」

「これで我らの悲願も達成される!」

『あー、あー、テステス』

どこからともなく声が聞こえてきた。ジャンヌはその方向を見る。村長宅前の広場に魔導拡話器を持ったアリシアが立っていた。

『見たか!皆の者!愚かなる人間共に正義が行われた!』

どうやら人間の街が爆破されたようだ。

「おい、まさかお前の仕業か?」ジャンヌはアリシアに向かって言った。

「そうだ、我が力を思い知らせてやったわ」アリシアは不敵に笑う。

「はぁ…」ジャンヌは脱力した。アリシア厨二病を併発していたようだ。

シャブ中で厨二病

とか救いようがない。

「私は神になったのだ!!」アリシアは叫んだ。

「はいはいそーですねー」

ジャンヌは適当にあしらうことにした。正直これ言って相手にするのが面倒くさかったからだ。

「我こそは女神にして全知全能のアリシア・バートレットである!!」

「へー」

「よって私が人間共に天罰を与えた」

「ふぅん」

ジャンヌは完全に興味を失っていた。早く帰って一服したいなぁと思っていた。

「聞いておるのか?」

「ハイヨー」ジャンヌは欠伸をした。

(面倒だ、このまま帰ろう)ジャンヌはアリシアを放置し帰ることにした。

 


「ただいまー…」ジャンヌは家に帰った。

ジャンヌは自室に戻り、パイプを取り出しマリファナを詰め火をつける。深く煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

「ふぅーーーー…」煙が吐き出される。そしてジャンヌは考え始めた。

しばらく考えてジャンヌはあることに気付いた。

「しまった…今日の夕食は私の当番だった…何か作らないと…」ジャンヌは台所に行き冷蔵庫を開ける。中には大量の酒瓶があった。

(うっ……今日は何にも買ってないな……)

ジャンヌは買い出しに行く事になった。ジャンヌは近くの肉屋へ向かった。

「へい!らっしゃい!」店に入ると威勢の良い挨拶が飛んできた。この店の店主だ。

「おう、親父さん、豚肉あるかい?」

「あいよ!豚バラで良いかい?」

「それで頼む」ジャンヌは財布からお金を出した。「毎度ありぃ!」

(さっさと買い物済ませちまうか)

次は八百屋のおばちゃんの所に行った。

「あらぁ!ジャンヌちゃぁん!いつもありがとうねぇ!」

「すいません、ジャガイモ5個貰えますか?あと玉ねぎも」

ジャンヌは代金を払って店を出る。

「いつもありがとうね、また来てね!」

「はーい!」

(疲れた……)

ジャンヌは重い足取りで帰路につく。

「帰ったぞー……リリアンヌは居ないか……はぁ……飯作るか…」

ジャンヌはマリファナを吸いながらカレーを作ることにした。幸いカレー粉はあった。

具材は豚肉に人参じゃがいもタマネギ、それにリンゴを入れればいいだろう。後は煮込むだけだ。

「よし完成っと!」

ジャンヌは料理が完成したことに満足しリリアンヌが帰るまでマリファナで一服する事にした。

グラインダーで砕き、巻き紙に置く。くるくると巻き上げジョイントの完成だ。

火を付け煙を吸い込み…うまい…至福の時間だ……。

ジャンヌは幸福感に包まれていた。

ガチャリ…… 玄関の鍵が開く音が聞こえてきた。リリアンヌが帰ってきたようだ。

リリアンヌは家に帰ってくるなり、部屋中に充満する匂いに顔をしかめた。

「臭いです……換気をしましょう」そう言い窓を開く。冷たい風が入り込んできて少し寒い。

「おかえり、今食事用意してやるから待ってくれ」ジャンヌは鍋からカレーを盛り付ける。「美味しそうな香りですね」リリアンヌはテーブルに座り、食事を待っていた。

「ほれ、出来たぞ、食べてくれ」「いただきます」二人でいつも通りの食事だ。

リリアンヌは焼酎をゴクゴクと美味しそうに飲み饒舌になる。

ジャンヌも久々に大麻樹脂をパイプで吸いながら話が弾む。

(アリシアが来てから色々と気にし過ぎたか?)

ジャンヌは自分が気にし過ぎている事に気付いた。

銃を乱射するのも前から村長夫妻が毎日やっていたでは無いか。

人間の街を爆破するのも里の誰かが時々やっているでは無いか。

リリアンヌと食事をしていたら段々といつもと変わらない事に気がついていた。

 


(気にし過ぎか…)

ジャンヌは考え事をしながらもカレーを食べ進める。

「ご馳走様でした」二人は同時に完食した。そして食器を流しに置き、ジャンヌはソファーに座った。

ジャンヌはジョイントに火をつけ一息つく。

「ふぅーーー……」気付くと隣にはリリアンヌがいた。

「どうした?」ジャンヌは不思議に思い尋ねた。すると突然リリアンヌに押し倒された。

どうやら酔っているようだった。ジャンヌはそのままリリアンヌを部屋に運んでベッドに寝かせた。

 


「寝るか……」

ジャンヌも色々と吹っ切れたせいか急に眠気が襲って来た。

早くベッドに入ろう。明日も銃声で目が覚めるだろう。

そんなことを考えながらジャンヌは眠りについた。

 

 

 

エルフの森は平和だった。エルフの森で武器の使用は日常茶飯事。

いつも通りの日常でいつも通り平和だった。

きっと明日も平和だろう。エルフの森はラヴ&ピース。

 


-END-

おいでよ!エルフの森6!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


[パン!パン!パーン!]

エルフの里に乾いた破裂音が響き渡る。村長の愛銃スミス&ウェッソン44マグナムの発砲音だ。

 


撃ったばかりの拳銃を手に持ったまま恍惚としている村長。

「頭が冴えてきたぜ!!」そう言ってリボルバー式のハンドガンを乱射する。44口径マグナム弾の騒音が村中に響き渡る。シャブが効いて来たようでご機嫌だ。弾を撃ち尽くすと空薬莢を取り出しポケットから新しい弾を取り出し銃に装填する。

[ズガーン!ズガーン!ズガーン!!]

村長のマグナム弾とは異なる発砲音が鳴り響く。彼女の夫であるロバートの愛銃デザートイーグル.50AEの発砲音だ。彼はオートマチック派だ。

お互いマグナム弾が大好きだった。弾はホローポイント弾しか使わない。

村長はシャブ派で、ロバートはコカイン派だった。お互いアッパー系で仲が良かった。

 


彼らの発砲音はエルフの里では鶏の代わりの朝を告げる目覚ましだ。朝日が登ると二人は仲良く寝起きの一発をキメ、そのまま外で銃を乱射するのだ。これが毎日のお決まりのパターンであった。

エルフ達も慣れたものだ。二人の銃撃が始まると寝ている者は起き出し、徹夜でキメている者は布団に潜る。

 

 

 

リリアンヌも目が覚める。

眠い目で枕元に置いたビール缶を手に取り蓋を開けゴクゴクと飲み干す。目覚めの一杯だ。異世界の雑誌で『寝起きに水を飲むと健康に良い』と書いてありその習慣を取り入れた。ビールは水だ。

彼女は信じていた。

「ぷっはー!」美味しい。もう一本飲んじゃおうかな?……

 


ジャンヌも目が覚める。

眠い目で枕元に置いたボングに口を付け火皿のマリファナに火を付ける。

ボコボコボコボコボコボコボコボコ……大きく息を吸う。

目覚めの一服だ。異世界の雑誌で『寝起きに深呼吸すると健康に良い』と書いてありその習慣を取り入れた。大麻は空気だ。

彼女は信じていた。

「ぷっはー!」美味しい。もう一服吸っちゃおうかな?……

「おはよう」「おはよう!」部屋から出た二人は互いに挨拶する。二人は同じ家に住んでいた。

 


「今日は何発撃ちましたか?」ロバートが聞く。

「100発くらいかな」村長が答える。

「そんなもんですかねぇ〜」ヤク中同士意味の無い会話をする。彼らは朝の乱射を終えるとまたヤクをキメる。

村長はシャブを注射し、ロバートはコカインを鼻から吸う。夫婦二人で仲良く薬を楽しむ。

 


リリアンヌが起きてきて朝食の準備を始める。今日のメニューはシリアルだ。牛乳の代わりにカルーア・ミルクをかけて食べる。

ジャンヌも朝食を摂り始める。相変わらず凄まじい量を食べるな、

と思いながら見ているとあっという間に食べ終えてしまった。

食事を終えた一行は森の奥へと足を運ぶ。

奥に行くほど木々が生い茂っている。

鬱蒼とした森の中をしばらく進むと拓けた場所に出た。芥子畑だ。

 


畑には村長夫妻が捕らえた人間の奴隷達を働かせていた。

立派に育った芥子坊主を眺めてると収穫の時期が来た事を実感する。今年の実入りはどうだろうか?

「おお!実ってますね!」ロバートが叫ぶ。

「どれどれ……」村長が芥子を摘む。

「こいつぁいい出来だ。去年よりかなり上等だぞ」

そう言うと手早く芥子坊主に[川]や[三][井]の字に切れ込みを入れて行く。

少し経つと切れ込みを入れた芥子坊主から乳白色の液が滴る。生阿片だ。奴隷達は次々と芥子坊主に切れ込みを入れ、液が滴るとそれをヘラで集めていく。芥子坊主1つから取れる阿片の量は僅か60mg程しか取れない。数を集めるためには膨大な量の芥子畑が必要だ。阿片を集める作業も全て手作業で行う必要があり普通にやっては元が取れない。

村では森の外で捕らえた人間を奴隷として使っているため人件費はタダだ。労働力として重宝している。

奴隷は便利だが大量の阿片を作るとなると話は別だ。この広大な土地を全て耕して種を植えて栽培する必要がある。

これだけの面積になると人海戦術が必要になるが、エルフは数が少い。奴隷にやらせると重労働ですぐに死ぬ。

そこでエルフ達は異世界から農業用トラクターを召喚し広大な畑を作った。これなら人力に比べて圧倒的に少ない人数で農作業を行え、しかも一度に広範囲の土地を耕作できる。

エルフ達が奴隷を使役する理由は他にもある。それは麻薬の製造方法の秘匿のためだ。

エルフの里で製造されるヘロインは質が良いことで評判だ。純度が高く静脈注射が出来る程だ。静脈注射は強力で一度使うとその快感から抜け出せない。エルフの里の名産品だ。里の外に漏れ出す事など絶対に避けたい。

「来年にはもうちょっと量を増やせるだろうよ」

村長が嬉しそうに話す。

「これでまた新しい工場が建ちますねぇ〜」

ロバートも嬉しそうだ。「あそこに見えるのはなんでしょう?」

リリアンヌがある一角を指し示す。

そこには巨大な金属製の機械があった。「あれかい?アレは肥料を製造する装置だよ。」死んだ奴隷の処理装置のようだ。

「死体をミンチにして肥料にするんだ。」「へぇ〜便利なものがあるんですね」

奴隷達は必死に働く。いずれ解放されると信じて……

 


やがて夕方になり一行は集落に帰る。

帰り道ジャンヌが話しかけてきた。

「今日も楽しかったな!!」

彼女はマリファナをキメている。

マリファナでハイになっている時は会話が弾むのだ。

「ええ、最高だったわ!」

リリアンヌも焼酎をラッパ飲みする。

「明日は何発撃つ?」

「100発くらいかな?」

「そんなもんかねぇ〜」

村長とロバートの意味の無い会話も続く……

4人はヤク中特有の意味の無い会話を楽しみながら帰路に着く。

 


「疲れた〜」「疲れたわね〜」

ジャンヌとリリアンヌは自宅に帰って来た。ジャンヌとリリアンヌはお風呂に入る。2人の美少女は互いの身体を洗い合う。

全身泡だらけになった2人が浴槽に飛び込む。湯船に浸かり一日の疲労を癒す。

ざぶんと音を立ててジャンヌとリリアンヌの肢体が浮かぶ。

「ああ、気持ちいい……」ジャンヌが呟く。

「本当ですねぇ〜」

リリアンヌも答える。

そのまま二人はお風呂を上がりパジャマに着替え、リリアンヌはビールを飲み、ジャンヌはジョイントを吸いながらご飯を作った。2人で仲良く夕食を摂る。食事を終えると食後のデザートだ。バニラアイスだ。

ジャンヌがジョイントに火をつけると吸いながらアイスを味わう。

「美味しいですかぁ?」

リリアンヌが尋ねる。

「うん!いつもより美味しい!」

リリアンヌはアイスに黒糖梅酒をかけて味わう。

「美味しい…」

2人はゆっくりとした時間を過ごす。

夜も更けてくると寝る事にした。

「それじゃあお休みなさい」そう言って二人はそれぞれの部屋に戻る。

 


リリアンヌは寝る前に焼酎を飲む事にした。『寝る前の適量の飲酒は健康に良い』と異世界の雑誌で読んだからだ。

リリアンヌは自分の基準で適量である焼酎4Lボトルを飲み干した。

明日も良い日に違いない。そう思いながら眠りに着いた。

 


ジャンヌは寝る前にマリファナを吸う事にした。『寝る前にアロマを焚くと健康に良い』と雑誌で読んだからだ。

ジャンヌは自分の基準ではアロマであるマリファナを吸う事にした。

きっと明日も良い日だ。そう思いながら眠りに着いた。

 


きっと明日も村長の44マグナムの銃声で1日が始まる…

 


今日もエルフの森は平和だった。きっと明日も平和だろう。

エルフの森はラヴ&ピース…

 


-END-

おいでよ!エルフの森5!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


エルフの森の奥深くに、エルフの里があった。

ありふれた里に一軒の家があった。そこにはアルコール中毒の銀色の長い髪をした美しい美少女リリアンヌと、マリファナを愛してやまない金髪碧眼の美しい美少女ジャンヌが住んでいた。

 


「あー!美味え!!」

リリアンヌは酒瓶を手に取りラッパ飲みする。

 


リリアンヌ。銀髪蒼瞳のエルフだ。優しい性格だが怒らせるとめちゃくちゃ怖い。酒を飲んだら手がつけられないほど暴れ出す事もある。

もう一人がジャンヌだ。金髪碧目の少女である、不真面目な性格をしており、彼女の一番好きなものはマリファナだった。

 


そんな彼女たちは森の中で暮らしていた。面白半分でモンスターや人間を狩猟をしたり、村の芥子畑で仕事をしたりしながらヤクを密売し暮らしており、充実した毎日を送っていた。

 


ある日のことだった。ある時里に一人の初老のエルフが現れた。彼は名をホフワンと言った。薬物合成の達人だ。彼の活躍によりエルフの里の生活は大きく変わった。

まず、リリアンヌは彼に勧められカビから幻覚剤を作ることを覚えた。最初は好奇心からた合成を始めたが、今では化学合成が大好きになっていた。

最初リリアンヌは驚いた。麦に付くと毒性が強すぎ食べられなくなり捨てられている麦角菌から素晴らしい幻覚剤が作れるのだ。

人間からカビた麦をタダ同然で仕入れる。そこから複雑な行程をいくつも行ない最強の幻覚剤であるLSDに仕上げるのだ。

LSDの合成法を編み出したホフワンはエルフ達から非常に尊敬されていた。ごく微量で効果があり使って良し売って良しの素晴らしい物質だった。

さらに彼は薬の効果を高めるために様々な研究をしていた。例えば村では芥子を栽培しており芥子から取れる阿片から麻薬成分を単離しモルヒネを作った。更にモルヒネからヘロインを合成し里の収益は大きく増えた。こうしてエルフの里には大量のドラッグが流通するようになった。エルフ達は幸せだった。

 


ある日のこと、村に人間の軍隊が現れたのだ。彼らはこの森を王国の領地に組み込もうとやってきたのだ。そしてエルフたちを奴隷として連行しようとした。

当然、そんな事は不可能だった。エルフ達は異世界から召喚した大量の銃器で武装しており中世程度の軍隊はあっさりと処分された。

エルフ達は報復とばかりに王国に神経ガスサリンを散布した。王国の街は全て壊滅状態になった。

しかしまだ足りなかった。もっと苦しめばいいと思った。そこでエルフたちは王都に細菌兵器を使用した。

結果、王は死に、王家の血筋は途絶えた。生き残った貴族は国を捨て逃げたり降伏したりした。

王国は完全に制圧され、占領されてしまった。エルフ達は報復が済み用済みとなった元王国をどうするか悩んだ。

統治するのは面倒だった。エルフ達は面倒な事が嫌いだった。その時、ホフワンがある提案をした。

『ここは一つ、新しく傀儡国家を作り新しい王様を迎えてもらってはいかがでしょうか?』

それは名案だと皆思った。早速、エルフ達が集められ会議が行われた。その結果……王国で虐げられ奴隷にされていたホビット達に特権と権力を与え統治させる事にした。

ホビットの国の名前は"ヤクヅクリ王国"に決定した。初代の王は適当に選んだホビットに任せた。イエスマンなら誰でもよかった。

虐げられてたホビット達は運が良かった。運良く支配者階級なれたからだ。これで飢えることも無い、虐げられる事もない。人間の奴隷も沢山居た。奴隷にほぼ全ての労働をさせていが『反乱を起こされては面倒だ』と思ったエルフ達は異世界から調達したジャガイモやサツマイモ、トウモロコシや大豆といった育てやすい作物を普及させ奴隷達を飢えさせないようにした。暴動など起こされるのは面倒だった。

肥料不足はホフワン博士が異世界の書物から見つけたハーバー・ボッシュ法と呼ばれる魔道技術により空気中から無限に肥料を作り出し解決した。

王国の人間達は不思議がった、奴隷に落とされ酷使されやがて飢えて死ぬと思っていた。だが実際は新しい貴族のホビットから新しい農作物や作物がよく育つ素晴らしい肥料が与えられ暮らしが昔より良くなっていた。昔の貴族は飢饉の時すら例年通り税を奪っていったし冬場の餓死者は珍しく無かった。だが今はちゃんと働けば飢えることは無い。奴隷達は喜んで薬物の密売をするようになってくれた。

エルフの森で作られた各種薬物はヤクヅクリ王国に運ばれた後、人間の売人奴隷に渡される。売人たちは帝国や皇国へ運び薬を売るのだ。

売った薬の1%は売人の取り分になる。薬物の売却益は膨大だ。少量でも金貨100枚。多量に持ち込めば白金貨200枚にもなる。

生まれて一度も金貨を見た事がない者も多かった。リスクはあっても1回の密輸で金貨数枚から白金貨まで儲かる密輸事業は大人気だった。しかしそれでもリスクはある。エルフから提供された偽造身分証があっても、門番や国境警備隊に鼻薬を嗅がせても、密輸トンネルを掘っても、海を渡っても密入国はバレるリスクがあった。

そこでヤクヅクリ王国の人間達は帝国や皇国や公国で奴隷を買い密輸さえせる者も多く居た。

ホフワン博士の協力もあり飴と鞭の統治政策は大成功だった。それから約500年が経った。

------------

「……」

マリファナを吸いながらジャンヌとリリアンヌは書類に目を通していた。

 


麻薬の密売で稼いだ金は莫大なものになった。あれから何度も薬物汚染で周囲の国が滅び、滅ぶたび新しい国が興った。国が新しくなってもやる事が変わることは無かった。

リリアンヌはヤクヅクリ王国からの書類に目を通す。

【レグス公国では阿片が流行り至る所に阿片窟があり公国民が中毒になっている】

その報告を見て安堵する。「阿片か、問題ないわね」

阿片はエルフの里で大量に作っている。阿片からモルヒネを単離しヘロインも作っている。阿片の次はモルヒネを売り、モルヒネの次はヘロインを売るのだ。公国はまだまだ搾り取れそうだ。ドラッグの密売だけでも王国時代の数十倍稼いでいる。王国時代に王国に売りつけた麻薬を今度は帝国や皇国に売って儲けている。王国とエルフの里の関係は良好だった。王国とエルフの里の関係が良好なのは王国が"媚びを売っている"からだ。エルフ達はホビットを優遇し飴を与えるが苛烈な鞭も忘れて居なかった。時々出てくる生意気な貴族は一族郎党高射砲で公開処刑した。

 


そんな事を考えつつ、ジャンヌは報告書を眺めていた。

【セン王国では覚醒剤が蔓延し、市井の民から貴族まで愛用している】その報告書を読んで嬉しくなる。

ホビット達の密売組織はエルフの森で作られる各種薬物を帝国や皇国、そして王国に輸出していた。500年に及ぶ麻薬密売技術は完璧だった。ほぼ全ての国の重鎮貴族は金と薬と暴力で懐柔されていた。

世界各国が協力しヤクヅクリ王国へ経済制裁や禁輸処置を取っていたが効果はまるで無かった。ハーバーボッシュ法により無限に作り出せる肥料で食糧問題は解決していたし、金があれば何でも買えた。商人は儲かれば良いのだ。例え相手が悪の王国であろうが金払いは良いし、他国では値段が付かない労働力にならないような奴隷も買ってくれる上客だった。買われた奴隷は勿論ドラッグの密輸や現地で売人として使われる。

各国はヤクヅクリ王国を恐れた。ヤクヅクリ王国の国王はホビットだ。エルフ達とは仲が良いが他の種族には冷たかった。特に人間は徹底的に見下されていた。

実際はホビット達を完全に支配しているのはエルフであり例え王族でも決してエルフに逆らえなかった。

『極悪な巨大国家』が森に住む遅れたエルフに支配されてるとは夢にも思わなかった。それはヤクヅクリ王国に住む人間たちも同じだった。彼らは500年の時代の中でホビットが王侯貴族であり、人間が平民である事に疑問を感じなくなっていた。危ない仕事は買った奴隷とその子孫に任せ、平民達は農民や商人や職人など普通の生活をしていたのも理由だった。自分達がエルフに支配されていると知る者は居なかった。

 


王国の次の王は誰になるんだろう?ジャンヌは考えたが答えが出なかったので考えるのをやめた。

今日も家で2人は仕事を続ける。

リリアンヌ、今何時?」

「午後4時20分ですね…」

 


もう仕事は終わりだ。エルフの里では勤労は4時20分までの掟だ。

「疲れたーー…」ジャンヌは背筋を伸ばし書類や筆記具を片付け自室に戻る。

 


自室に戻り今日のマリファナを選ぶ。選んだらお気に入りのボングも取り出す。

コンコン…扉がノックされリリアンヌがペットボトル焼酎とビーフジャーキーを持って入ってくる。

 


トクトクトク……ワイングラスに焼酎が注がれていく…

トクトク……ガラスボングに水が注がれいく…

 


ジャンヌは今日のマリファナを火皿に詰め、リリアンヌはおつまみを広げる。

 


二人は仲良く乾杯し煙と酒に酔いしれる。夜はこれからだ…

 


今日もエルフの森は平和だった。明日も明後日も平和だろう。

 


エルフの森は今日もラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森4!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。森にはヤク中が蔓延り、モンスターすら薬漬けになっているため危険極まりない場所だ。

 


そんな危険な森の中に一軒の家がある。家主の名前はジャンヌ・ダルク

彼女はエルフ族の中でも一際マリファナが好きだった。

現在は仲の良いリリアンヌと共にヤクを密輸し生活をしていた。

「ああー! もうやってらんねぇ!」

ジャンヌが机の上にあったボングを叩き割った。ガラスの破片が飛び散る。

「どうしたんですか?」

向かいに座っていたリリアンヌが問うた。

手元には彼女が調合した大麻バターコーヒー置かれていた。この飲み物を飲むだけでトリップできる。

「最近村の方でも妙な噂が流れてやがんのよ」

「どんなですか? またオークが出たとかですかね?」オークとはゴブリンより二回りほど大きい亜人型のモンスターである。見た目の通り大雑把な性格をしており、力が強い以外は特に取り柄のない種族だが、繁殖能力だけは高いという厄介者だ。

エルフ達が面白半分で狩り続けたせいで最近ではめっきり姿を見せなくなったことから絶滅したのではないかと言われている。

「いやそれがさぁ……勇者が現れたらしいんだよ」

「へぇー…いつ頃現れたんでしょうね?」

「一週間前だってさ」

「えっ!?︎ それってヤバくないですか!?︎」

勇者といえば強大な力を持つ人間共の希望にして象徴だ。その存在が現れれば国を挙げて歓迎するのが常であるが……。

「ヤバイよなぁ〜ヤクの密売がやり辛くなるなぁ〜…」

「まあまあお酒飲みながら考えましょうよ」

そう言ってリリアンヌはグラスに焼酎を注いだ。

それから二人は日が変わるまで酒を飲んだ後眠りについた。

***

翌日二人が目を覚ますと家の外が何やら騒がしかった。

外に出るとそこには武装をしたエルフの一団がいた。

「野郎ども!!勇者をぶっ殺すぞ!!」

村長が檄を飛ばす。その手にはAK-47があった。

リリアンヌはそれを見て慌てて駆け寄った。

「ちょっちょっと待って!!一体何事なの!?」

「黙れ!勇者共のせいでクスリが売れねぇんだ!!だから殺す!!」

村長は持っていた銃床で思い切り殴りつけた。あまりの痛さに地面に転げ回るリリアンヌ。鼻から血が出ていたが、本人は気にする余裕すらなかった。

「お前も同罪だオラァッ!」村長はリリアンヌを殴り続けた。

彼女はシャブ中だ。話を聞くタイプでは無い。「落ち着い!話を聞いて!!」

必死に説得しようとするリリアンヌだったが、既に正気を失っている彼女に言葉が届くはずもなかった。

 


その後、村長は存分に暴力を振るい満足したのか、エルフ達村人全員を集めこう言った。

「これより我らは勇者を探す。見つけた者は報酬として金貨100枚!勇者を殺した者には金貨1000枚を与える!!」

『うおおおおおおお!!!』

皆が目を血走らせ銃を掲げて叫ぶ!!

『殺すぞ!殺すぞ!殺すぞ!!』

こうしてエルフの森では血に飢えたエルフの達よる勇者狩りが始まった。

 


「死ぬかと思った……」

ジャンヌに治療魔法で回復して貰いながらリリアンヌは呟いた。昨晩あれだけの騒ぎを起こしたにも関わらず、今は静寂を取り戻している。

「全く……どうしてあんな事をしてしまったんだ?」

リリアンヌ……」

「なあに?」

「私思ったの、私たちが勇者を殺せば良いんじゃない?」

リリアンヌは頭を抱えた。コイツ本気で言っているのか?

「あのなぁジャンヌ相手は人類最強の男よ?」

「大丈夫だって、銃があればなんとかなる」ジャンヌはいつも通りの笑顔を浮かべた。

「ジャンヌ……貴女まさかそのライフル使ってやる気じゃないでしょうね?」

ジャンヌが持っている物は全長780mm重量14.5kgの対物狙撃ライフルであった。

「当たり前でだ!これなら絶対勝てる!」

リリアンヌは悩んだ。このバカや村長や村のエルフの達を止める方法を。

(何かいい方法はないかしら?)

「そうだ!」リリアンヌはポンっと手を叩いた。「どうした?」ジャンヌが聞いた。

リリアンヌはこの場にいる者達を集めるよう頼んだ。

数分後全員が集まった。

「おいリリアンヌこれはどういうことだ?」村長が尋ねる。

「みんな聞いて欲しいことがあるんです。勇者を狙撃し暗殺しましょう。」全員がざわつく。

(なんて良いアイディアなんだ!!)エルフ達は感心した。

「よし分かった。それで誰が勇者をを殺す?」

「それはもう決まっています。ジャンヌが50口径対物ライフルで狙撃します。」

ジャンヌ自慢のバレットM82A1対物狙撃ライフルであれば勇者も即死であろう。皆がリリアンヌを褒め称える。

「良し決定!早速準備に取り掛かるぞ!!」村長の一声で暗殺が決まった。

「本当にこれで良かったんでしょうか?」

リリアンヌは不安になった。しかし、今更止めるわけにもいかない、勇者を召喚したと噂がある帝国の法では麻薬はご法度。帝国に召喚された勇者はエルフの里を襲うだろう。勇者の暗殺は成功させねばならない。全ては村の為ヤクの為勇者を殺す。

 

 

 

「クッソどうなってんだよ!?︎」

勇者マサヨシ・ケントは苛ついていた。理由は簡単だ。自分がこの世界に来て一週間、ひたすら訓練ばかりだったからだ。この世界の文明レベルは低い。中世ヨーロッパといったところだろうか。

 


自分の武器は伝説の聖剣エクスカリバー。しかしその威力は凄まじく、下手すれば帝都ごと焼き払ってしまう恐れがあるため使用は禁止されていた。

毎日同じ訓練訓練訓練訓練訓練……マサヨシは嫌で嫌で仕方がなかった。「ああクソッ!やってらんねーよこんなの!!」

マサヨシは天に向かって叫んだ。

異世界転移特典で強力なスキルでも手に入れちゃったりするんじゃないかと期待していたがそんなことはなかった。

「まあいいか。とにかく今日でこの訓練所からおさらば出来るみたいだしな。」

勇者の訓練期間が終わり次第帝国に凱旋するという約束だった。

「確か明日が最終日だとか言ってたな……」

 


翌日、訓練所に兵士達が集められた。

「諸君!これより帝都へ帰還の儀式を執り行う!!帰還の儀式は3時間後だ!それまで解散!!」

『はっ!』一糸乱れぬ規律で兵士たちは上官に敬礼する。

上官の言葉と共に周りの兵士が次々と去っていく。

「さて俺も行くとするかな……」

マサヨシは荷物をまとめ始めた。

その時だ。

「勇者様!」一人の兵士が駆け寄ってきた。

「おう!なんだい?」

「実は陛下より言伝を預かっているのです。帝都へ凱旋の際には必ずこの鎧を着用するようにとのことです!」

兵士は勇者に赤い色の美しい刺繍の入った煌びやかな鎧を差し出した。「おお!こりゃすげぇ!!」

マサヨシは興奮し、鎧を着た。そしてそのまま部屋を出て行った。

「これより帝都へ帰還する!」隊長が号令をかけ兵士たちが歩き出した。勇者は先頭に立ち威風堂々と歩いていた。

「見ろよ!あの立派な鎧だ!!カッコイイ!!」

「流石勇者さまだなぁ……」

「見ろ!あの鎧!カッコいい!」

「あの人強いんだよな?なら魔王倒せるんじゃないか?」

兵士達は勇者を見て盛り上がっていた。そんな中一人の兵士が消えた事を誰も気が付かなかった。

《こちらの任務は成功した》手短かに無線機に告げたエルフの兵士…

《了解、至急現地から離脱せよ》無線機からの指示に従い森の中へ消えていった。

 


時は戻り、エルフの森の外れにある洞窟の中……

「よし、これで全員揃ったな……」

エルフ達が全員集まったことを確認したジャンヌは言った。

「なあジャンヌこれから何が始まるんだ?」

ジャンヌの友人であるマリファナ好きのドワーフスコットが尋ねた。

「ふふん!聞いて驚け!今から私達による勇者暗殺計画を始める!」

『おおおお!!』

エルフ達は歓声を上げた。

「それで?どうやって殺す?」

「まずは狙撃の準備だ。」

「狙撃?狙撃ってあの遠くの的を狙うやつか!」「そうだ!このライフルを使う!」

ジャンヌは巨大なライフルを取り出した。

全長780mm重量14.5kg、12.7mm弾を使用する対物ライフル"バレットM82A1"。

「これを私が使う!」ジャンヌはライフルを構えた。エルフ達は呆れた。

「お前が撃つのかよ!?︎」

「当たり前じゃないか!私の銃の腕を知らないのか?」

「知ってるけどよぉ……本当に大丈夫なのか?」

ジャンヌは自信満々に答えた。

「大丈夫大丈夫!任せてくれ」

(全く……本当にコイツ……)

こうして暗殺計画はスタートしたのであった……。

 


一方その頃、マサヨシ一行は馬車に乗り込んでいた。

「いよいよ凱旋だな!」

「それでは出発します」御者が言い馬を走らせた。勇者一行を乗せた馬車は帝都へと向かっていった……。

 


「良いか?まず帝都から1200m離れたこの山の中腹に狙撃班が待機する。」

ジャンヌが地図で示す。

「勇者が凱旋し門を150mほど通過したタイミングで狙撃する」

帝都の見取り図にポイントを書き込む

「スコットさんは凱旋門近くで勇者が来たら無線機で合図してくれ、赤い鎧を着ているから目立つはずだ、狙撃したらすぐに逃走しろ。」

「分かった」ドワーフは答える。

「では、作戦決行だ!」

 

 

 

「勇者様!そろそろ到着ですよ!」

「分かった!」

マサヨシは外に出て伸びをした。

「やっと着いたぜ〜!帝都まで長かったような……短かかったような……」

マサヨシは感慨深そうに呟いた。

 

 

 

「皆のもの!準備を始めろ!!」ジャンヌが指示を出した。

「「「はっ!!」」」

エルフ達は一斉に散った。

ドワーフのスコットは凱旋門の方を眺めていた。すると無線が入った。

《こちら狙撃班、配置に付いた》耳に装着したイヤホンから声が届く。異世界から召喚された道具に舌を巻く。

スコットは気を引き締めて返答する。

《こちら凱旋門、勇者はまだだ》

《了解、このまま待機する》

(さーて、勇者サマにはご退場願うとするかね)ジャンヌはニヤリと笑みを浮かべた。

 


「勇者様!もうすぐ帝都です!」

「おう!楽しみだなぁ!」

勇者マサヨシは浮かれていた。勇者らしく凱旋用の豪華なチャリオットに乗るからだ。

チャリオットを引く軍馬も屈強な体躯で見るからに勇者らしいサラブレットだ。

軍馬に引かれたチャリオットに乗り民衆に手を振り声援に答える。

凱旋門をくぐり少し進んだところで突如勇者の胴体が真っ二つに爆ぜた。

胴体と下半身が爆ぜ、二つに分かれた胴体が民衆の目の前で地面に放り出された。

辺りは静まり返っていた…「え……?」

誰かが漏らしたその言葉を皮切りに悲鳴が上がった。

「きゃあああ!!」

「ゆ、勇者さまあ!!?」

「何が起こったんだ!?︎」

マサヨシの上半身が地面に叩きつけられ血溜まりを作る。マサヨシの下半身が崩れ落ち地面に投げ出され血溜まりを広げる。

「勇者様が……死んだ……?」

「嘘だろおい!!何があったんだよ!」

「勇者が死んだぞおおお!!」

「そんなあぁぁ!!」

「どうしてぇぇぇ!!」

「嫌あぁぁぁ!!」

混乱する民衆の中一人の男が叫んだ。『神の裁きだ!』

『そうだ!勇者は裁きを受けたのだ!』『神の怒りに触れたのだ!!』

『やはり勇者召喚は間違いだったのだ!!』

『勇者は呼び出してはいけない存在なのだ!!』

『勇者は召喚してはならなかった!!』

異世界からの勇者召喚は禁忌だったのだ!!』

次第にそれは伝播していき民衆は口々に叫び始めた。

[召喚を行った皇帝が悪い]

[勇者召喚は悪魔の禁術だった]

[禁術を使い神の怒りに触れた皇帝は退位せよ]

 


たった一言逃げる前にスコットが流布した『神の怒りだ!』から随分と尾ヒレが付き帝国は大混乱だった。

ジャンヌ達の勇者暗殺作戦は成功した。「よし!計画通り!あと逃げるだけだ!」

ジャンヌはマイクを手に取り言った。

《勇者暗殺成功!繰り返す!勇者暗殺に成功!》 エルフ達は歓喜の声を上げた。

「やったぜ!」

「俺達の勝利だ!」

「これでエルフの森は安泰だ!」

《エルフの森へ帰還する!》 《了解!》 ジャンヌ達はエルフの森へ帰還した。

エルフの森へ帰ってきたジャンヌ達はエルフ達に英雄として迎えられた。

「ジャンヌ!よくやってくれた!」

「ありがとうジャンヌ!」

「お前のお陰でヤクが今まで通り売れる!」「ジャンヌ!これからも頼むよ」

「任せてくれ!薬物はエルフの宝だからな!私達が守ってみせる!」

ジャンヌは胸を張って答えた。エルフ達はジャンヌを讃えながら酒を酌み交わしていた。

その様子をジャンヌの友人であるマリファナ好きのドワーフスコットは遠くから見ていた。

(アイツ……ついにやり遂げたな……)

スコットはタバコを混ぜたマリファナジョイントを吸い込み暗殺の成功を噛み締めた。

 

 

 

一方帝都ではマサヨシの葬儀が行われた。

葬儀には各国から多くの貴族が参列した。

「勇者マサヨシ殿……貴殿の勇気ある行動に敬意を表す」「勇者マサヨシ殿、貴方の魂は永遠に不滅であります」

などと勇者の死を悼む言葉を並べたが、内心では"ハズレ勇者が死んでせいせいした"と誰もが思っていた。

「陛下、お悔やみ申し上げます」

「う、うむ」

「勇者マサヨシは素晴らしい人物でした」

「そ、そうか」

「はい!彼の死を無駄にしないためにも我々は一致団結し魔王に対抗すべきです!」

「そ、そうじゃな……」

この男の名前はヨシュア・エレオノラ・フォン・ハーフェン。この国の宰相を務める人物である。

この男は事あるごとに自分の都合の良いように国を動かそうと画策する典型的な小物であった。そもそも魔王など今は居なかった。それは周知の事実だった。

そして宰相の独断政治とエルフ製のドラッグの蔓延、勇者の謎の死により帝国の秩序は徐々に崩壊を始めた。

 

 

 

ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅ……」

ジャンヌは自室にて愛用のボングでマリファナを一服していた。

ジャンヌは勇者の暗殺に成功した後、村長から勇者殺害の成功報酬金貨1000枚を貰いウハウハだった。毎日のマリファナのブランドもワンランク上の高級品種に変わったが、やる仕事は以前と同じなので生活そのものは余り変わらなかった。

 


コンッ! 扉をノックされた。

「入れ!」

ガチャリ 村長がいた。

「どうした?何かあったのか?」

「実は先日勇者様を殺った後、証拠隠滅のために帝都一帯を爆破したのだが、結構な数貴族が死んだぞ!!!」

村長は嬉しそうに語る。「なるほど、そりゃあ良かったじゃないか!」

「うむ!これで更にヤクを売れる様になる!大儲けだ!!」

「そ、そうなのか?」

「ああ、勇者が死んだ理由だって『神の怒りに触れた』と大騒ぎだ。自暴自棄になった奴らがヤクに群がってる。」

村はドラッグ特需の好景気に沸いていた。「しかし、勇者の死因は銃だ。怪しまれるんじゃないか?」

「大丈夫だ。勇者の死体はもう無い。それに勇者は神の怒りで死んだ。誰も疑わないさ。」

「そういうもんかね?」

「ああ。薬だが大幅に値段を上げる。」「分かった。」

「それからもう一つ頼みがある。」

「なんだ?」

「最近エルフの森への襲撃が頻繁に起こっているらしい。」

ジャンヌは察した。きっと異世界からの物資召喚が急務なのだろう。エルフは頻繁に異世界からあらゆる物資を召喚し調達していた。

武器弾薬は勿論、暗殺に使用した対物ライフルやロケットランチャーや無線機、果てはマリファナ喫煙用のライターに至るまで何でもかんでも召喚するのだ。無尽蔵とも言えるエルフの魔力の成せる技である。ジャンヌは思った。

(勇者の次は襲撃か)

ジャンヌは心が躍った。久々に愛用のカラシニコフを撃ちまくりたかった。

 


その後、数日間に渡りエルフ達は異世界から山のように大量の武器弾薬を召喚し調達した。

AK47・HK416・M16A1・89式小銃などなど強力な軍用アサルトライフルからブローニングM2重機関銃までも山のように積まれた。

地雷も数万発ある。地雷原を作る為だ。

RPG-7ロケットランチャーも忘れていない。手榴弾も山の様に積まれている。

これなら人間共がどれだけ攻めて来ても皆殺しに出来る。ジャンヌは確信した。

 


ジャンヌ達エルフは森で優雅な生活を送ってた。暇があればマリファナを吸い、里のエルフ達と人間狩りも楽しむ。まさにエルフの森は天国のような場所になっていた。

ジャンヌはエルフの森での生活は気に入っていた、最近はエルフ達の栽培しているマリファナのグレードが上がっていた。

異世界の品種改良されたマリファナの種を狙い召喚していたからだ。エルフ達はマリファナを栽培するとそれを乾燥させて、そのまま吸ったり、バターに溶かし込んだりした。

マリファナは一度加熱することで成分が変化し、主成分のTHCAが脱炭酸されTHCになり精神作用を引き起こすことから、エルフ達は嗜好品としてマリファナ食品を作り楽しんでいた。ジャンヌの趣味もマリファナを溶かしたバターから作る焼き菓子だ。このお菓子はエルフの間で手軽に摂取でき効果も強く長く効くととても流行っていた。

(今日も平和だ)

ジャンヌは自室でくつろいでいた。コンッ!とまた扉が叩かれた。

「どうぞ!」

ガチャリ 村長が来た。

「どうした?何かあったのか?」

「実は昨晩、帝国が崩壊した!!」村長は嬉しそうに語る。

「なるほど、そりゃあ良かったじゃないか!」

「うむ!これで更にヤクを売れる様になるぞ!!」「そ、そうなのか?」

「ああ、勇者が死んだ理由だって『神の怒りに触れた』と大騒ぎだ。自暴自棄になった奴らがヤクに群がってる。」

村では勇者の死よりも薬物の高騰で皆喜びの声を上げていた。

 


ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅ……」

ジャンヌは自室にてボングでマリファナを一服していた。

ジャンヌはエルフの森での暮らしは好きだ、人間を狩るのも楽しい。攻めて来た帝国兵に自慢のカラシニコフを撃ちまくるのも大好きだ。

ボコボコボコボコボコボコ……

「ふぅーーーー……」マリファナの濃い煙を吐き出す。

甘くフルーティー…喉越しも爽やか…ハイも強い…良いネタだ。

里で作ったマリファナとは思えないグレードだ。それどころかドワーフ族の高級マリファナより良い超ハイグレードだ。異世界でも最新の改良品種マリファナなだけある。

少し前に異世界大麻種子銀行の存在を書物で知り精密召喚で種子を召喚して栽培に成功したのだ。

嫌いだった帝国も崩壊した。アホ勇者も死んだ。

自慢のカラシニコフも好きなだけぶっ放した。

大好きなマリファナもエルフの森で栽培出来るようになった。

帝国の崩壊と勇者の死亡で自暴自棄の人間共がヤクを求め村の景気は最高に良かった。

 


リリアンヌが焼いた大麻クッキーを頬張る…甘くて美味しい。

ボングにマリファナを詰め火をつける…

ボコボコボコボコボコ……

「ふーっ…」煙を吐き出す。またハイが深くなる。

 


「ああ、今日も平和だ…」

 


エルフの森は今日も明日も明後日もラヴ&ピース

 


-END-

おいでよ!エルフの森3!

ここは剣と魔法のファンタジー世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


「なんだと!?私らのシャブが売れねえだと!?」

エルフの集落に甲高い怒号が鳴り響く。この集落の長である彼女は自室に引きこもり覚醒剤をを打ってから叫び声を上げた。

そんな彼女が激怒している原因は目の前にいる客人にあった。汚い格好をした怪しい人物。ようはヤク中の売人だ。

「えぇ……残念ながら薬は売れませんね。そもそも貴方達が売っているモノって本当に合法ですか?」

「うるせぇ!!非合法に決まってんだろ!?シャブだぞ!?合法な訳あるか!!」

そう言って長は【ビタミンC】とラベルが貼られた遮光瓶を取り出す。中には袋に小分けされた白い粉が出てくる。これが俗に言う覚醒剤である。正確にはメタンフェタミンと呼ばれる物質だ。

「これ違法ですよね?なんでこんな物作っちゃったんです??」男は呆れた様子でため息をつく。

「あぁん!?テメェ舐めてんじゃねぇぞ!ブッ殺すぞ!」ただでさえ沸点の低い村長は数分前にポンプでシャブを注射したばかりだった。脳内ではドーパミンが暴走しており怒りが収まらなかった。

「いい加減にしてくださいよ……」男は村長の怒りを無視して話を続ける。

「非合法な物は駄目です。私の所には沢山の顧客がいるんですよ。彼らに迷惑をかけないでもらえますかね?」彼は合法ドラッグ屋だった。

よく勘違いされているが薬物全てが非合法な訳では無いし、合法だからと安全な訳でも、危険な訳でもない。ようは違法か合法かは単純に法律で区別されているだけで[タダの薬物]だ。

「ふざけやがって……もういい分かったわクソ野郎!!!テメェ!ぶっ殺してやる!!」

村長に限らずエルフは合法ドラッグ脱法ドラッグが嫌いだった。

全ての薬物に貴賎なんて無いと考えているからだ。エルフ達は快楽主義者でありドラッグを愛していた。それを法のよく分からない線引きで、合法か非合法か決められる事に納得がいかなかった。

合法でも危ないドラッグより、非合法でも安全なドラッグをキメた方が幸せだし健康的だ。エルフ族はそんな理由から合法薬物だけ仕入れる『合法ドラッグ屋』は嫌いだった。

特に村長は合法ドラッグ屋を蛇蝎の如く嫌っていた。

そんな村長の前でこの男は堂々と開き直るのだ。ただでさえキレ易い彼女の堪忍袋は木っ端微塵に爆散した。

「おっとっと……。暴力反対ですよ。まぁ私は優しいんで見逃しますがね、うちの店のお客様には貴族様も多く……」

男は喋っている途中に頭部が弾け飛んだ。

村長の愛用のスミス&ウェッソン44マグナムで弾いた結果だ。キレやすい村長は常に44マグナムホローポイント弾を装填しているのだ。弾頭は意図的に鉛を剥き出しにしてあり撃たれたら体内で鉛が弾け飛び木端微塵になる。村長はソレを見ると怒りがスーッと収まり途端に上機嫌になるのだ。

「すまんなぁ〜?私らヤク中エルフ共が悪いんだよぉ〜」

他の村人に戯けて見せる村長。他のエルフもゲラゲラ笑っていた。

「コイツは山に捨てとけ。良い肥料になる」村長は死体の処理を村人に任せシャブのパケ作りを始める。今日はこの後に大事な仕事があった。

「おいリリィー!居るんだろ?」

村長の声に反応して奥の部屋から一人の美少女が現れた。この集落で指折りの美少女リリアンヌ・ルフェーブルだ。

「何でしょうか?お婆さま」彼女は先程まで寝ていたが祖母に起こされ不機嫌そうだ。

「リリィー……リリアンヌ……私はまだババアじゃない。まだ700代だ」

「あら失礼しました」リリアンヌはクスりと笑う。その笑顔を見て村長は満足げだ。

「それでですね……どうしたのですか?」

「いやなに……実は今度結婚する事になったんだ」

「えぇ!?本当ですか!?」

「あぁ……相手は隣村の奴だ。アイツは昔から気の合う男だったんだ。私にゾッコンなんだ」

「それは良かったです!」本当に嬉しそうな顔をしていた。

「そこでだリリアンヌ……結婚式のスピーチを頼めないだろうか?」

「えぇ!?私がですか!?無理ですよぅ……」

「頼むよ。今まで育ててくれた恩もあるだろ?」

「うーん……分かりました。引き受けましょう」「助かるぜ!じゃあお前は新婦の席に座ってくれ」

こうしてエルフの集落では一つの大きな行事が始まろうとしていた。

_____

「と言うわけで皆さんこんにちは。司会進行を務めさせていただきますリリアンヌです。よろしくお願いしますね」

「「ワァアー!!!!!」」

この日の為に作られたレイヴ会場の大型ステージでの上で彼女はマイクを持って立っていた。

エルフ達が見守るレイヴ会場で彼女はウェディングドレスを着ていた。純白の衣装に身を包み彼女は微笑んでいた。その姿は家に籠りシャブを打ち続けた生活で肌は透き通るほど白く、シャブで飯が喉を通らない体は細くスラリとしてまるで天使のように美しかった。

「それでは主役の登場です。ロバートさん入場して下さい!」「はい!」隣村のロバートがステージ袖から出て来る。彼はタキシード姿だが頭にはハットを被っていない。代わりに彼の頭には真っ赤な芥子の花輪が被せられていた。

「村長ジュリエット貴女は新郎のロバートを生涯愛すると誓いますか?」

「あぁ!誓うよ!」「ロバート貴方は新婦のジュリエットを一生愛すると誓いますか?」

「あぁ!勿論だよ!」

「はい!ありがとうございます。では指輪の交換をしてください。まずは村長ジュリエットから」

ジュリエットが向かいロバート左手の薬指に金のリングを嵌める。次にロバートが銀のリングをジュリエットの左の薬指に填めた。

「続いて新婦のジュリエットから、どうぞ!」

ジュリエットが向かい合い、ロバートが彼女のヴェールを持ち上げる。そして、お互いに愛おしそうに見つめ合った。

「病める時も健やかなるときも、死が二人を分かつとも、汝、ロバートを愛する事をここに誓いますか?」

「はい。誓います」

「よし。次はキスだ」二人はゆっくりと唇を重ねた。

「「「キャー!!」」」

 


エルフ達は黄色い歓声を上げた。中には泣いている者も居た。エルフにとって結婚とは神聖な儀式なのだ。

「さて皆様!これからが本番です!!」

『待ってたぞーーーー!!』

『待ちくたびれたわ!!』

『早くしろー!!』

「えー!皆さまも我慢の限界だと思いますのでー!只今からエルフの里結婚式名物のーーーー!!サイケデリック・オールナイト・パーティーを行いたいと思います!お配りしたLSDマジックマッシュルーム!メスカリン!などなど!幻覚ドラッグセットをお楽しみください!!!」

 


 ワーーーー!!

 ウオーーーー!!

エルフ達のボルテージは最骨頂に達した。

会場には他にも覚醒剤マリファナ、コカインなどなどドラッグが一通り揃っていた。これらはエルフ族独特の引き出物だ。ドラッグをやるエルフは殆どがジャンキーなので自分の村で作った薬物を送り合ったりする。「おいお前らぁ〜!今日は楽しむぞぉ〜!」

村長の掛け声と共にエルフ達も叫び出した。

エルフの村は朝まで大騒ぎであった。

エルフの集落に結婚式を挙げてから一週間が経った。

 


ここは森の奥深くにある湖のほとり。

ジャンヌとリリィは仲良く水浴びをしていた。

「なぁ、ジャンヌ聞いてもいいか?」

「はい、なんでしょう?」

「最近、お婆さまの様子が変な気がするのだけど何か知らない?」

「えっ?村長はいつもあんな感じじゃないですか?お酒飲んで、ヤク打って、喧嘩して、ロバートおじさんと殴り合って、時々銃を乱射して 。」

「確かに……言われてみれば……でもなんか違うような……」

「はて?何が違うというのです?村長は村長ですよ」

「ううん……そうなんだけど……」

その時、遠くの方で爆音が聞こえてきた。

「ん?」

「なんだろ……あれは……あっ……また……」

「行ってみましょう」

リリィ慌てて服を着ると爆音の発生源に向かって走り出す。その後ろを慌てて追いかけるジャンヌ。しばらく走るとそこには……

「テメェーら!また来やがったのか!!」

「「「「「「「ヒィイイーーーー!!!」」」」」」」

数人のエルフと村長が人間の男達をボコボコにしていた。

異世界の手榴弾でも使ったのだろう。壊れた馬車とミンチになった身なりの良い人間だった部品が散乱していた。「オラァア!」

「ぐふぅう!?」

村長が倒れた男の一人に馬乗りになって何度も顔面を殴っていた。

「ひぃいい!?」

「逃げるな!!」

殴られている男は逃げようとしたが、村長は銃口を突き付け躊躇なく引き金を引いた。「ぎゃああ!?」

銃弾は男の貫き、地面に倒れ込む。

「ぎゃーーははははははははははははははははははははははははははははは!!」

村長は実に嬉しそうだ。「ははははははははは!!!」

笑いながら彼女は死体を蹴り続ける。

「うっひゃーーー!!あーーー!ははははははははははははははははははははははははははははははは!」

良かった、いつも通りの村長だ。リリアンヌは安堵した。

エルフ族の村長たる者、誰であれ舐めたら殺す。

大方コイツらは肥料になった合法ドラッグ屋の取り巻きだろう。

今さっき肥料になった身なりの良い男は貴族だろう。金蔓だった合法ドラッグ屋が消えて探しに来たのだろう。

村長や他のエルフ達も死体蹴りに飽きた様でジャンヌもパイプでマリファナを吸っている。掃除屋さんは肥料を回収しコカの木を植林する予定の山に持って行った。「はぁあ〜これすっごい良い…」ジャンヌが煙を吐き出しながら独り言を呟く。

村長はブツブツ言いながら、木箱に入った大量のシャブを取り出し、1袋づつ丁寧にチェックしている。売人が買いに来るのだろう。「あぁシャブが足りねぇな……」

「はぁあ?あれだけ作ったのに、まだ足りないんですか?」

「だってよぉ〜この前の奴らが大量に買って行ってな。在庫が切れそうだ」

エルフ族に限った事では無いが売人同士の約束は絶対だ。1g少なくても許されず、取引に1秒遅れても許されない。ルールを破ぶれば即射殺である。「はぁ……じゃあ私、工場へ行って来るよ」

「おう!頼んだ」

村長はリリアンヌを指差して言った。

「ついでにリリィも連れて行け」

「分かりました…ほら行くぞ!リリィ!」

「行ってくるね!お婆さま!」

ジャンヌは楽しそうに森の中を走り抜ける。エルフの薬物製造工場ではシャブ以外にも色々なヤクを製造していた。

そういえばこの間マリファナの収穫祭があった。お目当ては大麻樹脂だろう。喫煙に適さない部位でも樹脂がたっぷりと付いている、工場では端材を篩にかけて樹脂を集めるのだ。集まった樹脂はプレスで硬め黒茶色の美しいハシシの完成だ。ジャンヌとリリアンヌは工場のドアを開ける。

中ではエルフ達が様々な作業をしていた。

「皆さんこんにちわ〜」

エルフ達は手を振ってくれた。「おおジャンヌか」「リリィちゃん今日も可愛いわ」エルフ達の挨拶に応えつつ、ジャンヌは工場へ来た目的を思い出した。

「村長の頼まれてシャブを取りに来たの」ジャンヌは山積みになっているシャブの袋を漁り始めた。

「あった!これが欲しいの!」

「あいよ!」

壮年のエルフはシャブの袋を手際よく渡す。

「ありがと!」

ジャンヌは笑顔で言う。

「どういたしまして、また来てくれよ!あ、そうだジャンヌ。これはお土産だ。」

そう言って黒くて艶のある黒いボールをジャンヌに手渡す。

出来立てのシザーハシシだ……!

マリファナは葉っぱを吸う訳ではない。受粉させずに開花させた雌株の花弁を吸うのだ。邪魔な葉っぱを丁寧にハサミで切り取り整形し乾燥させる。その作業で大麻の樹脂が手やハサミに付きベタベタになる。ハサミにこびり付いた樹脂を集めた物がシザーハシシ…

とても純度が高くキマりも重い、辛いトリミング作業のご褒美で各自自分が集めたシザーハシシは持ち帰る事が許可されていた。

なかなか出回らない高級ハシシ…しかも新鮮で鮮度抜群とくれば……『ゴクリッ』アル中の私でも思わず唾液が口から滲み出る。

「ありがとう!大切に吸う!!また取りに来るから!!」

ジャンヌは満面の笑みを浮かべる。

「ああ!待ってるぜ!気をつけて帰れよ」

ジャンヌとリリィは工場を出て森を駆ける。

「やった!やった!!ついに手に入れた!!」ジャンヌのテンションが上がりっぱなしだ。

「まさか本当に貰えるとは…」

「え?なんの話?」

「いえ、なんでもないぞ!」

「ふーん」

そんな会話をしながら二人は村に戻った。

「ただいま!」

「おかえりなさい!」

ジャンヌが村長の家に戻ると早速シャブの袋を渡す。「はい!コレ!」

「おう、サンキュー」

 


袋を受け取ると村長は中身を確認し始める。

「おぉ!こんなに沢山あるのか!!」

「うん、いっぱい作ってたみたい!」

「そいつはラッキーだな。これだけあれば大丈夫だ!」

ジャンヌはソワソワしている。早く家に帰りたいのだろうな。

「ありがとうな!これはお駄賃だ」村長は私たちに小包みを1袋づつ渡して来た。中身はどうせシャブだろう…..

「ありがとう!お婆ちゃん!」「ありがとうございます」

 


私たちは村長宅を後にした。

 


「早く!早く家に帰ろう!!」ジャンヌは目を輝かせて急かす。

早く吸いたいのだろう…まぁ私も吸いたいのだが…

ジャンヌはリリアンヌの手を引いて急いで自宅に向かった。

「たーだいまーー!!」ジャンヌは誰も無い自宅の扉を元気良く開けると、部屋に飛び込みガサゴソと何かを探している。十中八九パイプだろう。

「ちょっとリリィ手伝ってーーーー!!!」

「はいはい」

私は彼女の探し物を手伝う。

「あった!これこれ!!パイプ!!」

そう言うと彼女はガラスパイプを取り出した。「あれ?これって……」

「あぁ、前に買った奴だよ」以前パイプを買った時に一緒に買ったやつか…

「あれ?ライターどこいったっけ?」

「確か……前使って…テーブルに置いといて……そのままだったような……」

「あぁ〜!またライターが消えた!!」

マリファナがキマると食べ物や音楽に夢中になり疲れて寝てしまう。勿論使ったライターをどこに置いたかなんて思えていないのだ。マリファナ愛煙家はライターを最低でも1ダース単位で召喚する。ジャンヌに至っては5〜10ダースも召喚している。

ジャンヌは立ち上がり、部屋をウロチョロし始めた。

「ねぇ!私のライター知らない!?」

「知りません」

「うぅ……どこにも見当たらないよぉ」

ジャンヌの目は涙ぐみ顔色がどんどん悪くなっていく。

まずいな……この状態でマリファナをキメたらバットトリップするかもしれない。

「私のライターあげるから…」「うぇ〜」泣きながら抱きついてくる……

「仕方ない」

リリアンヌはポケットに入れていたライターを取り出す。

「わーい」

ジャンヌは貰ったハシシをライターで少し炙り柔らかくする。

フルーティーさと香木が混ざった様な良い香りが漂う。

炙ったハシシを指先で千切りパイプに詰めて行く。「じゃ!火をつけるね!」

ジャンヌはハシシを詰めたパイプを口元まで運び、ライターで火を付け吸い込む。「あ!美味しい!!」

ジャンヌは幸せそうな表情をしている。

「良かったな」

「うん!新鮮だからかな?凄く良い!」

ジャンヌがパイプを渡して来る。

パイプを受け取りライターで火を付けながら吸い込む…これは美味い。とてもジューシーな煙だ。重く強烈なボディハイ…久々のストーンだ…

カウチロックしそうな体を動かしパイプをジャンヌに渡す。

「んー!おかわり!」

 


ジャンヌはハシシを更にパイプに詰め火を付け、煙をモクモクと吐き出す…

二人でハシシを吸う。

「はぁ……久しぶりのハシシ……最高!!」

「そうですね」

「はぁ……ボーッとする……お腹も減って来た……」

私も腹が減って仕方がなかった。マリファナを吸うとどうしてもマンチーは起こる。ついでに喉も乾く。

甘いものが食べたくて仕方がなくなる。ジャンヌを引き留めて村の店で食べ物を買っておくべきだった…。酒の摘みでも食うか?酢漬けイカくらいしか無いが…はやり甘いものが食べたい。

「ジャンヌ、何か食べ物は無いのか?」「うーん……パンケーキならあるけど食べる?」

「頂きます」

ジャンヌは台所に行き冷蔵庫からパンケーキを取り出した。

「はい!どうぞ」

「いただきます!!」

バターと蜂蜜をたっぷりかけたパンケーキを頬張る。

「あまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

何だコレは?甘くて重い!だがそれがいい!!!!

マリファナの効果味覚が敏感になっており甘味が何倍にも感じられる。なんて美味さだ!!体に甘みが染み渡る!私は一心不乱にモリモリと貪る。

「そんなに慌てて……そんなにマンチだったの?」

「ああ!コレは病みつきになるな!」

ジャンヌは嬉しそうに微笑む。

「そう言って貰えると嬉しい…」「コレの作り方は教えてくれないか?」

「ううん。これは秘密……」

「そうか……」

私はもう一枚手に取り齧り付く。

「ふふふ……まだ沢山あるの!」ジャンヌは今度はブラウニーを取り出す。「それは?」

「私が作ったお菓子だよ。これも食べて欲しいの」

「ほう……ではご相伴に預かろう」

リリアンヌはブラウニーを口に運ぶ。

噛んだ瞬間、チョコレートの芳ばしさと共にナッツ類特有の香ばしさが広がる。濃厚なのに後味スッキリ、まるで舌ごと溶けてしまいそうだ!!

「これは……!旨いな!!」「本当!?良かった!!」

私は夢中で喰らいつく。

「あぁ……本当に美味い。こんな美味いものは初めてだ」

「そう?喜んでくれてうれしい……」

ジャンヌは照れくさそうに笑う。

「あぁ……素晴らしい……!ありがとうジャンヌ!!」

「えへへ……そう?そう?もっと褒めても良いんだよ?」

ジャンヌは満更でもない様子だ。「あぁ、お前を嫁に欲しい」

「え!?」「冗談です」

ジャンヌは膨れる。可愛らしい。「まったく……」

「ははは……ジャンヌは可愛いな。思わず口に出てしまったよ……」

「そ、それって……プロポーズ?」

「まさか」

ジャンヌは残念そうな顔をする。

そんなくだらないお喋りをしながら『ジャンヌ特製』のお菓子を食べていく。バターたっぷりのパンケーキに、バターたっぷりのブラウニー、バターをふんだんに使った美味しいクッキー。

夢中で食べ続ける…不思議な事にどんどんハイが増している気がする…

夢中で食べ続ける。バターたっぷりの焼き菓子を…

 


まて?バターばっかりじゃないか!まさか!!

「なあ?ジャンヌ…なんで出てくるお菓子がバターたっぷりの焼き菓子ばかりなんだい??」

聞いた途端ジャンヌは腹を抱えて笑い出した。「アハ!気がついた?」

「やはり……はぁ……」

「あはは!バレちゃった?」

「あぁ……ひどいヤツめ……」

ジャンヌはニコニコしながら話し続ける。

「だって、甘いものが食べたいって言うから、甘いものを出しただけじゃない」

「ジャンヌ……君は大麻バターで作った焼き菓子ばかり持って来たな!?」

「あはは!ばれたか!」

「全く、最初からこれが狙いで、買い物もせずに家に戻ったんな?」

「うん!」ジャンヌは悪びれも無く答える。

 


「はぁ……ジャンヌ……君と言うやつは……」

「ねえ?リリィは私のこと嫌いになった?」

「いや、別に……ただ呆れてるだけだ」

「じゃあいいでしょ!」

「はぁ……いい加減にしろ……」

ジャンヌの頭を優しく撫でた。

 


食品に加工した大麻が本格的に効き始めるまで1時間…効果が切れるまで12時間……既に少しハイが増している。これから襲って来るであろう強烈なハイを少し期待しているリリアンヌだった。

 


エルフの森は今日も明日もラヴ&ピース

おいでよ!エルフの森 2!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


「それにしても……」

森を進むこと数時間。私ははずっと気になっていたことを尋ねることにした。

「なんで私がお前の散歩に付き合わなきゃいけないんだ?」

『お腹減ったから』

そう言って歩くエルフの美少女ジャンヌ。重度のマリファナ中毒だ。

歩きながら手に持つ火の付いたジョイントを吸いながら答えるジャンヌ。

マリファナを吸うと味覚が敏感になり強い空腹感を感じる。この状態はマンチーと呼ばれマリファナ愛好家は空腹感を満たす為喫煙前に甘い物やジャンクフードなどを購入しておくものだ。

だが、先ほど無理矢理散歩に誘われたことを考えると食べ物を買い忘れたのだろう。

自分もおつまみが尽きていたしちょうど良かった。そんなことを考えているうちにジャンヌが立ち止まった。どうしたのかと思いつつも黙って後ろについていく私。

しばらくすると少し開けた場所に出た。

そこには地面に掘られた穴があり中からは煙が出ており、周囲には乾燥した葉っぱのようなものが大量に散らばっていた。

恐らく大麻だろう。

これはホットボックスだ。マリファナを密閉した空間で焚き煙を充満させる遊びだ。もちろん全員がキマる。ジャンヌはその中心に立つとこちらを見て言った。

『ねえ、あなたもこれやってよ』………………

『いやぁ楽しかった!やっぱりこれ楽しいね!』

「ああ……そうだな」

結局あの後ノリで一緒にやり始めてしまった。最初は嫌々だったが魅惑的なマリファナの煙には敵わなかった。

それにお土産に沢山のマリファナを貰ってしまった。これだけあれば当分困ることは無いだろう。

「それで?次はどこに行くんだ?」

そろそろ日が落ちてきた。今日中に街へ到着する予定だったのだが予定が遅れてしまうかもしれない。

『んー……じゃあこのまま歩いていこうか?』

「分かった」……ジャンヌのヤツ。キマりすぎだ。時間の間隔がマヒしてやがる。まあいいか……。

------

それからさらに3時間程歩いた頃だろうか。辺りは完全に暗くなり完全に夜になってしまった。しかし一向に街道に出る気配が無い。一体どこまで行くつもりなのかと思っていると突然目の前に大きな洋館が現れた。……なるほど、最初からここへ来るつもりだったのか。

ジャンヌの秘密の隠れ家か。確かに人里離れた森の中だし誰も知らないだろう。ジャンヌは慣れた様子で洋館の扉を開ける。

中に入ると広い部屋に所狭しと喫煙器具が並べられている。

あれ知ってるぞ!?ドワーフ名工が作ったロケットボング!!金貨10枚するやつだろ!?本物か本物だろうな…ジャンヌがマリファナ関連で妥協する事はない。絶対に本物に決まってる。

部屋の奥へ進むと大きな暖炉があった。薪の代わりに大量の乾燥草が置かれている。やはりこれも大麻かな?

そして部屋の中心に置かれたソファーの上に巨大な茶色の塊がある…

これは大麻樹脂か!?10キロはあるぞ!!!……………… そういえば聞いたことがある。エルフの森では昔からマリファナを使った儀式が行われていたらしい。

1キロの大麻樹脂を作るのには100キロの乾燥大麻が必要なはずだ。

10キロ近いなら1トン近い乾燥大麻が必要だが…… 普通に吸えば何ん年持つだろう?

私は酒が多いがマリファナも吸う。1日2-3gくらいか…?それだと50年以上は余裕でもつかな。

そんなことを考えていると奥の部屋からジャンヌが出てきた。

彼女は洋館に着いてから直ぐに風呂に入っていたようで上半身裸のままタオルを肩にかけて出てきた。彼女の肌は雪のように白く透き通っている。胸は大きくはないが形が良い。そしてまるで丸太の様な特大ボングで風呂上がりの一発目を吸い込み始めた。

ボコボコボコボコ……

すごい肺活量だ。

ボコボコボコ………ぶっはぁ〜……

美少女が裸で鼻と口からモクモクと煙を吐き出すシーンは実にシュールな光景だ。アホなのかコイツは?だが、そんな彼女に見惚れていた私の意識はすぐに現実に引き戻された。ジャンヌは私を引っ張っり部屋の奥へ歩いて行った。そこは寝室だった。

部屋の中央にあるダブルベッドは天蓋付きの豪華なもので、そこに寝るように促される。

『さてと、それじゃあ準備を始めようか』…… え?

 


……ジャンヌは黙々とマリファナパーティーの準備を始めた。まずはジョイントを何本も何本も巻き始める、マリファナのラベルが張ってあるガラス瓶を戸棚から数種類取り出しそれをジャンヌ自慢のドワーフ製の高級グラインダーで挽き始める。マリファナを砕き巻き紙の上に載せくるくると器用に巻き端の糊をペロリと舐め貼り付けジョイントが完成する。何本も何本も巻く。これで10本目か?

「おい、ジャンヌ……まさかとは思うが……」『うん、そのまさかさ!これから一緒にキメちゃおっか!!』

ジャンヌが満面の笑みを浮かべ言う。

いやいやいやいや、冗談じゃない!!! そんな事したら死ぬだろ! いや、マリファナで死ねるわけない!マリファナの致死量は推定700キロだ。死なないが死なないが… !

「あ、そうだ。忘れてた」

そう言ってタンスからナニカ取り出す。壺に大きな火皿があり長い長いホースが付いている。

シーシャだな。砂漠の国で使われてる水タバコを吸うやつだ。1時間くらい吸える大容量…

それでマリファナを吸うつもりか?「待ってくれ、それはちょっとキツイ」『大丈夫だって!気持ちいいよ!』

ジャンヌが笑顔で言う。いや、そういう問題じゃなくて。

『はい!どうぞ!』…… 無理矢理パイプを口にねじ込まれた。

『ほら吸って!』…… 言われる。

 


ボコボコボコ…ボコボコ………

 


むっはぁーーーーーっ!!たまらん!!!!!!

「んぐぅ……!!」

『どう?美味しい?』…… コクコクと無言で首を縦に振る……

『ふふん♪そうだろそうだろぉーーーーーーーーーーーー!?』

ジャンヌがドヤ顔で叫ぶ。

マリファナは最高だろ!!これだからやめられねぇんだよなぁーーー!!!』

ジャンヌが笑いながらマリファナをふかし続ける。

もうこうなったジャンヌを止める術は無い。

観念して一緒にキマることにした。

ああ……なんて甘美なんだ…… これは良いマリファナだ。

「上物じゃないか!こんな良いネタどうしたんだ?高かっただろう?」

またジャンヌが借金でもしたのでは無いかと心配になる。

この間王国にヘロインを一緒に密輸して借金を返済したばかりじゃないか…

「ふっふっふー♪良いネタでしょう?」

ジャンヌが自慢げに胸を張る。

「まあな……それでいくらで買ったんだ?金貨20枚位か?」不安だ…

「まさか?私が育てたのよ!」

なんだと!?こんなハイグレードなマリファナを!?

驚きつつもジャンヌがジョイントを回して来る。改めて一服パフする。美味い。フルーティーで味が濃い。でも喉越しも良い。ハイも良い。どっしり来るボディハイと強めのヘッドバズ。ここまで良いネタはなかなか無い。王都なら1グラム銀貨5枚、帝国なら小金貨1枚でも売れるだろう。

エルフの村ならそもそも出てこないだろう。みんなクソネタでも吸うし、いつも吸ってるせいでクソネタばかり出回る。

なるほど、これなら秘密の隠れ家が必要だ…… ジャンヌの作ったマリファナを一緒に吸引する…

これは……凄いな…… 身体がベッドに沈む…… そして…… 頭が真っ白になって行く…… 何も考えられなくなるヘッドハイ…… ジャンヌはニヤッと笑うとジョイントを回す速度を上げた。ジョイントを受け取り3パフしジャンヌに回す。ジャンヌは嬉々としてマリファナをふかしている。

「実はこの館で育ててるんだけど……」

なんだと!?ここで育ててるのか!?どうやって?

マリファナの栽培には日射量が多くなければ育ち難いはずだ。ドワーフ達は日射量の多い山を切り開いて育ててるのは有名だ。

この辺りは樹木が高く森の中でも特に日差しが届かず薄暗い地域だ。苔ぐらいしか育たない。ろくな植物も育たずエルフ達も近寄らない。

 


そんな場所でマリファナを育てているだと? どういうことだ?

「それじゃあ種明かしをしようか……」

ジャンヌはそう言うとジョイントをふかしながら廊下へ向かって歩いて行く。私もマリファナを吸いながらその後を追う。

ジャンヌは奥の部屋に入って行った。そこはキッチンだった。

キッチンの奥に進むと床に小さな入り口がある。

「食糧庫か」「そうよ」

昔書物で読んだことがある。冬が厳しい地域では地下室を作り、中に一冬分の食糧を保管するのだとか…それがこれか?

しかし余計わからん。マリファナの栽培の話と地下室の話が繋がらない。ジャンヌの頭が壊れたのか?元からか…ジャンヌが地下室へ降りて行く…私も後を追って階段を降りる。

明るい?地下室が明るい。

私は驚いた。地下室に降りると太陽の様に光を放つ板が天井から吊り下げられてる。そしてその光る板の下にズラリと並ぶマリファナの植木鉢。

「すごい……」思わず声が出た。

「ふふん?どう?びっくりした?地下でマリファナ栽培をしてるの。日光無くても植物って育つのよ?外の畑と比べて虫も付かないわ」

ジャンヌが得意気に言う。確かに、よく見るとどれも元気に育っている。

「植物の葉はね、太陽の光じゃ無くても育つの。勿論マリファナも」

この光は何だろうか?見たことが無い。「これは召喚魔法で異世界から召喚したの。太陽光と同じ力を持っていて、常に光を出す異世界のアイテムらしいの」

よくわからないけど…と少しだけ恥ずかしそう付け加える。

やはり異世界の道具だったか…異世界から召喚されるアイテム高性能な物ばかり。だが使い道も分からない謎な物も多い。

ジャンヌがこれだけ隠す理由も分かる。これはバレたらただでは済むまい。里のジャンキーが知ったら収穫したマリファナは一晩で煙にされるだろう。

手間暇かける理由もある。これ程のマリファナだ、もし買えば白金貨10枚か15枚か…?想像が付かない金額だ。

「ふっふっふ♪」そう言って嬉しそうに新しいジョイントに火を付ける。

「さぁ!続きをキメよう♪」ジャンヌは楽しそうだ。

「そうだな!キマろう!」『イェーイ!』

 


二人のパーティーはまだ始まったばかりだ……

 


エルフの森は今日も明日もラヴ&ピース

 


〜END〜

おいでよ!エルフの森!

ここは剣と魔法のファンタジーの世界にあるエルフの森。

 


その昔、エルフは人間よりも優れた魔法技術を持っていたのだが、邪悪な魔王の手によって重度のジャンキーになる呪いをかけられてしまい、今では見る影もない。

 


「ふぅ……今日も疲れたぜ!」

 


そんなエルフの村の中で、一人の美少女エルフが芋焼酎を茶碗で飲み干しながら言った。彼女の名前は、リリアンヌ・ルフェーブル。

 


銀色の長い髪に青い瞳をした彼女は、このエルフたちのまとめ役である長老の孫娘だ。

 


彼女の趣味は『競馬新聞を読みながら酒を飲むこと』というとても残念な趣味の持ち主であり、そのせいか見た目こそ美しい女性なのに彼氏いない歴=年齢という悲しい現実を叩きつけてくる存在でもある。

 


ちなみにエルフは長命種なので、恋愛経験がない者は結構多い。

 


「ああ~! 明日からまた仕事なんてやってらんねぇよ」

 


リリアンヌはそう言って酒をグイッグイッっと呑み下す。するとリリアンヌの隣に座っていた金髪碧眼の美女が、彼女に言う。

 


「あんまり呑むんじゃねえよ、明日も朝から現場の見回りがあるんだかららな?」

 


彼女の名はジャンヌ・ダルク

 


病的な色の長い髪をした彼女もまたリリアンヌと同じ重度の薬物中毒にされる呪いを掛けられていた。しかしリリアンヌとは違い、性格は不真面目であるため、今の状況をなんとかしようと日々マリファナで現実逃避をするだけであった。

 


だがそれでも今の状況は改善されず、毎日のように増えるマリファナ代の借金から逃げるばかりであった。「えー? いいじゃねえかよ~。どうせ明日は休みなんだしよぉ……」

 


リリアンヌはそう言いつつ、焼酎のお代わりを要求している。ジャンヌは呆れつつも、しょうがなく追加の焼酎を入れてやるのだった。

 


注がれた焼酎を愛おしそうに呑むリリアンヌを横目に見ながらジャンヌはパケを懐から取り出す。

 


「上物だぜ?」嬉しそうに見せつけるジャンヌ。少量を取り出しドワーフ国製の高級グラインダーで細かく砕く。砕いたマリファナを薄い巻紙の上に置き器用な指使いでぐるぐると巻き上げる。巻き紙の端の糊を器用に舌でペロリと舐め完成だ。

 


完成したジョイントを口に咥え、火を付けゆっくりと紫煙を吸い込み、数秒息を止めてから吐き出す。

 


「あぁ……幸せ」

 


そうしてジャンヌはうっとりとした表情のまま、ジョイントを吸っていく。その様子を見て、リリアンヌは苦笑いするしかなかった。

 


(こいつには勝てないわ)

 


ジャンヌは薬中なのだ。好きな物はマリファナだった。

 


ジャンヌはマリファナを販売しているドワーフ族の売人と懇意になり、マリファナを入手していたのだ。

 


エルフもマリファナを育てているが、エルフはケミカル系の幻覚剤が好きな者が多くマリファナのグレードが低かった。そのためジャンヌのようなヘビースモーカーにとって最高の嗜好品を入手することは出来なかった。ジャンヌは毎日のようにドワーフからマリファナを購入していた。

 


「それで明日の仕事は何だよ……って聞いてるのか?」

 


「んっ? ああ聞いてるぞ、私達の畑を見回るんだろ?」ジャンヌの言葉にリリアンヌはため息をつく。

 


「ちげぇよ、明日の祭りの準備の話だって」

 


「ああそれね」

 


エルフの森では年に一回大きな祭りが行われていた。それは森の外の街との交流会でもあった。街の兵士たちは森の奥深くまで入ってこれないのでやりたい放題ドラッグをキメる年に一度の一大イベントだ。

 


エルフ達の愛してやまないLSDマジックマッシュルーム、メスカリンなどの幻覚薬物を村の外から仕入れる一大イベントだ。この祭り逃すと冬を楽しく越せないので皆必死だ。「今年はどんなブツが来るかな〜」

 


「お前はいつもそればっかりだな」

 


「楽しみなのは当たり前だろうが!」

 


「はいはい」

 


リリアンヌはそう言って芋焼酎を一口飲む。「あれ? なんか甘い匂いがしないか?」

 


「ああ、さっきマリファナの葉っぱ入れたからな」

 


「ああ! なるほど!」

 


二人は同時に、ズズーッと音を立てて焼酎を飲む。

 


「でもよ、そんなに沢山マリファナ持って来て大丈夫なのかよ?」

 


「安心しろ、まとめて買ったから安かったからな」

 


「なら良いけどよ」

 


そう言って二人は笑った。マリファナが効いているのか笑いが止まらなかった。「はははははは!」

 


「はーはははははは!!」

 


二人とも完全に出来上がっていた。

 


「おい、ジャンヌ。そろそろ寝ようぜ」

 


「そうだな、もう遅いしな」

 


そう言ってリリアンヌはロヒプノールを、ジャンヌはケタミンを取り出した。「今日はこれにしとくか」お互い粉状にした睡眠薬ケタミンを鏡の上に乗せてストローで鼻から吸った。

 

 

 

「ああ、お休みなさい」

 


「おう、お疲れ様」

 


そう言ってリリアンヌは部屋の電気を消した。

 


暗い部屋の中で、ジャンヌは楽しげに笑う。

 


「明日は祭りだからな、楽しみにしてなよ」

 


そう言って彼女は目を閉じた。

 

 

 

翌日、朝早くに起きたジャンヌは朝食を済ませて準備を始める。

 


「ジャンヌさん、おはようございます。相変わらず早いですね」

 


宿屋の女将であるマチルダが声を掛けてきた。ジャンヌとは顔見知りであり、気安い仲であった。「まあな、それより頼んでおいたものはできたか?」

 


「もちろんですよ。はい、こちらです」

 


そう言うとマチルダはジャンヌに麻袋を渡した。中には大量の錠剤が詰まっていた。一つパケを開き中の錠剤を覗く。エルフの里で合成したMDMAだ

 


「おおー、結構あるじゃないか。助かるぜ」「上物でしょう?」

 


「違いねぇ」

 


ジャンヌはクスリと笑って麻袋を受け取る。

 


「じゃあな、また頼むわ」

 


「ええ、ご贔屓にお願いします」ジャンヌは荷物をまとめて宿を出る。その足取りは軽く、これから起こる祭りへの期待感が見て取れた。

 


「ふぅ……」

 


ジャンヌは街を出て森の中へと入っていく。木々の間を縫うように進んでいくと、ぽつんとした小さな広場に出た。そこだけ木が無く開けた。特設のレイヴ会場だ。

 

 

 

ジャンヌは少し考えてから、パケを手に取る。

 


「今日の気分は……これだな」

 


ジャンヌはそう呟くと、懐から巻紙とパケ取り出し、巻き紙にマリファナを落とす。くるくると器用に巻き上がりジャンヌ特製のパーティー用の太巻きジョイントの完成だ。

 


先端に火をつけてゆっくりと吸ってみる。

 


「ああ〜〜」

 


久方ぶりのサティバ独特のヘッドハイ感覚にジャンヌはうっとりとする。

 


(ああ、幸せ)

 


ジャンヌは夢中になってマリファナを楽しむ。

 

 

 

「ああ……いいね、最高だ」

 


しばらくすると頭が冴えて来る。脳みそはクリアになり、意識ははっきりしてくる。

 


「よし、始めるか」

 


ジャンヌは目の前にある草むらを見る。そこには小さな妖精族が隠れていた。

 


ジャンヌは彼女達が売人であると気づいた。

 


二人の少女を二往復する。そして目線を合わせる。

 


「あのぉ、私達に何か?」

 


「うん? 『あるかい?』」

 


「何でもあるよ。」

 


「ほほう、じゃあお前らのオススメを教えてくれ。お前らみたいな奴らは大抵のヤクを持ってるからな、そこから選ぼうと思ってな」

 


「ああ、そういうことですか。」

 


そう言って二人はクスッ笑った。ジャンヌは怪しげな顔をしたが、気にせずに話を続ける。

 


「最近だとどんなものが流行っているんだ?」

 


「うーん、ここ最近はコカインやシャブが人気かな?昔ながらのマリファナも人気だよ。」

 


「へぇ、そんなに売れてるのか?」

 


「ええ、そりゃもう入荷したら即品切れよ」

 


「そうか、ならマリファナを1オンス貰おう」

 


「毎度ありぃ」

 


ジャンヌは金を払いマリファナを手に入れる。

 


「これでしばらくは大丈夫だろう」

 

 

 

そう言ってジャンヌは笑った。

 


「お姉ちゃん、こっちだ!」他の売人からも声がかかる

 


「はいはい、今行くから待ってて」

 


そう言って人間の青年ははジャンヌに声をかけた。MDMAの取引の約束があったからだ。

 


「それじゃ、またよろしくね」

 


「ああ、こちらこそ」

 


そう言ってジャンヌはその場を後にした。

 


ジャンヌは満足げに帰路につく。その手には大量の大麻を持ち、懐はMDMAの販売で暖かい。ジャンヌにとって今の暮らしはまさに天職だった。

 


エルフの里で薬物を売っているのは何もジャンヌだけではない。

 


むしろ里では合法的に、積極的に薬物を売り捌いている。エルフは人間よりも遥かに長寿であり、そして長命であるが故に娯楽に飢えている。

 


そんな彼らに麻薬を卸す。これほど儲かる仕事は無い。

 


ジャンヌはニヤリと笑う。

 


(明日は何を売るか……ヘロインはもう売れないしな、次はシャブでも売りつけるか?)

 


そう思いジャンヌは家路についた。

 


「ただいま〜」

 


扉を開けると明かりがついていない。寝静まっているのだろうか。

 


「おい、帰ったぞ」

 


返事はない。

 


ジャンヌは居間へと向かう。そこにはソファーで死んだように眠るリリアンヌ。

 


「なんだ、まだ寝てたのか」ジャンヌは呆れた表情を浮かべた。

 


「まったく、しょうがないな……」

 


ジャンヌはリリアンヌの頭を優しく撫でる。よしよしと何度も優しく撫で続ける。

 


しばらくするとリリアンヌが目を覚ました。

 


「うーん……あれ?ジャンヌ?」

 


「おはよう、リリィ。よく眠れたか?」

 


「ぐっすり寝た。ジャンヌお帰り。遅かったな?」

 


「まあな、ちょっと大きな取引があってな。」

 


ジャンヌは答えた。

 


「そうだ、良いニュースがあるんだが聞きたいか?」

 


「え!?本当!?ぜひ聞かせてくれ!」

 


リリアンヌは飛び起きた。

 


「MDMAが全部売れたんだ!」「おお!すごいじゃないか!!」

 


「ああ、この調子でどんどん売っていくからな」

 


「頼んだぞ!」

 


ジャンヌは大笑いする。

 


「ハッハ、任せとけ」

 


ジャンヌは自信満々に胸を張る。ジャンヌは幸福な煙に包まれていた。今日買ったネタは上物だった。

 


(ああ、幸せってこういう事を言うのね)

 


ジョイント咥えたジャンヌはそう思った。

 

 

 

次の日の朝、ジャンヌはいつものようにブラブラと里を散策する。

 


森に入ると、広場に出た。

 


そこに見慣れない店がある事に気づいた。

 


一人の若い男が店番をしているようだ。

 


「お前誰だ?」

 


男は顔を上げてジャンヌを見る。

 


「いらっしゃい……」

 


「ここは何屋なんだ??」

 


「喫煙具屋だよ」

 


「へぇ、何が売ってる?」

 


「ボングや水パイプ。普通のパイプや巻き紙さ」

 


「ほほう、丁度愛用のボングが割れてたな。1つくれ」

 


「毎度!」そう言ってジャンヌはガラス製のボングを1つ購入した。

 


ジャンヌは新しいボングで早速マリファナを吸いたくなった。

 


家に帰ったジャンヌは戸棚からガラス瓶を出し中からバッズを取り出す、グラインダーで砕く。砕いたバッズをボングの火皿に詰めて火を付ける。

 


ボコボコボコボコ……

 


ジャンヌは深く息を吸う。そしてゆっくりと吐く。

 


鼻腔をくすぐるフルーティーな香り。心地よい浮遊感。

 


もう一服して、ふぅっと大きく白い煙を吐き出す。「これが私の人生」

 


ジャンヌは満足げに笑った。

 


「あぁ、最高だわ。さすがハイグレード……」

 


ジャンヌは幸せなハイの煙の中にいた。

 


コンコン

 


「ジャンヌ?いるの?」

 


「ん?どうした?リリアンヌ?酒でも切れたのか?」「違うよ、もうすぐ狩りの時間だよ」

 


「ああ、そういえばそうだったな。忘れてた!今行くから待ってくれ!」

 


ジャンヌは慌てて着替えを始めた。

 


「待たせたな」

 


ジャンヌはマリファナの副作用で真っ赤な目で現れた。「いや、別にいいけど……大丈夫か?」

 


リリアンヌは心配そうに尋ねる。

 


「ああ、全然問題無い。ちょっと吸ってただけだ。」

 


ジャンヌはマリファナの臭いを振りまきながら答えた。

 


「そっか、なら行こうか」

 


二人は獲物を求めて歩き出した。

 


ジャンヌ達が住むエルフの里ではキノコ採取が盛んである。

 


里の近くにはマジックマッシュルームが生息しているため、重要な幻覚キノコの供給源となっているからだ。

 


今日も幻覚キノコが沢山取れた。二人で手分けをしても十分な取り分だ、ジャンヌはナイフを使って採集した。

 


マジックマッシュルームは乾燥させ薬効成分が失われ無いよう出来るだけ新鮮なうちに乾燥させなければならない

 


そのためには素早く大量に採集する必要がある。

 


二人とも大量のマジックマッシュルームを抱えて家路についた。

 


リリアンヌは家に帰ってから、今日の収穫の整理をする。

 


ジャンヌは居間のソファーで横になる。

 


しばらくするとリリアンヌに声をかけられた。

 


ジャンヌはリリアンヌの方へ行く。

 


リリアンヌは瓶に入った緑色の液体を差し出してきた。

 


アブサン酒だ。ジャンヌは受け取ると一気に飲み干す。

 


苦味とハーブのような香りが広がる。

 


口の中が火傷しそうな度数のアルコールがジャンヌの喉を通り抜ける。

 


(この一杯のために生きている。)

 


ジャンヌはそう思った。

 


リリアンヌはそんな様子のジャンヌを見て微笑む。

 


リリアンヌは居間を後にし、寝室へと戻った。

 


しばらくすると寝巻き姿のままリリアンヌが現れた。その手には何も持っていない。「おい、リリアンヌ……まさかとは思うが……」

 


「うん、お察しの通りだよ」

 


リリアンヌは妖艶な笑みを浮かべる。

 


「ああ、分かったよ。」

 


ジャンヌはそう言うと戸棚からLSDを1枚取り出した。「準備するからちょっと待ってろ」

 


ジャンヌは部屋に戻ると、リリアンヌと共にLSDを口に入れ舌下に置いた。

 


1時間ほど経つと視界が歪み、光が曲がり、時間の間隔が無くなり、自分と宇宙が混ざり合った。ジャンヌはバッドに入らないように、必死に堪える。

過去と未来が混ざり合った。光り輝く過去の自分が見える気がした。やがて気分は最骨頂に達してベッドの上でピョンピョン跳ねた。目の前にある枕が大きく口を開けていた。窓の外は凄い勢いで昼夜が何日も過ぎ去っていった。意識を向けるとそこは宇宙だった。サイケデリックの世界に再び入った。二人はトリップを楽しんだ。

 

 

 

いつの間にか朝になっていた。

 


部屋の床にはマリファナの吸殻や空のパケが落ちている。窓の外からは小鳥たちのさえずりと村人の声が聞こえる。

 


隣を見るとリリアンヌはいなかった。

 


ジャンヌはまだ疲れの残る体を無理やり起こす。テーブルの上に置かれた手紙を見つける。

 


マリファナが欲しかったら来てね』

 


「ふっ」

 


ジャンヌは笑い声を上げた。

 


ジャンヌは外に出ると村の中心部へ向かう。

 


途中すれ違った村民から話しかけられる。

 


「おはようございます」

 


「おう」

 


「今年のキノコはどうですか?」

 


「まあまあかな」村人の瞳孔は開き切っていた。「あんまり食べ過ぎない方がいいぞ」

 


「そうですかね?」村人は嬉しそうな顔をして去っていく。

 


ジャンヌは目的地に着く。

 


そこは村長宅の裏手にあった。

 


そこにはマジックマッシュルーム大麻の栽培所があった。

 


エルフ達は定期的に栽培所に集まり、収穫物の確認を行うのだ。中には数人のエルフがいた。

 


「おお、来たかジャンヌ」

 


村長が出迎えてくれた。

 


「どうも、昨日のキノコどうでした?」

 


ジャンヌはマジックマッシュルームのことを聞いてみた。

 


「最高だったぜ!お前さんもどうだい?」

 


「いえ、私はは遠慮します。昨日キメたばかりなので。」「そうかじゃあまた後でな!」

 


村長は他のエルフの元に行く。

 


「どうだ?捗っているか?」

 


「ええ、順調ですよ」

 


エルフたちはマジックマッシュルームを栽培している。

 


マジックマッシュルームはその性質上、エルフ達の住む密林の中の物が最高級品されている。成分のシロシンやシロシビンの保有量が多く上物が栽培できるのだ。また、里の周りに生えている精神作用のある植物も薬効成分の含有率が高いため重宝していた。

 


収穫量は年々増えており、エルフの里では様々な種類のドラッグが栽培されていた。

 


ジャンヌは彼らの仕事ぶりを横目にしながら奥へと進む。

 


一番大きな小屋に入る。中に入ると一人のエルフが作業をしていた。彼はジャンヌの姿を見るなり顔を上げニヤッとした。

 


「よう!ジャンヌ今日は何にするんだい?」

 


「そうだな……」ジャンヌは少し考える素振りを見せたあと、小瓶を手に取ると彼に渡す。中のはドロドロの液体が入っている。ペヨーテだ。

 


「これなんかいいんじゃないか?」「これは何に使うんですかい?」

 


「ペヨーテさ、幻覚サボテンをすり潰した物だ。」「へぇーこれがねぇ」

 


エルフは瓶を少し見つめて一気に飲み下す。

 


彼の顔が青ざめていく。そして、次第に笑顔になる。「こいつは良い、光が輝いて見えるぜ!」

 


「だろう?私ももこいつが好きだ。」

 


ジャンヌは思わず嬉しくなる。このペヨーテはジャンヌが手塩にかけて育てたサボテンだ。成長まで30年掛かった努力の逸品だ。「ところでジャンヌ、例の話だが。」

 


エルフは神妙な面持ちでジャンヌに語りかける。

 


「ああ、そっちはどんな具合なんだい?」ジャンヌは答える。

 


「こっちは準備万端、いつでも始めれるよ。」「そうか……私達ももうすぐ準備ができる。」

 


「ああ、楽しみだよ。」

 


ジャンヌは笑みを浮かべながら答えた。

 


その時遠くから声が聞こえた。

 


「大変だあ!!ジャンヌ!!」

 


村長だった。

 


ジャンヌは駆け足で向かう。「どうしました!?」

 


「人間が攻めてきた!」

 


「人間?どこの連中で……まさかあのクソ野郎共が来やがったのか!」

 


「くっそぉおおお!間に合わねえ!」

 


ジャンヌは拳を強く握り締める。

 


「まだ諦めるな!芥子畑を守るんだ!!」

 


エルフの森の外貨獲得手段は少ない。芥子から精製されるヘロインは貴重な外貨獲得資源だった。そのため、芥子を栽培する農園の存在は重要だった。

 


「分かりました!すぐに向かいます!」

 


ジャンヌは踵を返す。自宅に戻りマジックポーチを掴む。

 


「村長!案内してくれ、私が相手になろう。」

 


村長は力強く肯いた。

 


「頼んだよジャンヌ!」ジャンヌ達は走り出す。

 


(必ず守る!)

 


その決意がジャンヌの心を支配していた。

 


村を出てしばらく走る。

 


森の入り口が見える。

 


そこには人間の軍が陣を張っている。数は500ほどだろうか。

 


ジャンヌは立ち止まる。

 


目を閉じ深呼吸をする。

 


意識を覚醒させようと決意する。ジャンヌはマジックポーチから小さなパケを取り出した。シャブである。

 


パケを破り耳かきで少量のシャブを取り出し愛用の手鏡に置き闇ギルドのギルドカードで細かく潰しラインを引く。丸めた100ゴルド紙幣で鼻から吸う。

 


ジャンヌの意識が一瞬で覚醒した。目を開きマジックポーチから銃を取り出す。

 


エルフの秘宝たる黒鉄の魔導兵器、扱いやすく、乱暴に扱っても壊れないの優れた異世界の武器である。

 


ジャンヌは数々の修羅場をぐぐり抜けるためにこの銃を使っている。

 


ジャンヌはセーフティを解除する。エルフのみが使える特殊な召喚魔法のお蔭で村では様々な物品を異世界から取り寄せている。その中でも飛び切り凶悪なものがこの銃だ。ジャンヌはこの武器の名前を知っていた。アブトマット・カラシニコフと言うらしい。

 


アブトマットとは異世界の言葉で『連射式の銃』の意単語でありジャンヌの愛用の銃を表している。

 


ジャンヌが銃を構えると兵士が一斉にこちらを見る。ジャンヌの姿を見て動揺が走る。エルフは薬物中毒者だらけの社会で生きている、その事実が兵士の恐怖心を揺さぶる。

 


兵士はジャンヌを指差し叫ぶ。「魔女だ!」「悪魔だ!」「ドラッグクィーンだ!」

 


兵士たちが騒ぎ出す。ジャンヌはニヤリと笑うと引き金を引いた。

 


3発の乾いた音が響き渡る。

 


その銃弾は全て兵士に命中していた。ジャンヌはそのまましゃがみ込みストックを肩に当て狙いを取る。兵たちがどよめく。止まらない発砲音が続く。

 


ジャンヌは素早くマガジンを交換する。そしてまた発砲。

 


この行為には二つの意味がある。一つは逃げる敵への威嚇射撃、もう一つは自分が殺したという快感を得るため。

 


マガジンが空になった。ジャンヌはスライドストップを解除しスライドオープンにする。そして装填されていた最後の一発を撃ち込んだ。

 


再び轟音が鳴り響く。弾丸は兵士達を貫いていった。

 


ジャンヌは立ち上がり振り返りながら言う。

 


「私は魔女じゃない、エルフだ!!!」

 


そう言い残し、その場を去った。

 

 

 

その頃、エルフの里は大混乱に陥っていた。人間が攻め込んできたのだ。

 


エルフたちは銃器を手に取ると、弾丸を込めて銃を放つ。

 


しかし、人間達は恐れることなく突っ込んでくる。

 


「怯むなぁああああ!!」「やっちまえぇええ!」

 


人間達が雄叫びを上げる。

 


エルフ達の使う銃器は異世界製の武器で破壊力がある。威力も高く連射も出来る。兵士たちは破裂したり四肢がバラバラになった。それでも人間達は全く引く様子を見せない。

 


エルフは戦慄していた。

 


「化け物め……」

 


エルフの一人が呟く。

 


その時一人の人間が叫んだ。「俺は勇者だぞ!お前らは降伏しろ!」

 


すると周りの人間が呼応する。

 


「うるせえ!!死ね!!」リリアンヌが『スティンガー』と呼ばれる大型魔道兵器を放つ。

 


ロックオンされたミサイルはマッハ2.2の速度で勇者を文字通り消滅させた。

 


「黙れクソボケがァア!!」ジャンヌは『スナイパーライフル』と呼ばれる狙撃用の銃で的確に敵の頭を打ち抜いていた。

 


「ひぃいい!?」

 


人間の兵士たちは震え上がる。

 


「なんだあのバケモノ共は……!?」

 


一方的な殺戮に兵士達はなす術が無かった。

 


兵士たち走り去るのを見たエルフ達は勝鬨を上げる。

 


「我らの勝利じゃあ!!!」

 


エルフたちの勝利宣言と共に歓声が上がる。

 


里の中央広場で宴会が始まった。

 


エルフにとって薬は酒の一種、エルフにとっては大麻など日常茶飯事である。

 


アルコール摂取量が世界一多いのがエルフなのだ。

 


エルフ達は酒をガブ飲みし、シャブでを打ち、コカインを吸い、マリファナで酔いしれた。エルフたちにとってこれが当たり前。だから今日もいつも通りだった。

 


しかし、今日のエルフは一味違った。

 


宴の中心にいたのはリリアンヌとジャンヌであった。

 


二人はまるで泥酔しているかのようにフラついていた。

 


そんな二人を見てエルフたちが心配する。「どうしたんじゃ?体調が悪いのか?」

 


ジャンヌが答える。

 


「ヤクが効きすぎてるだけだ……」

 


「そうかそうか……ジャンヌ大丈夫か?」

 


「俺はまだいけるぜ……それより、みんな聞け!」

 


ジャンヌが声を張り上げる。

 


エルフ全員が注目する。

 


「俺たちエルフがこんな情けないザマで良いと思ってんのか!?テメエらシャキッとしやがれッ!!!」

 


エルフが立ち上がる。

 


エルフの里のエルフ全員の声が重なる。

 


「そうだぁああ!!!!」

 


ジャンヌが叫ぶ。

 


「エルフはドラッグ漬けなんかで終わらねえ!!ドラッグ依存から抜け出してやるんだ!!その為にもまずはドラッグ耐性をつける為の訓練を開始する!!」

 


エルフたちが叫ぶ。

 


「おうっ!!!」

 


こうして、エルフの里ではドラッグ使用訓練が開始された。ジャンヌとリリアンヌは自室に籠もり、様々な薬物を使用した。

 


ジャンヌが部屋に入ると、そこには大量のジャンキーがいた。

 


「さて、始めるぞ野郎ども!!」

 


ジャンヌの掛け声とともにエルフ達はドラッグを吸引し始める。

 


「うげええええええ!!!」

 


強烈な薬物カクテルで思わず嘔吐する者も多かった。

 


ヘロインにマリファナ、コカインにヘロイン、覚醒剤LSD。どれもこれも強烈なチャンポンだ。部屋の空気はツンとした刺激臭を感じるだろう。

 


エルフ達は涙目になりながらも必死に薬物を摂取し続ける。

 


この地獄のような時間が一週間続いた。

 


そしてついにその時が来た。

 


ジャンヌとリリアンヌはお互いに見つめ合うと、お互いの手を取り合った。

 


「やったわね」「ああ、やったな」

 


エルフ達の体は薬物への高度な耐性を獲得していた。立派な薬物依存症だ。だが、エルフ達の表情には達成感があった。

 


「よし、次は精神修行だ!これは一番キツイぞ」

 


ジャンヌは言った。

 


「ああ!」

 


エルフたちは同意する。

 


翌日からエルフの精神修行が始まる。

 


エルフは昔から自然信仰が強い種族だ。エルフのシャーマンはペヨーテを飲み神の信託を受け、敬虔な信者はマリファナを吸引する前に自然への感謝を忘れない。

 


美しい自然に囲まれたエルフの森はドラッグをキメる最高の環境だった。

 


エルフは森へ繰り出した。エルフは森の中を歩き回る。ジョイントを咥えながら。

 


木漏れ日を浴びながら清々しい風を感じながらジャンヌとリリアンヌはジョイントを回し吸いする。「はぁ〜〜〜」

 


「はあー」

 


「気持ちいいわねぇ」

 


「最高だ」

 


「幸せぇ」

 


「エルフに生まれてきて良かった」

 


「ほんとよぉ」

 


二人は笑いあった。

 


「私達すっかりジャンキーよねぇ」

 


「ああ」

 


「もう引き返せない所まで来ちゃったわ」

 


「戻れないなら進むしかない」

 


「そうよね」

 


「私はお前の事をずっと守ってみせる」

 


「あら嬉しい。じゃあ私はあなたの事を守ってあげるわ」

 


「ああ、頼む」

 

 

 

二人の関係はより深くなったように感じられた。それはクスリせいだがエルフ族がシラフの時は少ない。二人は幸せだった。二人はずっと幸せだった。

 

 

 

今日も明日も明後日もエルフの森はラヴ & ピース

 

 

 

〜END〜